ゲイのみなづち(@minaduchi)です。
日本では、同性カップルが法的に「家族」になれません。
その結果、生活のあちこちで「説明」と「演技」が必要になる。
だから密室が、唯一の「居場所」になってしまう現実があります。
清掃員が見た「仮面を外せる唯一の時間」
私はラブホテルで清掃員として働いています。そして、私自身もゲイです。
1月8日、平日の昼下がり。フロントから連絡が入りました。
「202号室、退出しました」
男性二人組のお客様だったと聞きました。
ドアノブに手をかけるとき、正直、少し身構えました。
世間には「男同士は汚す」という偏見がある。
清掃の現場でも、そういう噂話を耳にすることがあります。
ドアを開けました。
拍子抜けしました。部屋は驚くほど綺麗だったのです。
ベッドのシーツは乱れていました。
でも、枕は二つ、並べて整えられていた。
使ったタオルは洗面台の端に畳まれていた。
備え付けのアメニティは、元の位置に戻されていました。
私は立ち尽くしました。枕を見つめました。
二人で並んで眠ったのだろう。
起きてから、どちらかが枕を整えたのだろう。
その何気ない所作に、彼らがこの時間をどれほど大切にしていたかが見えました。
ゲイの僕には、痛いほどわかる。
この密室だけが、彼らが「仮面」を外せる唯一の聖域だったのだと。
ドアを一歩出れば、彼らは他人行儀な「友人」に戻らなければならないかもしれない。
電車の中で手をつなぐことはできない。
レストランで「お二人のご関係は?」と聞かれれば、言葉を濁す。
愛を隠すために、安くないお金を払って、この密室に来る。
そんな社会は、もう終わりにしたい。
僕たちが本当に欲しいのは、日陰の「隠れ場所」じゃない。
光の当たる「居場所」だ。
なぜ密室が「居場所」になってしまうのか
なぜ、同性カップルは密室でしか「素の自分」でいられないのでしょうか。その背景には、日本の法制度における深刻な「空白」があります。
日本では、同性カップルがどれだけ長く連れ添っても、法律上は「他人」のままです。異性カップルなら婚姻届を出せば自動的に得られる権利が、同性カップルには得られません。
- 住居:賃貸契約時に「ご関係は?」と聞かれるたびに説明が必要
- 医療:パートナーが緊急搬送されても面会や手術同意を断られる可能性
- 税・相続:配偶者控除が使えない。法定相続人になれない
- 社会保障:パートナーを健康保険の扶養に入れられない。遺族年金も受け取れない
こうした法的空白は、日常生活のあらゆる場面で「説明」と「演技」を強います。
職場で「彼女いるの?」と聞かれたとき、正直に答えるか、嘘をつくか。
結婚式に招待されたとき、パートナーを連れていくか、一人で行くか。
年末年始に「実家に帰るの?」と聞かれても、本当のことは言えない。
厚生労働省の調査によると、ゲイ男性の職場カミングアウト率はわずか5.9%です。
つまり、9割以上の当事者が職場で「仮面」をつけて働いているのです。
その結果、密室だけが「素の自分」でいられる唯一の空間になってしまいます。
高裁6件中5件が「違憲」、それでも変わらない現実
こうした状況に対して、司法は明確なメッセージを発しています。
2019年2月14日、同性カップル13組が全国5つの地方裁判所で一斉に提訴しました。「同性婚を認めない民法・戸籍法の規定は違憲だ」という訴えです。その後、各地で判決が相次ぎました。
2025年11月時点の高裁判決は以下のとおりです。
- 札幌高裁(2024年3月):違憲。「憲法24条1項にも違反する」と初めて判断
- 東京高裁(1次)(2024年10月):違憲
- 福岡高裁(2024年12月):違憲。「法制度として認めない理由はもはや存在しない」
- 名古屋高裁(2025年3月):違憲
- 大阪高裁(2025年3月):違憲。「別制度では憲法14条違反の状態は解消しない」
- 東京高裁(2次)(2025年11月28日):唯一の合憲
高裁6件中5件が「違憲」と判断しています。
それでも、法律は変わっていません。
最高裁の統一判断は、2026年以降に示される見通しです。
530自治体に広がる制度、それでも「国にしかできないこと」
国の法整備が進まない中、自治体レベルではパートナーシップ制度が急速に広がっています。
2015年11月、東京都渋谷区と世田谷区が全国初のパートナーシップ制度を導入しました。
それから10年。2025年5月末時点で、530自治体が制度を導入しています。
人口カバー率は92.5%に達し、登録件数は9,836組。「制度のない県庁所在地・政令市」は2025年にゼロになりました。
しかし、パートナーシップ制度はあくまで「自治体独自の取り組み」です。法律上の婚姻とは根本的に異なります。
- 法定相続人にはなれない
- 配偶者控除は使えない
- 配偶者ビザは取得できない
- 遺族年金は受け取れない
大阪高裁が指摘したように、「別制度では憲法14条違反の状態は解消しない」のです。
Marriage For All Japanはこう訴えています。「自治体にはできません。国にしかできないことです」
職場で仮面を外せない94%の当事者たち
密室でしか素の自分でいられない現実は、職場においても同様です。
厚生労働省が2020年に実施した「職場におけるダイバーシティ推進事業」調査によると、職場で自身が性的マイノリティであることを伝えている割合は、ゲイ5.9%、レズビアン8.6%、バイセクシュアル7.3%、トランスジェンダー15.3%。
つまり、9割以上の当事者が職場では「仮面」をつけているのです。
カミングアウトしない理由として最も多かったのは「職場の人と接しづらくなると思ったから」でした。
LGBの32.1%、トランスジェンダーの32.9%がこの理由を挙げています。
差別や偏見への恐れが、当事者を「見えない存在」にしています。
「彼女いるの?」「結婚しないの?」「週末どうしてた?」。
これらの質問に、正直に答えるか、嘘をつくか。毎回、判断を迫られます。
ある当事者は「毎日、演技をしながら働いている感覚。本当の自分を出せないストレスが蓄積していく」と語っています。
同じ調査で、シスジェンダー・異性愛者に「社内にLGBT当事者がいるか」と聞いたところ、「いないと思う」が41.4%、「わからない」が29.9%。
合わせて7割以上が、職場にLGBT当事者がいることを認識していません。
複数の調査によると、LGBT層は人口の8〜10%程度と推計されています。30人の職場なら、2〜3人はいる計算です。「いない」のではなく、「見えていない」だけなのです。
職場で「仮面」を外せないからこそ、密室が「唯一の居場所」になってしまう。
この構造を変えるには、法制度の整備と社会全体の理解が必要です。
まとめ:隠れ場所じゃない、居場所が欲しい
ラブホテルの清掃員として働きながら、多くの「二人の時間」を見てきました。
男性二人組の部屋が「拍子抜けするほど綺麗だった」のは、彼らがその時間をどれほど大切にしていたかの証です。
しかし、その密室が「仮面を外せる唯一の聖域」であること自体が、この社会の歪みを表しています。
高裁6件中5件が「違憲」と判断しています。パートナーシップ制度は530自治体に広がっています。それでも、同性カップルは法律上「他人」のままです。
私たちが本当に欲しいのは、日陰の「隠れ場所」じゃない。光の当たる「居場所」です。
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より詳しい情報は、ブログ記事で解説しています:
https://minaduchi.blog/love-hotel-cleaning-same-sex-couples
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https://www.threads.com/@minaduchi/post/DTObZn8jEIH
参考資料
・厚生労働省「職場におけるダイバーシティ推進事業報告書」(2020年)
・渋谷区・虹色ダイバーシティ共同調査(2025年5月)
・Marriage For All Japan公式サイト
・各高裁判決文要旨(札幌・東京・名古屋・福岡・大阪、2024〜2025年)





