「こんなものっ」
そう言って、彼氏から取り上げたのだそうだ。
10数枚のDVD。
「お気に入りAV Vol.1」から始まって、「スペシャル」とか「大槻○○」とか「長谷川○○」など女性の名前が書いてあるものもある。
「何よ、これ」と訊くと、
「あのろくでなしがね、AVを隠し持っていたのよ。それもこんなに一杯」と彼女は憤懣やるかたなしの風情で吐き捨てるように言った。
「わたしというものがありながら、こんなものを見てるなんて許せない」
わたしは、そんな彼女の様子を見て、ついニヤニヤとしてしまった。
「まあまあ」
わたしは苦笑しながら、彼女をなだめた。
健康な男子だったら、エロビデオの1枚や2枚は持っている。
そんなことでいちいち目くじらをたてることもあるまい。
まあ、ちょっと枚数が多いような気もするけれど。
わたしの対応に切れたのか、彼女は一際大きな声で叫んだ。
「だってね、これ、みんな、モロなのよ。やってるところが全部丸見えなの」
ここは、ムード音楽の流れる喫茶店の一画である。周囲の反応を気にして、わたしは思わず顔を伏せた。
「恥ずかしいから、そんなに大声で叫ばないでよ」
わたしは彼女に小さな声で抗議した。
「ごめん」
さすがに彼女もバツが悪かったのか、身体を丸めるようにした。
「こんなものを観てるのだったら、わたし、彼に絶対にさせてやらない」
「そんなに凄いの?」
わたしが興味津々で訊ねると、彼女は「うん」と頷いた。
「ふーん」
わたしは、テーブルの上に置かれたDVDを手に取った。
「ねえ、mina。あいつから取り上げたものの、わたしの家には未成年の弟もいるし、両親にみつかったらまずいから、それ、預かってくれないかしら」
「そうねえ・・・・・・」
わたしは、思わず天を仰いだ。
「お願い。minaなら1人暮らしだしさ。暇な時は、それを観てもいいから」
「よしてよ、わたし、そこまで飢えてないわよ」
そんなやりとりがあって、今、件のDVDはわたしの部屋にある。
楽しみにしていたテレビドラマも終わってしまったし、週末の夜はすることがない。缶ビールを片手に、遠目でDVDを眺める。
興味がないと言ったら、嘘になる。
「よしっ」
わたしは掛け声をかけて、DVDを手に取り、プレイヤーに突っ込んだ。
再生が始まった。
△○☆◇♀♂◎@▽※うーーーん!!!!
「・・・・・・凄い・・・・・・」
そうとしか言いようがない。
モロというか、丸見えというか・・・・・・。
しかも、女優さんがみんな若くて綺麗なのだ。
親友の彼氏のお気に入りであったことだけはある。
こんなものをどうやって手に入れたのかしら。
普通には売っていないだろうし、随分と高いのじゃないかしらね。
多分、そのへんを彼女は怒っていたのだろう。こんなものに無駄遣いするくらいなら、わたしを可愛がってほしいといったところかな。これを彼から取り上げたうえは、今頃、彼女は彼に迫っていることだろう。
ああ、変な妄想が頭の中から離れない。
それにしても、どうなっているんだろう。
自分で試してみるのに、どうしてもあんなふうに足は開かないし、身体も曲がらない。出演している女優さんたちは、随分と身体が柔らかいに違いない。
演技力があるのかどうかは判らないけれど、身体は鍛えているみたいだ。
カメラの位置もよく判らない。
どうやったら、こんなシーンが撮れるんだろう。絡んでいる女優さんと男優さんが邪魔になって、繋がっている部分なんて、撮り難いはずなのに・・・。
ああ・・・、なんてことを書いているのかしら。
恥ずかしい。

でも、興味は尽きない。
なるほどと感心したのは、女優さんはともかく、男優さんも、アンダーヘアをお手入れしていたことだ。
訊いた話だと、アンダーヘア専門の調髪師という職業も存在するそうである。
彼らは、そういう専門家にアンダーヘアの手入れをして貰っているのだろうか。
もうっ。
変なことを考えていると、変な気持ちになってきた。
このDVDに出演している女優さんなら、わたしの書いた小説の主役にぴったりなんだけれどなぁ、なんてつまらない妄想までしてしまった。
興奮して眠れそうもないから、音楽ビデオでも観よう。

こんな夜にぴったりな曲。
Stranger in my house←minaの官能musicはこちら