第10章 「留守中に ・・・ 妻が帰宅」




簡易裁判所から連絡が入り 金融各社はすっかりおとなしくなり


我が家としては「平穏無事」な日がやっと訪れていた



実際 家の電話が鳴っても娘が驚く事はほとんど無くなっていた


逆に自分と娘の「別れ」が日々近づいているという実感だけが妙に辛かった



仕事が終わり 家に帰り娘に」と 「今日は 何食べたい?」聞くと


「・・・・ 何でもいい ・・・ 」


明らかに おかしい?  でもその原因がわからないから


問いただす事をしてはいけない


「じゃあ~冷蔵庫にあるモノと買物を考えたら ・・・ 」


ここで娘が興味を示した


「ナニ? ・・・」


「暑いから 熱いメニューで汗出そうか!」


「えーーーーー暑いのに 熱いメニューって 絶対ヤダ!」


普通はそう言いますよね  だから逆を言ったんですけどね


そうしたら娘の口から出たのが


「ソーメンなのにイタリアン? ・・・ みたいの?」


「自分で言って 疑問系かよ! ソーメンでイタリアン?しかも手早くでしょう」


「もちろん 当たり前!」


この時 思いました オマエの将来の彼氏 絶対に「料理上手」じゃないとダメだろうなって



さてさて 「ソーメンでイタリアン?」 今なら完璧に「創作料理」ですよね


でも パスタかソーメンかの違いだけで 麺を茹でるお湯を沸かしてる間に


イメージは出来上がってました!


簡単に言えば 「冷製 トマト素麺(ソーメン)」ですね


茹で上がった麺は「水洗い」して しっかり〆る


その上に 細かく刻んだトマトと生姜をのせる(味付けは塩のみ)


麺は〆た後 オリーブオイルを回しておく 最後にバジルを振りかけたら「出来上がり!」


それを透明のガラスの器に盛れば


「うわあーキレイ」


この時点で 「勝った!」ですよ


食べ終わって後片付けを済ませた後 娘が


「隣に ・・・ 座っていい?」


隣とは リビングのテーブルには座椅子が4つあって 私の隣は妻の定位置でした


「いいよ」


隣に座ってから 娘の様子がオカシイと気付くのにそう時間はかかりませんでした


なぜなら ・・・ 私の顔を全く見ないからです


正直 ・・・ これは困ったな でしたが ビールを飲んでる時に突然口を開きました


そうです! 皆さんの予想通りの言葉です


「今日ね ・・・ お母さんが帰ってきた ・・・ 」


予想外にムセて吹き出すビールで喋れないのに無理に喋るから


結局は 「どぅわに!」 ってカンジでしたね


直ぐに寝室へ行き 洋服ダンス ・ クローゼットを開けると ・・・


全て もぬけの空でした ・・・



でもこれは 「想定内」でしたから 約束を守ってくれたんだな~と思いました


実は先日の「不法侵入」の際に 2つ仕掛けをしてきました


電話機でリダイアルは書きましたが もう一つ「留守録」の中に金融会社からのメッセがありました


「コイツもつまんでる ・・・」 ならば戻った時に聞きたくないテープは外すだろうと思い

(当時の留守録はマイクロカセットでしたから)


テープの裏面に 「娘にだけは連絡しろ」のメモと もう一つは 入口のドアに設置された


ドアポストです 当然しばらく家を空けていれば 戻った時にドアポストを開けます


その開けた内側にも 「娘にだけは必ず連絡しろ」のメモを貼っておいたんです




もぬけの空を確認した私の側に娘が来て言いました


「やっぱり ・・・ 離婚するの?」


いきなり核心をつかれると ・・・ 言葉が出ませんでした


リビングに戻り座りなおして 隣にいる娘に正直に言いました


「ああ~ そうだ離婚になるな」


娘も中学生ですから いい加減な誤魔化しは通用しません


「お母さんがね ・・・ 新しい仕事を始めるから そうしたらちゃんと呼ぶから ・・・って」


今回の件で初めて「怒り」を覚えました  でも 今イチバン不安なのは


目の前の娘です だから


「函館のお婆ちゃんには連絡してある ・・・」


「いつ 行くの?」


「来月の 20日過ぎかな ・・・」


「1ヶ月無いんだね ・・・」



長い沈黙でした  お互い言葉が見つからず ただただ黙ってました



空いたビールの缶を持ってキッチンに行った時に娘が


「まだ ・・・ ビール飲むの?」 と聞いてきたので


「イヤ   飲まない  寝ようか!」


「ウン」 


この時の娘の表情は忘れられませんね



ベッドに入り 電気を消すと 娘が


「子守唄って  歌える?」


「子守唄? どんな?」


「普通の子供の子守唄じゃなくて  何て言うんだろう お父さんが歌う私だけの子守唄 ・・・」


「その歌のイメージは?」


「やっぱり ・・・ サザンかな」


「そうなんだ ・・・ サザンで好きな曲は?」


「前にカラオケ行った時の 真夏の・・・」


「果実! 四六時中も好きと言って ♪ だろう」


「そう!それ そんなカンジの曲がイイ」


生まれて初めて子供に「子守唄」を唄った



「真夏の果実」 「oh クラウディア」  何曲か唄って 「いとしのエリー」の唄いだしには


娘は寝てた  今となっては 「素敵」な思い出だ








次回  第11章 「第一回調停」 です







それでは  また  m(_ _ )m