第7章 「総額判明 ・・・ その後」
出勤前にSさんと出会い あらためて思った
「今日 仕事に行けば ・・・ 鬼のように取立ての電話がくるんだろうな」
晴れてはいますが やけに湿度の高い朝でした
出勤して フロアーマネージャーに事情を説明して店長室へ
「おはようございます ご迷惑をかけまして申し訳ありません」
関西出身の店長は
「大変やけど 力貸せる事には貸すから まあ 今日一日辛抱やな」
「ありがとうございます 失礼します」
仕事場に戻り 9時くらいから電話ラッシュが始まった
壁かけの内線電話の前が すっかり「指定席」だ
次々かかって来る電話で「会社名」「金額」をシステム手帳にメモしていくのだが
正直 ・・・ 予想をはるかに超えていた
フルに引き出されたクレジットカードと合わせると ・・・
「夜逃げ」する人の気持ちが 少し理解出来た
やっと昼の12時あたりで電話のラッシュが止まった 手帳を見て上から順に足して ・・・
最後にクレジットカードの総額を足すと ・・・ 「家 ・・・建つな」
その時はそう思いましたよ
午後イチバンで札幌の弁護士先生に電話で相談すると
「う~ん 自己破産か債務整理の境界線だよね~」
「やっぱり そうですか」
「そうだね~でも払うんだったら弁護士通すと手数料取られるから簡易裁判所に
申請して 「債務整理」してもらえば 切手代と多少の経費でちゃんと弁護士がついてくるから」
この夜 友人に電話で相談したさいにも簡易裁判所での「債務整理」を勧められた
「それよりね ・・・ 借金は夫婦間というモノがあるから どうにもならないんだけど
その相手の男を訴える事は出来るけど ・・・ まあ多少問題もあるんだけどね
それについては どう思ってるの?」
弁護士先生に電話したのはその問題について聞きたかったのが正直なところだった
「相手の男を告訴出来るが ・・・ 共犯として妻も逮捕されるって事ですよね?」
「そうなのよ そこなのよね~知ってたんだ?」
「先生が思ってるほど バカじゃないんで」
「それなら よく考えて決めなさい いつでも電話してきていいから
自宅の電話番号知ってるよね?」
「知ってます 落ち着くまでお手数かけるかと思いますが よろしくお願いします」
「アンタは夜逃げとか自殺とかするタイプじゃないから そんなに心配してないから」
「そうですね ・・・ 失礼します」
電話をきって ふと思ったのが ちょっとだけ前に進んだ?かなでした
やっと仕事に戻り夕方5時を過ぎた頃1本の電話が入りました 出てみると
「今朝はどうも 午前中は各社からの電話で大変だったんじゃないですか?」
Sさんからだった
「お察しの通り 会社の回線がパンクするかと思いましたよ」
「では あらためてウチへの返済についてなんですが」
ここでSさんの言葉をさえぎり こちらも「手榴弾」を投げてみた
「先ほど弁護士と相談した時にSさんの会社についても話したところ法廷外利息の会社は
対象外であるので考えなくていいと言われましたが」
「・・・・・ なるほど やはりアナタは普通のサラリーマンじゃないですね
また あらためてお電話します 久しぶりにオモシロイ方だ それでは 」
やはり頭のキレる奴だ 電話ラッシュを想定して午前中を避けて
安心した頃を見計らって電話してくる プロだな!
仕事も終わり帰宅すると ・・・ 娘が夕飯を作っていた???
「どうしたんだ?」
「たまには作ってみようかな~って思って」
キッチンを見ると ・・・ オムライスかな?というカンジの下準備でしたが
今日は甘えましょう そう思いシャワーを浴びて出てくると
何やら ・・・ キッチンで固まってます
どうやら チキンライスを卵でうまく巻けずに 途方にくれていたようです
「大丈夫だ ここから直せば立派なオムライスになるから」
そこから修正して 無事にオムライスは完成しました
食べ始めると娘が 「ケチャップ多くない?」
「大丈夫だよ!ケチャップはちょっと多目の方が美味しいんじゃない」
「そっか~良かった でもさ~ウチってオムライスあんまり作らないよね?」
「そうかな~?そうかもね」
実は私はケチャップが苦手なんでメニューに出なかったんです
でもこの時食べた オムライスから 時々食べたくなりました
あの甘酸っぱいチキンライス ちょっと?かなり多目のケチャップでしたが
あの味は忘れられません
だから 「チキンライス」松ちゃん作詞 槙原作曲の あの歌初めて聞いた時
テレビの画面を見ながら泣いてましたね
娘が寝てから 色んな事を考えてましたが
想像で物事を考えるといけないので 確認した事の整理をすると
頭の中には 途方も無い数字が浮かんできましたね
でもなぜか 妙に冷静だったのを憶えてます
次回 第8章 「裁判所へ ・・・そして決断」 です
それでは また m(_ _ )m