第二章 「多重債務?」編





自宅に戻ると 子供が玄関の所に体育座りをして待っていました


「ただいま どうしたの 何かあったの?」


不安そうな顔の子供に問いかけると


無言でリビングの方を指差します ・・・


何かと思いリビングに行きますが ・・・ これといって変わった様子もなく?


「何だろう?」 と思い 振り返って子供を見ると


電話を指差してます


留守録の表示が確かに点滅してます


今ここで「再生」すると 子供が怖がるといけないので


大人の精一杯の作り笑顔で振り向いて


「ゴハンにしようか 何食べたい?お肉?お魚?」


しゃがんで子供と同じ目線で話してやると


「マグロの・・・焼いたやつ ・・・」


「マグロのコロコロステーキか! ようし すぐ作るからね」



このマグロのコロコロステーキとは 福島では生のマグロを主に扱ってましたので


整形する段階で「血合い」と呼ばれる部分がアラとなるんですが


店頭に出しても 買っていく方はほとんどいません


そこで どうにかならんかな~?と色々調理した結果


この「血合い」をサイコロステーキのように角切りにして


調理すると 食べたら「マグロ」なんですよ全然血臭くもないし


変なモソモソ感もなく ご飯のおかずや酒の肴にはピッタリなんです



夕飯を終え お風呂にも入って安心したのか子供は寝ました


さて 問題の留守録です コードを目一杯伸ばして


寝室に持ち込み ボリュームを下げて 「再生」


正直緊張していたので 最初の電話機からの 「10件の伝言があります」の音声に


ちょっと「ドキッ!」としたのを憶えてます


「最初の1件目  ○○さんのお宅ですか 私 **** ですが


ご返済の期日が過ぎてますので 至急 ご連絡下さい  ピー 」


残りの9件も全て同じ所からの電話でした


少しだけ紐が解けてきました


「アシ(借金)作ってたんだ ・・・ 」


タバコに火を点けて リビングに戻り 何気なくカレンダーを見ると


今日は23日 ・・・ 


福島ではパートの仕事をしていないので 支払いは俺の給与からだとすると ・・・


支払日は25日以降の設定になっているはずだ


さっきの金融会社の名前も超マイナーな「マチ金」か「闇金」だろう


ということは ・・・ メジャーな金融会社は目一杯借りてるって事か?



福島に来てから 生活レベルが格段に上がったことは無い


子供の習い事もスイミングだけだし 家で高額商品の購入も無い


イヤな紐が解けようとしてる


「男がいる ・・・」


でもこの時 妙に冷静だった


子供の学校行事等には休みをとって全て参加したが


昇進するたび 嫁をかまっていなかったのも事実だった


幸か不幸か 同期入社で最初の関門の試験をクリアしたのが5人


食品部門では2人 その内の1人が私だった


仕事がオモシロクてしょうがない時期でもあった



明日から3日間の有休休暇の間にほぼ答えが出るだろう


だが 嫁が戻って来る確立は無いに等しい


子供の問題がイチバン心配だ


そこから深夜まで 色々考えた



明日も金融会社から電話が来るだろうから電話線を外しておく


子供にはちゃんと説明をしてあげよう


それから 自分のクレジットカードを朝イチから全て調べよう


そして「銀行口座」も ・・・ 


(この時点で引き出しに一まとめにしていた通帳等は残ったままであったから)



正直 寝るのが怖かった


明日から起こるであろう出来事の予想が全くつかないからだ


酒を飲もうかと思ったが


子供の朝ゴハンのリクエストが「出し巻き卵」と鯵の干物だったから


ちゃんと作らなきゃ!って思ったら


麦茶で十分だった



ただ 湿度の高い寝苦しい夜だったことは忘れないですね









次回  第三章 「仙台 初日」 編 に続く







それでは  また  m(_ _ )m