ラストシングル
80年代アイドル歌手が、よくメディアで取り上げられています。
世間では、松田聖子さん、中森明菜さん、小泉今日子さん…と、長らく歌手活動をされてきた方が話題に上がりやすくなります。長くファンの方を楽しませる…本当に素晴らしいことですよね。
しかし、80年代アイドル歌手の多くは、数年間で歌手活動を終了しています。それでも、歌手活動が限られた皆さんも、全力を尽くしました。
そのアイドル歌手の最後を飾ったシングルを聴くことで、これまでの努力やメッセージを垣間見ることができる気がします。
今回は、主観でチョイスした、2名のラストシングルを見ます。精一杯のパフォーマンスをご覧ください!
① 高橋美枝さん「オフリミット」
(1985年)
作詞:麻生圭子さん
作曲:後藤次利さん
編曲:後藤次利さん
高橋美枝さんは、オーディション番組「スター誕生」をきっかけにデビューしたアイドル。歌唱力にも定評がありました。デビューシングルは、数々のヒット作を手掛けた松本隆さん作詞の「ひとりぼっちは嫌い」その後も、どちらかと言うとゆったりした、爽やかな曲を歌います。
しかし、セールスはなかなか伸びず、オリコン週間最高順位も98位という状況でした。
それもあってか、今までよりずっと激しい曲調で挑んだのが、この「オフリミット」
はっきり言って、私は傑作だと思います。たしかに、デビュー曲等を聴かれた方は、あまりのギャップに驚かれるかもしれません。しかし、歌う時の堂々とした表情、そして、迫力ある歌声…これができるアイドルは、当時数えるほどしかいなかったのではないか、と思います。
残念ながら、本作が単独名義でのラストシングルとなってしまいました。しかし、彼女はその後、作詞家「風堂美起」として、薬師丸ひろ子さん、楠瀬誠志郎さん、小川範子さんといった歌手の作詞を手掛けるようになります。(ちなみに、私の好きな作品は、小川範子さんの「ひとみしりAngel〜天使たちのLesson〜」) きっとアイドル時代に他の方から作詞してもらえた経験も生きたのでしょうね。
② 八木さおりさん「SAYONARA」
(1988年)
作詞:松本隆さん
作曲:細野晴臣さん
編曲:武部聡志さん
八木さおりさんは、1986〜88年に歌手活動をしていたアイドルです。個人的にも最近ハマっています笑
女優としてもずっと活動していたからか、歌う時のたたずまい、仕草の一つ一つに、美しさや親しみやすさを感じます。(ちなみに、今も女優として活動されています。)
そしてこの「SAYONARA」は、別れの意味を考えされられる歌になっています。
さよならと口にしたら
もう二度と逢えないわ
一度しか言えないから
美しい言葉なの
大切な人との別れの瞬間は、二度とない瞬間。この歌が、その一瞬を大切に考えているところには、考えされられます。主観ですが、別れが美しく思えるのは、それまでの時間がかけがえのないものだったからだとも受け取れると思います。
八木さおりさんとの貴重な時間を過ごされた当時のファンの方は、この歌をどのように聴いておられたのでしょうか。
ラストはスタート
以上が、80年代アイドル歌手のラストシングル紹介でした。他にもたくさんのラスト曲があるのですが、今回は純粋にご紹介したいと最初に思った2曲を選ばさせていただきました。
しかし、この2作は本当の意味でのラストではない、むしろスタートだと私は思います。
もちろん、この2作は、ラストシングルです。アイドル歌手としては一旦ピリオドを打ったことになりました。ですが、八木さおりさんと高橋美枝(風堂美起)さんの人生は、その後も続いていきました。
したがって、例えば八木さおりさんにとっては、人前で歌を表現するという経験が、女優業に生きたのかもしれません。また、前述の通り、高橋美枝さんも「風堂美起」さんとしての作詞活動に、アイドル時代の経験が生きたのかもしれません。お二人ともアイドル歌手で培ったものを、次のステージに活かせたと、私は思います。
このお二人のように、多くの80年代アイドルにとって、歌手としての活動は短いものだったかもしれません。しかし、数々のプレッシャーの中、寝る間も惜しんで、歌に向き合った濃密な時間は、その後の人生にきっと生きていると、私は信じています。
そして、元80年代アイドルの皆さんが、当時を振り返って「あの時、歌ってよかった…」と思ってもらえたとしたら、私はものすごく嬉しいです。
お読みいただきありがとうございました!
それでは!
※カバー写真:八木さおりさんのベスト盤(投稿者所持分)