デビュー作の『蝶の眠る場所』同様、社会問題がてんこ盛り。

焦点がぼやけるのでちょっこし残念。

一方で、一見別々に発生した問題であっても複雑に絡み合った背景と、実はシンプルな原因によって共通性があることに気がつく。

国家試験にありがちな「この相談者に適した相談機関はどこか」という事例問題からも分かるように社会問題に介入する専門職は縦割りになっており、各相談機関の各相談支援従事者が各々の援助技術と援助計画をもってかかわるため重複した問題であるにもかかわらず見解が一致していないことや解決すべき論点がズレることが多々ある。そのズレやタイムラグ、専門職間における質の格差等によって対象となる人に適切な援助が届かず問題が深刻化する。様々な問題に対応するジェネラリストソーシャルワーカーの育成が注目されたこともあったが浸透していないように見受けられる。

著者の水野氏はメディアを通した番組制作のみならず小説にも報道機関の視点で社会問題を取り扱っており、今後の作品にも期待したいっ。

『名もなき子』水野梓