井上ひさし追悼公演 『黙阿彌オペラ』
@シアタードラマシティ 2010.9.4
作・井上ひさし 演出・ 栗山民也
[CAST]
五郎蔵 藤原竜也
及川孝之進 北村有起哉
円八 大鷹明良
久次 松田洋治
陳青年 朴 勝哲
とら/おみつ 熊谷真実
おせん 内田 慈
河北新七 吉田鋼太郎
歌舞伎は詳しくない私でも何とか知ってた『三人吉三』、お嬢吉三の名科白がカルメンに!!
それ以外にも・・とらさんや五郎蔵さんに嬉しそうに科白を取り合われると、おもわず加わりたくなってしまう♪
全場とも舞台は「仁八そば」の店内、だけど登場人物の周囲の人たちまでもが、まるでそこにいるかのような活き活きとしたおしばい。
五郎蔵さんのお絹坊の声色は、かわいすぎて・・おもわずほろり。
及川さんの「くじが引ける!」の声の上ずり方も好き。
そして後半の新七さんの言葉は、どれも心に残る名言ばかり。
~暴末から明治にかけて活躍した劇作家、二世河竹新七、すなわちのちの河竹黙阿弥。小さなそば屋で知り合った仲間と、天下のご一新をはさんでくりひろげる大騒動~
江戸も末、師走の吹雪の夜、「仁八そば」の障子を叩く2人の男。かまどの火をもう落としたからと断るとらだが、人の生死に関わると言われ慌てて戸を開ける。
1人はそう身なりは悪くないが草履は履いていないし、もう1人はつぎはぎの着物で全くの裸足。ともかく冷えきった身体をどうにかと、火鉢に当たり白湯と煮物で一息ついた2人。
「それで、だれが橋の上からドボーンなんだい?」
とらの言葉で2人、”ハッ”となり「早まっちゃいけない」「こっちこそ死に急ぎはよせと・・」
テーブル越しに身体を乗り出し、互いに襟首つかみあう。←いまさら(笑)
偶然同じ場所で、身投げしようとしていた笊売りの五郎蔵と新七。
「互いに相手に向けて言った科白を、自分に向けて言えばいいじゃないか」とおとらばあさん。馬鹿だと言いたい放題だけど、憎まれ口のつぐないにとお蕎麦を茹でてくれる。
「「死ぬな」と自分に言い聞かせて、「はい」と自分が聞き入れてくれるようなら、世の中身投げなぞありゃしません。死ぬより他に術はないと見定めての決心」と新七は言うが、よくよく聞いてみると・・・
座元が新作を禁じているし、書かせてもらったとしても自信はない。とか後輩に追い越されているが、おいつけるだろうかとか。
それだけなはずはない、もっと差し迫ったのっぴきならない理由があるはず。2人は「女が・・金が・・それを苦にした家族が・・」「そんなとこだろうねえ」勝手に想像して納得(笑)
真面目な新七さん、全くそんなことはなく・・・テンション下がる二人。。
五郎蔵は妻に先立たれ、残ったのは薬代の借金と幼子。これ以上ひもじい思いをさせられないと十両で養女に出したが、様子を見に行くとしもやけで膨れ上がった手で風呂の水汲みをさせられてる。
声をかけると、この家の子になったんだから、もう会いに来ちゃいけない、銭もらいだと思われると言う。「チャンが銭もらいだと思われたらあたい、つらいもの・・」
そして4つの我が子に「お八つにもらった煎餅だけど、おたべ」と言われる父。。
貰い乳で育てたと聞き、五郎蔵に共感するとら。亭主と息子が大酒のみで嫁が出て行ってしまい、2人も飲みすぎて死んでしまったため孫のおみつはとらが育てたと話す。
蕎麦を食べ、新七が来年もここで会おうと提案し別れた。子供と暮らすために、五郎蔵が跳ぶと言っていたのが気にかかってはいた新七だったが・・・
一年たった約束の日の仁八そば。
「今夜は妙な晩だよ。さっきは捨て子のおせん、今度は・・」ととらは、なかなか帰らない客を見ている。
奥へ行ったとらに話しかけながら、そろっと出口へ後ずさりしていく男。障子を開けると・・・そこにはとらさん(笑)
押し問答が始まり、おせんの泣き声が聞こえると「今おばあちゃんが行きますよぉ」と逃げようとする男。立ち往生していたところに新七さん現れ、とらは安心しておせんのところへ。
男は売れない落語家の円八、ネタ帳を差し出され話を聞くうち、新七はお金を貸すことにして丸く収める。
あとは五郎蔵を待つばかりだが、やってきたのは見知らぬ男。五郎蔵の使いだと言い、とらに金を渡して帰ろうとするが・・・
事情を聞くと、お絹ちゃんが大やけどをしてその後亡くなったという。「生かして返せー!」と乗り込んだ五郎蔵さん、ゆすりに仕立て上げられ石川島送り、というひどい話。
そこへ裏口から怪しい男。浪人の及川考之進と名乗り、勝手に身の上話しをはじめる。次第に話の矛先が五郎蔵の使い、久次に向かい・・・久次が身投げ騙りで、商人らしい男から金を騙し取っていたと暴く。
久次が騙した相手は、五郎蔵を島送りにした張本人。兄ぃの恨みを晴らしたのだと打ち明ける。及川も番所へ届けるつもりはなく、少しばかり都合して欲しかっただけだという。
こうして全員の素性が明らかになったところで、とらは「おせん株仲間」を提案。みんなで少しずつお金を出し合い、そのお金でおせんを育て、全員の子供として育てるというのだ。
やがて16歳に成長したおせんにお話がと言われ、集まった株仲間達。
高島屋(市川小團次)が亡くなり、落ち込んでいた新七の前では名前をださないよう、どうにか話をそらそうとするが・・・あまり上手くいかない(笑)
でもその気遣いや楽しいイタズラ話で新七に笑顔が戻り、一同ほっとする。
おせんは柳橋のお酌で、店のおかみさんから芸者の姉さんたちと一緒にフランスでの万博に言ってくれと言われているという。「お三味線が弾けて、お唄が歌えて、お蕎麦が打てて煮物が出来るものは他にいないからって」
反対していた五郎蔵たちに、おせんは仁八そばではじめて目を覚ました朝のことを話し出す。
株仲間のお金であばあちゃんが古着屋さんへ連れて行ってくれ、綿入れを買ってくれたこと。その古着屋の子がこれでお米が買えるねって言って。そこのおじさんは漬物も買ってきな、こんな雪の日だ客があればあそこも喜ぶって・・。
あとになって気付いた、あの光景が、おばあちゃんがよく言う「ご恩送り」。
おじさん方やおばあちゃんが私に仕込んでくれたものが、役に立つなら、相手がどこのだれであれ楽しんでもらえたら・・・そうすれば受けたご恩が広い世間を回りだす。
明治になり、新七も芝居について新政府から変われと言われるようになる。
ある役人の思惑から思わぬ出世をした五郎蔵たちは変化を歓迎しているが、新七は・・・
「しかしそうたやすく、変わりますか?」
「変わったじゃないですか、印刷所に洋服、税金、革靴、散切り頭・・・」
「人の心は?そして私たちの言葉はどうなんです?人の心と言葉、これはそうやすやすとは変わりませんよ。そしてその2つで芝居は出来てるんです。芝居がそうたやすく変わってたまるものですか」
次第に深まる新七と4人との溝。
また時はたち、おせんはオペラ歌手になり、株仲間の面々は国立銀行を開業していた。
新七は座元からオペラ狂言を書くように言われていて、銀行の存続が絡んだ五郎蔵たちも執拗に勧めてくる。
国家のため
文明開化のため
狂言作者部屋のみなさんのため
ひいてはおいらたちの銀行のため
「・・少なくとも見物衆のためではないですな」固く閉じていた新七の口が開いた。
年に一度の芝居見物のために、節約に節約を重ね木戸銭を貯める。日々の生活で溜まる屈託を笑いや涙で流してしまおうと、身銭を切って科白を聞きにきてくれる。そんな思いが集まり芝居小屋に大きな力が宿るんです。
そのオペラをどんなことをしてでも観たいと願っている見物客はどこにいるんです?西洋のオペラ小屋にはそういう見物衆の力が宿っているでしょうが。
銀行も同じ。お金をやりをうまくやる仕組みがどうしても必要だという思いを受け止め、脳みそがなくなるまで考え出されたものが西洋の銀行。できあがった形だけを取り込んでいたのではまるで声色屋。
新七の言葉に憤慨する五郎蔵たちだったが・・・
2年後、銀行はつぶれるべくしてつぶれた(笑)
別れ際の様子が気になり心配していた新七は、オルゴールの中に五郎蔵たち4人の遺書を見つけ、身投げしそうな川や堀を探しに走る。
店で心配しいるおみつ。そこに4人組みがふらふらと入って来た・・・見るからにぼろぼろ(笑)
間抜けな身投げ騒動を聞いていると、勢いよく障子が開いて新七が戻ってきた。
「やあ・・どうも」と言うしかない4人に「水くさい!」
以前の関係に戻った瞬間、よかったなー♪