半年前、兄が急死した。
正直
言葉にすること
思い出して、書き記すこと
気持ちを表現することなんて到底できない。
“居ない”世界の中で
“普通”に生活はしている。
疲れて眠るし
おなかがすいてご飯を食べるし
面白い時は笑うし、涙だって出る。
ただずっと
あの日からずっと
怯えている。
駅で私を待っていた家族の表情
病院に向かう車内の空気
病室でみた兄の姿
医師からの無情な宣告
母の涙
人生で一番長かった夜
握った温かい手
家族の最期の時間
残酷な機械音
実家での残された時間
兄の身体がこの世から消えた日
まともに受け入れたら
壊れてしまうと思った
実感してしまう瞬間に怯えていた。
その感覚は今も続いている。
頭では理解していて、
ただそれを
心でまともに受け止めないように。
記憶をなぞるだけで
呼吸が浅くなる。
脳に靄がかかる。
私たちは、壊れなかった。
壊れることが、できなかった。
「大丈夫?」
「落ち着いた?」
「最近はどう?」
優しい人たちが聞いてくれる。
私のことも
家族のことも思い遣ってくれる。
わかっている。
でも
私の心が、もう元に戻ってくれない。
「大丈夫」ってなんだろう。
「落ち着く」ってなんだろう。
日常に戻っても
一面の雪景色が灼熱の太陽に変わっても
どれだけ世の中が時計の針を進めても
目の前の悪夢は醒めない。
両親がこの先
心の底から幸せだと笑う日はこないし
兄の夢はもう、叶わない。
あまりにも無力で、残酷で。
もう、伝えられない
もう、謝れない
もう、あの時間は戻ってこない
自分がひとり、静かに腐っていく。
私自身の状況は
何年も前から変わらないのに。
自分の問題はずっと
自分自身の問題なのに。
上手くいかないこと全てを
兄のせいにしようとしている。
傷を振りかざして
SNSに溢れる
笑顔を奪ってやりたいと思う
同じ時間、同じだけ
苦しめばいいのにと思う
ぶつけたい
泣き叫びたい
怒り狂いたい
なぜ私なんだ、と。
なぜ兄なんだ、と。
なぜ私たち家族なんだ、と。
それでも
生きていかなければならない。
親よりも先に死なないこと
これが私の人生の誓い。
どんなに辛くても、苦しくても、
この先、生きていくのが嫌になっても。
病気にも怪我にも
世の中の悪意にも負けない。
決して口に出せない
事実を、想いを
私が最後まで抱えて生きる。
本を、読み続ける。
そして自分と対話し続ける。
絶対に辿り着かない答えを、求め続ける。