次のレントゲンは、拷問部屋のような所で撮った。
調理場の調理台のような鉄のテーブルに横たわり、体をぐるぐる回される。
女医もいて、画像を見ながら、イランに言った。
「ああ、これなら…」
「いや、OXOX・・・」
女医は大丈夫と言ってる感じなのに、またもやイランが邪魔をする。
私は、まだ医師免許を持ってないと後から聞いた、女医に心ですがった。
午後、その頃はもう許されてた、水・お茶を飲んでも、喉が渇いて渇いてしょうがなくなってきた。
だいたい点滴をしてるので、それはありえない。
水分というより、糖分が欲しい。
それは、二日酔いの朝なんてもんじゃなかった。
ジュースだって、口に含むだけなら大丈夫だろうと思って、売店で買ったメロンジュースを、口に含んだ。
その瞬間、どうにもこうにも我慢できず、命よりもメロンジュースを選んだ。
ごくごく飲んだ後、多分精神的に怖くなって、何故そこにたらいがあったのか記憶がないが、そこに全部吐いた。
向かいの痔ろうのおばさんが、心配そうに見ている。
お腹の痛さが、さらに深刻化してくる。
なんて言ったらいいか、わからない痛さ。
声を出すほどじゃないが、うめかずにはいられない感じ。
ナースコールを押すと、不幸にも看護師Cが出て、不機嫌にいきなり、
「痛み止めですか?」
と言った。
いやみにクレームをつける余裕もない。
「お腹が、凄い…痛い…」
別の看護師がやって来た。
「ああ~どうしたんだろう…ごめんね、今先生が手術で誰もいないの。痛み止め入れて、ちょっと我慢しようか」
ところが私は、痛み止めを入れる前に寝てしまい、目が覚めると、その看護師と外科部長が心配そうに見守っていた。
「もうすぐイラン先生、手術が終わるからね、ちょっと待っててね」
外科部長の言葉を聞いて、気持ちが楽になる。
イランがやっと来た。
特に焦った顔ではなかったが、早口気味に言った。
「ご主人呼べませんか?」
腹の痛さに勝るものはなく、何も聞かずに、その場で旦那の携帯にかけた。
来てくれると言う。
「ご主人が来てから、説明します」
なんでもいいから、早くこの痛みをどうにかしてくれ。
旦那が到着し、ベッドに寝たまま、レントゲン写真を見た。
「最初、医者全員でレントゲン写真を確認し、異常なしだったんですが、少し後、<もれ>を発見しました。
大腸を縫合した際の縫いもれです。合併症と言いまして、術前に署名してもらいましたが、30%くらいの確立で起こるんです」
「…癌だって、低い確率だったのに、又当たっちゃったの…?」
と言うようなことを、虫の息で言った。
「とにかくこれからミラさんのために緊急手術をします」
イランは続ける。
「手術のあとは、3ヶ月から半年の間、人工肛門をつけます」
な、な、な、なんですって~~~~~!!!
しかし心の声だった。
旦那も特に文句も言わず、数枚の紙のサインに忙しい。
しかしこれだけは聞いた。
「一生、人工肛門なんてことは…」
「それは絶対にない」
めずらしくイランが言い切った。
「今はよく出来ていて、臭いなんかもありません」
「もう一回大腸を切って、つなぐことは出来ないんですか?」
「今大腸は、腸液がもれて、ぐちゃぐちゃです。それにこれ以上切ると短くなっちゃう」
「細身の服とか着れますか?(商売上)」
あまりの苦しさに質問するにも限度があったのに、こんなことを聞いている。
ちなみに私のセリフは全て、地獄の底からのような声だとお思いください。
(手術してコレが直るなら、早くして~~~)
凄い速さでストレッチャーがやってきて、またもや私は手術室に消えた。
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