「怪物だ〜れだ」


カンヌ国際映画祭で、脚本賞とクィア・パルム賞(LGBTQを扱った作品)を受賞した『怪物』🏆


映画公開日が待ち切れず、先月ノベライズ本が出版されてすぐに読みました。




「怪物だ〜れだ」


イジメ?クレーマー?モンスターペアレント?モラハラ?虐待?


母親(安藤サクラ)の視点、教師(永山瑛太)の視点、湊(子役)の視点、それぞれによって見え方が変わってきます。


誰かを庇う嘘、自分を護る嘘、誰かを陥れる嘘、様々な嘘や噂で真実が見えなくなる。

でも、その嘘や噂によって、それぞれの人物の真の姿や人となりが見えた気がしました。


事前に本を読んでいたこともあって、火事から始まるそれぞれの視点から同じ場面を繰り返す物語と分かっていたので、細部まで見ることができました。



私が印象的なのが、子どもの視点の時に音楽室での校長(田中裕子)と湊(子役)のシーン。


湊「人に言えないから嘘ついてる。幸せになれないってバレるから。」


校長「そう、私も一緒」

「誰にも言えないことはね、ふーって」

と、2人でマウスピースに吹きかけて奏でるトロンボーンとホルンの音が、何だか懺悔しているようで物悲しくて、なぜか涙が出てきた。

この音は、母親も教師もそれぞれ同じシーンで耳にしていますが、その時は不気味な怪物の唸り声のように聞こえました。


「誰かにしか手に入らないものは幸せって言わない。誰でも手に入るものを幸せって言うの。」



ラストシーンの受け止め方は、人それぞれだと思いますが、私は行き止まりになって侵入できなかったバリケードが、台風の影響で外れ、線路が続く風景に未来を感じました。


が...

もしかしたら、生まれ変われなかったってことは??

悲しい結末だったとも受け取れますよね。


雨上がりの眩しい光を浴びながら、美しい森の中を無邪気な笑顔で走る2人の子どもたちの姿に、明るい未来を願い涙が止まりませんでした。



監督、脚本、俳優陣、そして亡くなられた坂本龍一さんの優しいピアノが奏でる、全てにおいて素晴らしい作品です。



「怪物だ〜れだ」



怪物探しの映画ではないけれど、見方によれば誰の中にも怪物の一面があるのかもしれない。