上映会(仮)前にここまで書けたら御の字かなぁと思っていたところまで、ようやくたどり着きました。いったんこれで最後になるかな。

 

■義仲と義経のこと

終盤の義経の感情の発露で、義仲によって「源氏のさだめ」が歌われるのが演出としてすごく美しくてすごく哀しいなと思っていて。義経も義仲も新しい時代では生きていけない人という点で同じ描かれ方なんですよね…。

あそこはもちろんすぴさんの美しい歌声あってこそ効いてくるシーンだけど、すぴさんだったら何でも良いわけじゃなくて「義仲が」歌ってることに意味があると思うんだよな……(ということを踏まえてすぴさんが義仲役なのかもしれないけど。卵が先か鶏が先かみたいな話になる)
共におそらく戦場でしか咲けない、美しい花。

京を追い出された義仲の孤独と哀しさの表現、すぴさんうますぎたなぁ…。あんな悲しいワンデイモア(仮)があるかな、と思いました。
頼朝と義時が作ろうとしている新しい国は、そういう人たちを置き去りにしていくものでもあるんだってことが、こういうところでもきちんと描かれていたと思います。

 

■範頼のこと

同じくこの「源氏のさだめ」の間には範頼と盛長(仮想頼朝の意味もある…?)のシーンも挟まっていて。範頼って結局どんな人だったんだろうなと思います。兄を慕って兄のもとに来たけれど、義経と対照的に1幕ラストの彼はものすごく冷たい目をしていて。あれが対頼朝だったのか対義経だったのか、私には判別がつかなかったのだけれど。とにかく彼は頼朝というよりは源氏の棟梁・そして源氏の栄華・強い源氏へのこだわりが強かった印象でした。S1での兄弟のパート、「頼朝こそ希望 源氏に残されし光」をより重く担ったのが義経だとしたら、「かつての栄華を取り戻せ 源氏の棟梁に不可能はない」を担ったのが範頼だったのかもしれません。そういう意味では彼も、ふるい世界に取り残された一人だったのかなという気がします。

 

■時政のこと

この人もまた、貴族が中心の旧い枠組みに執着し、そこの頂に立ちたい人でした。時政暗躍のシーンはだいたい義経定点になってしまっていたので、噂の時政のすごい表情が拝めなかったのが悔やまれますが。(苦笑) 

だけど時政にとっての夢・理想は、新しい時代を生きようとしている息子とは根本的に違っていて。義時の「思ったことはありません」って重いよね…「思いません」ではなくて「思ったことはありません」。なんかもう本当に根底から相容れない溝を感じてしまう。確実にその野心を受け継いでいるはずの息子に理解されず、同じベクトルで歩めなかった時政もまた、哀しい寂しい人だなと思います。

 

■後白河法皇のこと

なんかもうさすがに今回「ごっしー」とは呼べないな、という感じでしたけど(笑) その恐ろしさよりはコミックリリーフ的な役回りが強調されたイメージですが、お茶を飲みながら武士たちを掌の上で転がしている感はうすら寒いものがありましたね…。そして何より彼の退場シーン。散々泣かされた直後のシーンなので、笑かしてもらえてちょっとホッとしましたけど、でもあそこは権力の頂点に居た後白河法皇の転落をものすごく象徴的に表しているすごいシーンだなと思います。そして千秋楽の奇跡……カツラが取れるの、あまりに美しいアクシデントでしたね…!あんなにあの場にピッタリなアクシデントないですよ…法皇の惨めさがより際立ちました。

明治座で出番のラストにカツラが取れるって、まぁどうしても私なんかは推しのトラウマが蘇るんですけど(苦笑)、あんなに似つかわしいアクシデントもあるんだなって感動しました。なんていうか……ねぇ滝口、あの時の意趣返しとばかりに何かしました?って濡れ衣着せてしまう感じです(笑)

 

哀しく、悪く、滑稽に、描き方は違えど、シンるはそういうふるい世界に置き去りにした人たちをきちんと描いているところが好きでした。頼朝と義時の、前を向くまっすぐな光の話だけでは決してない、光が生み出す影の部分。こういう光彩が描かれることで物語って豊かになるんだなぁと感じます。

 

すべての登場人物にしっかり触れられたわけではないですが、それでもこれだけ書くことがあるくらいには、シンるの物語を楽しみました。

きっとまた上映会で後乗せサクサク追加リーディングもあるんだろうなって思ってるし笑、まじで後乗せサクサクなので、ここまで書いたこと180度覆さないといけなくなるかもしれないんだけど笑、いったん年末に現場7・配信1というそこまでやるなら現場全通でいいじゃん、という無茶苦茶な観劇をした私なりのアウトプットとして、記しておきたいと思います。

ちなみに私のリーディングリクエストは、元寇です!!またアンケ書きまする🌻ちゃん!!笑

…だって、ねぇ?あんなストーリーで海を越えての友情が土台にできてしまったら、その子孫であるフビライ・ハーンと北条時宗が相対することになる元寇、どんな気持ちで考えればいいの?ってなるじゃないですか(笑)

なんてそんなこともボヤきつつ、いったん締めたいと思います。

ダラダラと書き綴ってしまいましたが、お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました!!