いま安倍政権に媚びへつらっていないのは、TBSの『NEWS23』『報道特集』『サンデーモーニング | 21世紀のケインジアンのブログ

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安倍晋三は尋常ではない!「報道ステーション事件」とマスコミの正体
これは、古賀茂明×広瀬隆さんの対談【前篇】です。

広瀬 古賀さんが、福島原発告訴団の集会で講演してくれたので、本当にうれしかったです。
 今年、古賀さんが出演されたときの『報道ステーション』(テレビ朝日系)の事件は大きな反響がありましたね。

「テレビ朝日の早河会長と古舘プロジェクトの会長のご意向で今日が最後になりました」と切り出したのを、僕はたまたま生放送で見ていて驚きました。
 あんな放送局内部のことを言える人は、古賀さん以外いないですから。しかも古舘さんと言い合いになって「アイ・アム・ノット・アベ」と言うんですからね。

古賀 ご覧になっていましたか。ただし、古舘さんもある意味「被害者」です。被害者というのは、「弾圧を受けている側」という意味です。安倍政権は菅官房長官を中心に報道つぶしをしています。

 報道ステーションつぶしは、2014年の春くらいから始まりました。古舘さん自身は、その頃から転向して、テレビでも徐々にトーンダウンしていきました。

 でも、僕がコメンテーターとして出演したときは思いきり安倍批判ができ、番組全体のトーンも視聴者には「アンチ安倍」に映ります。それが古舘さんの作戦でした。

広瀬 いまは、古賀さんのような人が出てこないから、『報道ステーション』もほとんど見なくなりました。安保反対のデモがどう報道されているかを確認する程度です。御用放送しかしないNHKのニュースは、もう3年間見ていません。

古賀いま安倍政権に媚びへつらっていないのは、TBSの『NEWS23』『報道特集』『サンデーモーニング』くらいです(私のか感覚ではTBSの「報道特集」も)。この3つの番組だけはかなり自由にやっていますが、いまのマスコミは本当にヒドイ

広瀬 そう思います。目の前の原発再稼働の強行や、国民の意志に反したもろもろの政策が横行する問題の究極は、全部大手の新聞・テレビのマスコミに責任があると思います。

日本のマスコミは“政府公報係”

古賀 東日本大震災が発生した日、当時の東電会長・勝俣恒久さんはマスコミを連れて中国に大名旅行に行っていました。電力会社とマスコミがグルだったんですよ。

 電力会社との癒着を知られたくなかったマスコミは、旅行のことを知られたくなかった。だから、勝俣さんが中国に行っていたことが、なかなか表に出てきませんでした。

 大手マスコミは役人と同じで、完全な既得権者なのです。
 大手の新聞・テレビは、記者クラブに無条件で入れます。ここにいれば、取材しなくても役所の情報がもらえます。資料が積んであって、それをもらって読んで、わからないことがあれば、同じ建物のなかにいる担当課の課長のところにいくと説明してもらえます。
 もちろん、役所に都合のいい情報だけですが、それが日々、新聞やテレビのニュースになっているだけです。

広瀬 記者クラブは、本当に気持ちの悪い世界ですね。私もある問題で中に入ったことがあるのですが、こんなことで記事ができるのか、とあきれました。

 海外ではそうした公報を「通信社」が配信していますが、マスコミはそのあとに、さまざまな視点で吟味し、自分たちの意見を加えて独自のニュースにしています。
ところが日本のマスコミは、ジャーナリズムではなく単なる“政府公報係”です。

古賀 役所から資料のコピーをもらうだけで、基本的に取材コストはかからない。資料のコピー代でさえ役所が払ってくれます。出費がないから、日本の大手マスコミは異様に給料が高いんです。
 定年まで問題さえ起こさずに働いていれば、どんどん給料は上がりますし、運のいい人はそこから系列会社の役員などになります。天下りですね。だから、ヌクヌクした世界から抜けたくないのです。

広瀬 ジャーナリズムではないですね。朝日新聞のトップが安倍政権にあんなに媚びへつらったら、現場は安倍政権を批判するような記事を書けないでしょう。書いて問題を起こしても、社長が助けてくれないような会社では困る。
 みんな会社の中で生きていこうと思っているので、ストレートな記事は書かなくなる。仮に書いたら飛ばされる。私の知り合いのまともな記者が、何人も飛ばされました。いまは何も書けないでしょう。

安倍晋三は尋常ではない

古賀 マスコミの世界も悪いし、安倍政権も悪いのですが、なぜ安倍政権だけ巨大な力を持つのかが問題です。前の政権だって、その前の政権だって、やろうと思えば同じことができたはずじゃないですか。

 私はマスコミ側に「安倍さんはおかしい」「尋常ではない」という恐怖感があって、おびえていると見ています。
 普通はマスコミも大きな力を持っています。政権側には、マスコミに一斉に攻撃されたら大変なことになるという緊張感があって、マスコミを攻撃することには、おのずと限度があるのです。

広瀬 報道と政治家の間には、緊張関係がなければなりませんよね。

古賀 しかし、いまは一方的に安倍政権のほうがマスコミより強くなっています。そこには「安倍首相は本気になったら本当に殺しにくる」という思いがあります。

広瀬 安倍晋三というのは、英語で言えばクレイジーではなく、マッド(MAD)です。だって、国民が「やめろ!」ということばかりを平気でやれるなんて、正常な政治家ではありませんよ。

古賀 常識では測れないくらい滅茶苦茶なことをやってくる可能性がある、何をされるかわからないという恐怖感がマスメディアにある。
 だから、懐に飛び込み、仲よくなって内緒の話を教えてもらっていたほうが楽だという風潮になっています。

広瀬 人間には、やってはいけない一線というものがある。この政権は、すでにその一線を越えている。

古賀 民主主義が機能するいろいろな条件をどんどん壊しています。表向きには「戦争はしない」「アメリカとは一体化しない」などと言いますが、昨年の閣議決定前からの議論や議事録を見ていれば、何でもできるようになった経過がわかります。官僚から見れば、政権側が何でもできる状況にしたのがはっきりわかる書き方なのです。

広瀬 世論調査では、安倍晋三は全敗していますよ。それでも、意見をまったく変えません。

古賀 ただ、安保法案を見ていると、相当反対が大きかったこともあり、この間の「70年談話」は、安倍さんの内心では「大敗北」でしょう。自分の思っていることを何も書いてない。あれで支持率が56%戻りました。

 「安倍さんって危ないんじゃないの」という雰囲気が強まっていたのですが、「意外と柔軟なんだ」と、一部の人に思われました。

 韓国とか中国も「こいつはおかしい」と思っているような感じがあって、朴槿恵(パク・クネ)大統領のほうも、まともにケンカすると大変なことになるから、下手に出ないとまずい、みたいな感じになってきています。
 これで日中韓首脳会議が開催できたら、「安倍さんが中国や韓国と戦争を起こしそうだとか言っているけど、ウソじゃないか」というふうになっていく可能性があります。

 こうしたとき、日本のマスコミは、きちんと裏を解説して報道をすべきですが、現在のマスコミには調査報道の能力がないです。
 しかも、トップは完全に日和っていて、「経営陣が現場に介入する」という先進国では絶対にあってはならないことが起きています。

広瀬 原発報道はまったくひどいです。いまでは「原発がないと電力が逼迫する」とはさすがに言わなくなりましたが、いまでも「原発がないと電気料金が上がる」なんて、電力会社の言い分、つまりウソだけを平気で新聞が書いていますからね。

 特にNHKは、それを常套句にして政府広報に徹しています。
 このことは、
『東京が壊滅する日』の「あとがき」に書きましたが、安倍晋三が言っている「原発ゼロだと火力の燃料費が増える。36000億円の国富の流出だ」という話は、2010年と2013年の比較なのです。

 「貿易収支・財務省貿易統計」を見ると、化石燃料の輸入額は、2010年より前、原発が動いていた2008年、リーマン・ショックの年と比較すると、2013年より多いのです。

原発がほとんど動いていない2013年のほうが、輸入額は減ったのですよ。
 つまり2010年と2013年の違いは、世界的な原油価格の変動と、円安が原因なのであって、原発ゼロとは関係ない話なのです。
九州電力と関西電力の経営が苦しくなったのは、再稼働のための安全対策費のためです。今まで手抜きをしていた部分に、金をかける必要が出てきたのです。

古賀 実は政府の発表のなかにも、「原発はコストが高い」と自ら認めている部分がたくさんあります。政府が責任を持ってさまざまな原発維持の仕組みをつくっていますが、これは原発が高いからです。コストが高くて、どうにもならないから、政府が電力会社の分を引き受けるしかない、という事実が明確に出ています。

 エネルギー基本計画でも「原発は安い」という言い方はしていません。「運転コストが安い」としか書いていないんです。廃棄物処理も含めて、原発の操業すべてにかかる総額では、原発のほうがはるかに高いということを認めているからです。

広瀬 そうですよね。政府の発表を垂れ流しにするだけでなく、きちんと分析したり、検証する目が必要です。それがジャーナリズムというものでしょう。
(つづく)

http://diamond.jp/articles/-/78537