――広瀬隆×田中三彦対談<中篇>
前回に引き続き広瀬隆さんと田中三彦さんの対談の<中篇>をお届けする。お二人が、避難にまったく責任を持たない原子力規制委員会の闇を怒りを持って追及する。
田中 8月11日に川内原発が再稼働しました。原発周辺の人は、「新規制基準に適合し、安全な原発になったから再稼働した」と思いたいのかもしれません。しかしながら、それは大きな誤解です。
「新規制基準」とは、安全かどうかを見定めるものではないのです! 実際、この基準を策定しはじめたころ、規制委員会はそれを「新安全基準」と呼んでいた。しかし、やがて自分たちがつくろうとしているものが「安全基準」でないことに気づき、慌てて名称を「新規制基準」に変えている。
新規制基準とは、あくまで、重大な原発事故が起きうることを認めたうえで、その対応ができているかどうかを見定めるものです。
おそるべき九電の正体!
約22分で原子炉炉心が溶融する!
広瀬 この新規制基準の審査はどのように行われてきましたか。
田中 2014年3月号の雑誌『科学』(岩波書店)に、「不確実さに満ちた過酷事故対策――新規制基準適合性審査はこれでよいのか」(井野博満、滝谷紘一)に、川内原発・伊方原発・高浜原発・玄海原発など、再稼働の対象になっている加圧水型原発(PWR)の審査のやりとりが書かれているのですが、この内容はかなり衝撃的です。
原子炉に直結している大口径配管(一次冷却水配管など)が破断し、何らかの原因で交流電源(外部電源と非常用交流電源)が失われた場合、配管の破断で冷却水が失われてゆき、しかも電気がこないために緊急炉心冷却装置のポンプが動かず、格納容器スプレイ装置も動かないという最悪の事態になります。
九州電力によると、佐賀県にある玄海3・4号機の場合、わずか約22分で原子炉の炉心が溶融するという事態に突入します。たった22分ですよ。
広瀬 再稼働直前の検査段階で、九州電力が何をやりましたか? 大事故を想定した訓練をやったのですよ。要するに事故は起こると思いながら再稼働させているわけです。それをみんなが認識していないということですよね。
原子力規制庁の役人でさえ、「原子炉の炉心溶融を止める、あるいは遅らせるという努力を一切せずに放置するのか」と尋ねて、問題視していますが、九州電力の社長は、「炉心溶融を止める手段は一切ない」と答えています。
広瀬 九電の社長がヒアリングを受けて堂々と「炉心溶融を止める手段は一切ない」と言っている。信じられないが、これは正直な事実の告白です。
加えて、その時に格納容器に水をためて、灼熱の金属の塊を受けると言っている。たちまち火山と同じ水蒸気爆発が起こることは子どもでもわかるのに。
なぜこれほど重大なことを、新聞やテレビが報じないのかと腹が立ちます。そんなデタラメ対策なのに、なぜ基準に適合するのか、理解できる人はいません。
さらに重要なことは、深層防護の第5層の住民避難、つまり防災対策には原子力規制委員会は関与しない、規制対象外だ、と明言しています。
広瀬 ヒドイ話だ。大事故は起きると認めながら、起きた後、俺は知らないなんて。
田中
田中俊一・原子力規制委員会委員長が、第5層の避難計画に原子力規制委員会は関与しない、と明言しているのは、自分たちは責任者ではないと言いたいからです。
それなのにメディアは「一応、原発の安全性が高くなった」かのように報道しています。記者たちがまったくわかっていません。
広瀬隆さん「原発メルトダウンについて」