やっと、こういう案が出てくるようになった。誰もが知っていることであるが、日本の財政状況は破綻に向かっている。これを解消しようと消費税の引き上げを行っている。しかし、いくつかの試算によれば、消費税引き上げだけでプライマリー・バランス(PB)を黒字化しようとすれば、計算上、消費税率を20%程度まで引き上げなければならない。
私は、日本の財政再建にあたっては、消費税に過度に依存してはならないと思う。所得税、法人税、消費税、相続税のそれぞれにバランスをとりながら必要な税収アップに取り組む必要があろう。私は、法人税率の引き下げには反対だ。下げても海外企業の日本進出に与える影響は少ない。単なる大企業優遇策に終わる。所得税も格差是正の観点から、最高税率の見直しが必要だ。戦後の最高は住民税込みの実効税率が93%である(現在は50%)。働く気がなくなる93%に戻せよとは言わないが、最高税率の引き上げは必要だ。また、年収1000万円~2000万円程度のアッパー・ミドル層への所得税負担はもっと重くてもいいと思う。
さらに、毎年1兆円の増加が見込まれている社会保障費への痛みのともなう改革も不可欠である。この記事にある「収入が多い高齢者の年金を減らす仕組み」のような高収入・高資産者への痛みの伴う負担増加は、これからの財政再建には欠かせない。私の元上司の世代で、公的年金・企業年金の合計で毎月50万円以上貰っている人はたくさんいる。家のローンは終わっているので、家賃負担はないし、子どもは手が離れているので、教育費の負担もない。だから、旅行・グルメ・コンサート・ゴルフ三昧だ。
日本では、「団塊の世代」の年金支給年齢の引き上げをするかどうかが、かつて大きなポイントだった。しかし、結局、「団塊の世代」は逃げ切り、60歳から年金を貰っている。今は、「団塊の世代」への年金支給が始まった後、年金の支給年齢は65歳に引き上げられ、将来的には67~68歳程度への引き上げも囁かれている。もちろん、自助努力の部分は尊重されるべきであるが、制度上の世代間の有利・不利、は是正しなければならないだろう。また、負担能力のある人への税金・社会保障の傾斜配分的な負担も不可欠であろう。なもちろん、議員定数や議員歳費、公務員の給与削減などは一番の削減対象だ。今、日本人に一番足らないのは、ノブレス・オブリージ(地位高き者、責重し)の精神だと思う。恵まれている人々が、自分さえよければいいというのでは、この国を立ち直らせることはできない。
朝日新聞デジタル 5月19日(火)7時9分配信
政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)は、収入が多い高齢者の年金を減らす仕組みを検討する。学者や財界出身の民間議員が19日の諮問会議で提言し、6月末にまとめる政府の財政健全化計画に盛り込ませたい考えだ。ただ、負担増となる高齢者からの反発は避けられず、難航が予想される。
民間議員が検討している提言案によると、一定の収入を超える高齢者については、税金で半分が賄われている基礎年金(満額で月約6万5千円)の一部を給付しないようにするべきだという。年金を支える国の負担を減らして、主に税金を支払っている現役世代の将来負担を軽くする狙いだ。
高齢化で拡大が見込まれる医療費を抑えるため、いまは2年に1回の薬価の改定を毎年行うことも盛り込んだ。薬価は、発売から時間がたつにつれて下がるため、改定回数を増やせば、それだけ患者の窓口負担が減ることにもつながる。