ワタミで起きた過労死の問題でワタミが労働基準法違反を犯していたということを東京新聞が書いていたが、このポイントは私がかねてから疑問に感じていたことが問題になったなと感じた。この東京新聞の記事の内容を要約すると、こうだ。
「ワタミに入社二カ月後に自殺した女子社員が、長時間労働などを理由に過労死と認定された問題で、ワタミが労働基準法で定められた労使間の手続きを踏まず、従業員に時間外労働をさせていたことが、会社側への取材で分かった。」
この記事を読むと、ワタミがものすごく悪いことをしているような印象を与える。しかし、私を含めて労務に携わった経験がある方なら同じようなことを考えたのではないだろうか。この記事で問題視しているような時間外労働を認めてもらうための「時間外労働・休日労働に関する協定(三六(さぶろく)協定)」の労働基準監督署への届け出は、どこでも行なわれており、全くのザルだというのが実態である。労働基準法で定められた労使間の手続き届け出手続きは完全に形骸化しているし、形式さえ整っていれば労働基準監督署の方もそれ以上は厳しくチェックしようともしない。
現状は手続きが完全に形骸化しているので、経営者側の思うままに従業員側に長時間労働を強いることが可能となっている。このような実情はもはや当たり前となっているので、東京新聞が取り上げてくれたことは意味があるが、この記事で終ったのでは何の意味もない。東京新聞がまず取材するべきは、このように無法状態になっている時間外労働について厚生労働省が監督を厳しくする意向を持っているかどうかである。厚生労働省に監督を厳しくする意向がなければ、現在の状態は放置されたままにならざるを得ない。そこまで確認して必要だと判断すれば、さらに踏み込んで現状を改善するべきだという記事を書くべきだ。この記事を書かれた記者はそこのところをよく取材してそこまで突っ込んでほしい。そうでないと、不備だらけの三六協定の労働基準監督署への届け出でこのワタミの女子社員がなにか犬死にしてしまったように思えて仕方ないからである。
残業で不正手続き ワタミ過労死 労使協定 形だけ
2012年5月17日 07時03分
居酒屋チェーンを展開するワタミフードサービス(東京)に入社二カ月後に自殺した森美菜さん=当時(26)=が、長時間労働などを理由に過労死と認定された問題で、同社が労働基準法で定められた労使間の手続きを踏まず、従業員に時間外労働をさせていたことが、会社側への取材で分かった。手続きが形骸化すれば、経営者側の思うままに従業員側に長時間労働を強いることも可能だ。同様の違反はほかの企業でもみられ、専門家は「適正な手続きが担保されないと、過労死を助長しかねない」と警鐘を鳴らす。
この手続きは「時間外労働・休日労働に関する協定(三六(さぶろく)協定)」。厚生労働省労働基準局監督課は、ワタミフードサービスについて「適正なやり方とは言えず、労基法に抵触する」と指摘している。
労基法上、時間外労働は禁じられているが、労使間で三六協定を結べば認められる。三六協定を結ぶには、経営者側は店や工場ごとに労働組合もしくは、従業員の過半数の推薦で選ばれた代表との合意が必要となる。
ワタミフードサービスは毎年、「和民」など全国五百三十のチェーン店(四月一日現在)で三六協定を結んでいる。同社は労働組合が無く、協定を結ぶには、店舗ごとに社員やアルバイトの過半数の推薦を得た代表と合意しなければならない。しかし、実際は違った。
親会社ワタミの法令順守部門を担当する塚田武グループ長は「店長がアルバイトの中から代表を指名し、協定届に署名させている」と、手続きが形骸化していたことを認めた。
同社は全店の協定届に、従業員の代表を「挙手で選出」と明記していたが、塚田氏は「挙手している前提で記載していたが、実態として行っていなかった」と釈明した。
森さんが勤めていた神奈川県内の店では当時、月百二十時間まで時間外労働を認める三六協定が結ばれていた。ワタミは「次回の三六協定の更新時から、適正な手続きに改める」としている。
森さんは二〇〇八年六月に自殺。労災を認めた神奈川労働者災害補償保険審査官によると、月の時間外労働時間は厚労省が過労死との関連が強いとする八十時間を上回り、約百四十時間に及んだ。
(東京新聞)