大相撲に関する著書のある慶応大学中島隆信教授が3月13日の日経新聞のコラムで大相撲の今後について経営学的側面からの問題提起と提言を行なっている。大相撲については長らく八百長問題に興味があった私であるが、そのコラムによれば経営的に見た大相撲の現状が想像以上に厳しいことに驚いた。八百長などやっている場合ではない。
最大の問題は日本相撲協会の財務状況が急速に悪化していることである。2008年から事業収支が4期連続で赤字となり、その合計額は70億円を超える。赤字の原因は観客の減少と高コスト構造にある。1997年から2010年までの13年間で本場所の有料入場者数は90万人から60万人へと約1/3の30万人減った。その一方、コストの削減は進まず、経常費用の6割が人件費で、その1/4が親方の給与になっている。親方の数や報酬額は寄付行為で定められており極めて硬直的になっている。
角界の将来を担う新弟子の受験者数も若貴ブームの1992年の234人をピークに減少トレンドを辿り不祥事続きの昨年はわずか63人。それに伴い、力士数も1994年夏場所の943人から減り続け今年の春場所では621人とこちらも約1/3減っている。
巨額の赤字、入場者数の減少、減り続ける入門者。協会が抱えるこうした問題の原因を最近の不祥事のみに帰着させ、「教育の徹底」「土俵の充実」を唱えておけば、そのうち人気は回復するだろうと考えるのはあまりにも安易である。日本は減少人口社会に突入していて、このままなら観客や若手の数は減る。いまや、どのスポーツも生き残りに必死なのだ。大相撲も将来を見据えた長期的な戦略が必要である。国内の市場だけを考えた場合、力士や親方、相撲部屋、本場所の開催などが現在の規模のまま維持できるとは考えにくい。
適切な規模に縮小するか、国内の先細りを睨んで海外市場に徐々に重心を移していくなど何らかの対策が必要であろう。海外での本場所開催も今のうちから準備しておいた方がいいだろう。協会は今、公益財団法人への移行を目指しているが、今の経営状態のまま認定を受ければ、赤字を垂れ流す大相撲興行に公益のお墨付きが与えられることになる。そのような事態を避けるには、貴乃花親方がお笑いの舞台に立ったりする以前に、リストラへの着手など、まず経営の勉強をしてほしいが、今の危機感のない相撲協会では本当に不安である。世間の常識の無い親方ばかりで運営している現状では難しいだろう。本当に追い込まれる前に、経営手腕のある外部の人材の採用・活用に踏み込めるかどうかが鍵だと思う。