そもそも、オリンパスの体質に問題あり | 21世紀のケインジアンのブログ

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現在、不正経理問題によってオリンパスの企業ガバナンス自体に対する信用は激しく揺らいでいます。8月に一過性の報道があった下記の内部通報における不適切な対応の問題と、現在のオリンパスを巡る不祥事は、その極めて陰湿な企業体質に由来するという本質を同じくするのではないかとの印象を持っているのは私だけではないと思っています。





『薄々疑問はあっても、モノ言わぬカルチャー』。それがオリンパスの今回問題になっている損失隠し問題の本質といえます。そんな企業風土を象徴する出来事の1つが、オリンパス現役社員の濱田正晴さんによる内部通報の是非を争った裁判です。


 濱田さんは2007年6月、上司が取引先企業からの社員引き抜きを行っていることが不正競争防止法に抵触する恐れがあるとして、社内のコンプライアンス窓口に通報。すると、なんと通報の秘密が守られることなく、濱田さんの直属の上司に情報が漏洩されたあげく、営業職として15年間も積んできたキャリアとは全く別の研究職へ飛ばされ、年収も下げられた。


 東京高裁は2011年8月、配転命令は無効だとし、会社側に220万円の賠償を命じる判決を言い渡した。つまり、権力に追従的な裁判所が認定したほど、濱田さんには正義があったということでしょう。

 今から思うと、この裁判と今回の不正経理の問題の両方を眺めれば、オリンパスの企業体質に大いに問題があったことは明らかです。しかも、この裁判の高裁判決が報道された時には、既に、月刊誌『FACTA』がオリンパスの不正経理の問題をスクープしていました。それなのに、メディアは、どこも他にもこのような問題があるのでオリンパスの企業体質には大いに問題があるとは書きませんでした。残念ながら、以下のように菊川元社長のメディア対策が見事に成功していたと言わざるを得ません。


菊川氏は、メディア対策として、日本経済新聞社の専務を務めた来間紘氏を、
2011年6月に社外取締役に据え、少なくとも日経には書かせないよう口止め策を打ち、各マスコミに莫大な広告宣伝費を投じることで、口封じをしていました。しかし、『FACTA』の口を封じることまではできなかったのです。
 「日本のメディアが書き始めたのは、菊川が退任してからです。それまでは、情報が出なかった。それは日経出身の来間が頑張った結果でしょうから。なお、日経出身の来間がメディアを対策頑張ったのですが、それを無意味にしてしまったスクープをした『FACTA』の阿部編集長、そして、記事を書いた山口氏ともども日経出身であったと言うことは実に皮肉なことです。


以下、この問題に詳しい蒲 俊郎弁護士のコメントです。



「配転命令の不利益わずか」…通報者がまさかの敗訴(東京地裁)

 ところで、今回のご相談ですぐに想起されるのは、冒頭に述べた、いわゆるオリンパス事件と呼ばれる訴訟です。同訴訟は、オリンパスの社員が、社内のコンプライアンス窓口に対して上司の不正な行為を通報したことで、必要のない配転命令などの報復を受けたとし、当該配転命令の効力を争うとともに、この配転及び配転後に退職に追い込もうと嫌がらせを行ったことが不法行為を構成するとして、慰謝料等を、会社及び上司らに対して請求した事案です。

 本事案について、平成22年1月15日、第1審である東京地方裁判所は、不利益な配転を受けたとする原告(通報者)の請求を棄却しました。東京地裁は、通報者が行った通報につき、公益通報者保護法にいう「通報対象事実」に該当する通報ではないとし、さらに、配転命令が、通報の制裁としてなされたもので権利の濫用であるという主張についても、本件配転後に賞与が若干減額されているものの(2年間で23万9100円)、勤務地は変わらず、配転命令による不利益はわずかなものであるなどとして、本件配転命令が報復目的とは容易に認定し難いと判断したものです。

 この裁判所の判決については、正直言って、私も、意外な結果に非常に驚いたのですが、当然のことながら、各層から、裁判所の判決に対する様々な厳しい批判とともに、上記原告(通報者)に対する応援メッセージがメディアを通じて発信されたりしました。



 上記判決に対し、原告は控訴をし、平成23年8月31日、東京高等裁判所は、今度は、控訴人(通報者)の請求を認め、配転命令の無効を確認し、精神的苦痛や賞与の減額分などを損害と認めて、オリンパス及び上司に対して220万円を支払うように命じる、逆転勝訴判決を下しました。この逆転勝訴判決が、メディアの大きな注目を集めたことは言うまでもありません。



「上司へのCCメールは守秘義務違反」…通報者の逆転勝訴(東京高裁)

 東京高裁の判決では、通報が公益通報者保護法における公益通報であると明確に認定はしていないものの、オリンパスの内部通報に関する運用規定に照らせば、内部通報に該当するものであることを認定し、それゆえ、通報を受けたコンプライアンス室が、「控訴人(通報者)の秘密を守りつつ、本件内部通報を適正に処理しなければならなかった」としています。

 その上で、コンプライアンス室長が、通報者に対して、通報に対する回答メールを送る際に、当該メールを、上司と人事部長にCCで送ったことにつき、守秘義務違反があったことを認定し、また、通報者による通報の事実を認識した上司が、「本件内部通報を含む一連の言動が控訴人(通報者)の立場上やむを得ずされた正当なものであったにもかかわらず、これを問題視し、業務上の必要性とは無関係に、主として個人的な感情に基づき、いわば制裁的に配転命令をしたものと推認できる」と認定した結果、同配転命令が通報による不利益取扱を禁止した運用規定に違反したと判断しました。

 さらに、通報者が受けた不利益について、「当時47歳であった控訴人(通報者)を全く未経験の異なる職種に異動させることは、従来のキャリアの蓄積をゼロにして、事実上、昇格及び昇給の機会を失わせる可能性が大きい」「昇格の機会の喪失は、退職金の減少をもたらすし、昇給がないことは賞与の減少をもたらす」とした上で、通報者にとって「著しく達成困難な課題、あるいは全くの新人と同様の課題を設定することは、それ自体不合理であり」「屈辱感を与えるなど精神的負担を与えるものと認められる」と判示し、配転命令につき、人事権の濫用であるとしました。

 今回の高裁判決により、内部通報に伴う人事権の行使が濫用に該当するという判断を明確にしたことで、内部通報に対する会社の取扱い、特に、内部通報に伴う秘密保持については厳格に行われなければならないという教訓が、各企業に与えられたことになると思われます。

 「・・・平成23年8月31日、東京高等裁判所が、オリンパスの社員による内部通報を巡る訴訟で、一審判決を覆し、内部通報者である社員の主張 を認める逆転判決を言い渡した・・・」
http://www.yomiuri.co.jp/otona/life/law/20111108-OYT8T00883.htm