CMBS。金融関係者がこう呼ぶ証券化商品の問題が、じわりと表面化し始めている。
CMBSとは、耳慣れない言葉だが、オフィスやショッピングセンターなど、商業用の不動産事業から得られる収益を返済原資とする債権を基に、金融機関やファンドがSPC(特別目的会社)を通じて発行する証券を言う。(要するに、商業ビル版のサブプライムローンを証券化して、小口にしたりして投資家に販売したもの)。2002年から2007年までの不動産ファンド全盛期、外資系金融機関の多くはファンドなどが購入した商業不動産へのローンを提供し、その債権をCMBSとしてメガバンクや保険会社、地方銀行などに販売した。
UBS証券によれば、ピークの2007年には、わが国で2兆円以上のCMBSが発行された。裏づけローンの多くが返済期限を約3年に設定していることから、2010年に大量のローンが返済日を迎えるのだ。
通常、これらのローンは返済期限が到来すると、いったん、既存の借入金を返済し、再び借り入れる「リファイナンス」を実施する。ところが、不動産を巡る環境は2008年を境に一変。世界的な金融危機によってローンの主な出し手だった外資系金融機関(一番積極的だったのが、リーマン・ブラザーズと言われています)が国内から相次いで撤退してしまった。
リファイナンスの担い手がいない以上、借換先が見つからない場合に残された道はデフォルト(債務不履行=返済できない)しかない。当然、CMBSの保有者である銀行や保険会社は損失を被り、発行した金融機関やファンドも傷つく。
ムーディーズによれば、2008年9月末まではわずか3本だったCMBS関連ローンのデフォルト件数は、1年後には38本に急増した。
今後、返済期限が到来するローン残高も決して少なくない。2010年から2012年にかけて約2兆7000億円の返済期限が待ち受ける。これは、三菱地所の年間ビル賃貸収入のざっと8倍。実態はさらに多いと見る金融関係者もいる。「ローンを出した金融機関の中には、CMBSとして投資家に売らず、そのまま債権として保有している場合も多い」と、ある不動産ファンドの社長は言う。「その金額を考慮すると、総額は2倍以上はあるだろう」。
特に、デフォルトが懸念されているのが、収益性の低い中・小型のビルや地方の商業施設などが大量に組み込まれたCMBSのローンだ。2007年頃まで、高利回りを確保するために、外資系金融機関がこぞって、これらのCMBSを販売した。「そうしたローンの借り換えには銀行はまず応じない」と大手証券会社の担当者は断言する。
通常、CMBSのローンがデフォルトすると、信託銀行などが投資家の意向を踏まえて担保物件の処分を協議する猶予期間が設けられる。そして1~2年ほどの間で方針をまとめ、物件売却などの手段に移る。
金融機関が心配しているのが、デフォルトしたローンの担保物件が、安値で市場に出回ることだ。「収益が見込めそうな都心部の高層ビルを除けば、物件の叩き売りが横行するのは必至」との証券会社担当者は言う。そうなれば、担保としている物件価値も連鎖的に下がり、金融機関の業績下押し要因となる恐れもある。
中でも、銀行はCMBSを保有する投資家、CMBSの裏づけローンを提供するお金の貸し手の両面で関わっており、今後さらに損失が
拡大する可能性も否めない。2010年問題の大変さはここにあるのだ。
銀行の多くは、自社のバランスシートに悪影響がないよう、物件を選別しながらローンの借り換えに応じている。しかし、オフィス市況は今後数年のうちに改善する可能性は低く、いわば問題の先送りでしかない。その構図は、バブル崩壊後の不良債権処理の姿に似ている。
本家のアメリカでは、CMBSが既に暴落しつつあり、次第に大きな問題になってきている。日本で、CMBS物件の本格的な売却が始まるのは、今年の後半以降と見られている。破裂間近の2010年問題は、秒読み段階に入った。 動向には要注意されたい!