2025年11月7日(金)
娘が高学年になって、塾に通い出した頃
とにかくお金が必要になって、
私は時給の良い夜に働くことにした![]()
幸い私は両親や妹を頼れたので、
夜中働いても娘をひとりにしないで済んだから
お酒が飲めないのでホステスは無理だと思って、
居酒屋で3時まで働いた
そこの社長は以前私が勤めていた魚市場に買い付けに来ていて、
人柄もよく知っていた
その店が求人を出しているのを見つけて、
夜の仕事でもここなら安心って思えて始めた![]()
とても繁盛している店で、
開店の5時と同時に、
待っていたかのようにお客さんが入ってきて
あっという間に満席になる![]()
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社長の人柄のせいか、
常連さんたちはいい人達ばかりで
働いていて楽しかった![]()
その社長は、とにかく懐の深い人で
まず驚かされたのが、
若いバイトの子たちの扱いだった
私が入ったと同時くらいに採用された
高校生の女の子がいた![]()
高校生なので、5時から10時までの勤務なのだが
一週間が経った頃、連絡も無くサボった![]()
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ホールは3人いないと回せない感じだったので、
1人休まれたらてんてこ舞い
シフトのドタキャンだけは勘弁してって感じの店だったのだが
何の連絡もなくドタキャンだ![]()
バッタバタの1日が終わったが、
社長は「来ねぇな…」って一言こぼしただけで
あとは何にも言わなかった
その子は次のシフトからは普通に来て
社長はどう説教するのかなと思って見ていたが
何事もなかったかのように接していた
連絡もよこさずサボった子が
謝りもせず何食わぬ顔で出勤して来たことに
当時の私は驚いた
でもそれ以上に、その社長が
何のお咎めもなしにその子を受け入れて
変わらぬ態度で接している事にもっと驚いた![]()
暫くして、今度は高校生の男の子が入って来た
初日、威勢よく働いたが
翌日はもう来なかった![]()
私からしてみると、ハァ??って世界だった
その次のシフトの日も来なかった
確か一週間以上来なかった
なのに、ある日出勤してきた![]()
その子にも、何のお咎めなしだった
この子達、こんなんで使いものになるの?
私はそんな風にしか受け取れなかった
だけど、違った
この子達が、その後、本当によく働いてくれた![]()
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学校の勉強はほとんどしていないというのが
見て取れる
下手をすると、メニューの漢字が読めなかったりする
だけど、二人ともよく気がつき
段取りも良く、頭がいい
サボったのは最初だけで、
そこから穴を開けることは一度も無かった
自分がそれまで経験して来た世界では、
最初からサボるような人物を
受け入れるような事はまず起きないので
私は、この社長の凄さを知った
それだけではない
私が入って間も無くのことだが、
スタッフの指輪が無くなった騒動が起きた
それまでそんな事は一度も無かったようで
女性スタッフ達の疑いの目が私に降り注いだ
その時、私を守るかのように
みんなの前で、厳しい顔で「ごめんな」と言って
私のエプロンのポケットを社長が確認した
その時の社長の振る舞いが今でも忘れられない
私を疑っている訳ではなく
守ろうとしてくれているのが
伝わって来たから![]()
従業員みんな仲が良く
社長が大事にしてくれて
毎日5時の開店が楽しみだった![]()
先に話した高校生の二人は、
どちらも親が水商売をしていた
バイトが終わっても、家には誰もいないので
何となく店に残っている日も多かった
女の子の母親は、
自分で小さな小料理屋をやっていたが
経営が上手くいかなくて
と、いうより
付き合っていた彼氏のところに行っちゃって
店を開けない日が多くて![]()
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ある日、
その子の住むマンションの電気とガスが停められた
当時の私は世間知らずだったので、
この時代に電気やガスを止められるって
何にそれ⁉︎って驚いた
どんだけいい加減な親なんだって
その頃はもうその女の子と仲良くなっていたので
憤りさえ覚えた![]()
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そんな母親に対して、社長は
自分のところで安く仕入れた材料を
そのままの値段で分けてあげる事にして
これでしっかりやれよと
言って聞かせた![]()
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最初は良かったが、その母親は
また彼氏のところに行ってしまい
用意していた材料を取りに来なかった
いくらなんでも、
こんな失礼は無いだろうと思ったのだが
それも社長は許していた
次の日も、その母親のために材料を揃えた
今、私はその頃の社長の歳になりつつある
どうしたら、そこまでになれるのだろう
本当に、何事もなかったように
平然としてそれをやってのけていた![]()
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私も、社長のような人間になりたい
懐の深い人になりたい
大きく人を包み込めるようになりたい
でも、これはなかなか難しく
一生掛かってもなかなかその境地になれない気がする
人生まだまだ修行ですね
