ひっそり書いている読書感想文。色々と本は読んでいるものの、ついつい感想文を書かないまま日が経ってしまい、内容を忘れるというパターン…。
今回は先日読み終えたばかりで、ガラスの記憶力が自慢の私でも鮮明に覚えてます♪
『悪の教典』上下
はい!新年1冊目に相応しい爽やかな作品ですね(笑)。映画化され、人気教師ハスミンを伊藤英明が演じて話題になりました。
まぁまぁ分厚い文庫本で上下巻、全てサイコパスなハスミンこと蓮実先生と、彼が受け持つクラスの生徒達の話です。…改めてこう書くとすごい。
ハスミンはイケメンでカリスマ性があり、熱血教師という仮面を被っているため生徒から大人気で、周りの教師達からの信頼も厚い。しかし裏では、自分の思い通りにいかない人間をいとも簡単に抹殺するサイコパスだった…。
IQの高い蓮実は殺害方法や遺体の隠し方を綿密に練り実行するため、誰もその正体に気付かずにいたが、ある生徒たちが蓮実に違和感を覚え彼を調べ始める。すると以前赴任していた学校でも生徒や教師の不審死が立て続けに起こっていたことを知る。そしてある生徒が蓮実の正体を確かめるため夜の校舎に侵入するが…。
都合の悪い人間を抹殺する彼の計画はやがて綻びを見せ始め、連続殺人が露見しそうになる。木を隠すなら森…2つの遺体を隠すなら…?文化祭前夜、蓮実の恐ろしい計画がはじまる。
ザックリまとめるとこんな内容。サイコパスが出てくる小説のほとんどは、その悪と戦う相手の目線で書かれているので、警察とか探偵の視点が多いですよね。この本の面白いところは、蓮実自身の目線で描かれている部分が大半を占めること。都合が悪くなると、その人間を消してしまえぱ良いという常人には理解し難い考え方。どのように殺害するか…相手を呼び出すところから遺体の処理までをどんな思考で計画するのか。このあたりが非常に興味深いです。情とかそんなものは一切存在せず、ひたすら自分の利益だけを考える蓮実。実際のサイコパスもきっとこんな思考回路なんだろうな~なんて思いながら読み進めました。
もうひとつは生徒たちの目線で描かれます。爽やかな人気教師という仮面の下に隠された恐ろしい魔物にターゲットとして睨まれた時…生徒たちが何を思いどのような行動をするのかも注目です。
それでも蓮実の言葉を信じる者。反撃に出るもの。殺された友人の復讐に燃える者。これを絶好の機会にアーチェリー部の自分の力を試してみたい者。教室に籠城する者。クラスメイトをおとりに使う者。罠を仕掛ける者。あまりの恐怖にパニックになるもの。それぞれの思惑は複雑に絡まり、事態を更に悪化させていきます。
蓮実を止められるのは誰なのか。はたまた誰も止められないのか。生き残る生徒達はいるのか、いないのか…。下巻は生徒達の緊張感と恐怖が鮮明に描かれ、読者を引き込みます。
内容が内容だけに、読み切れるかなと心配していましたが全く大丈夫。これは作者の表現力なんでしょうが、展開が気になりどんどん読み進めちゃいました。
人にオススメはできないけれど、読んで後悔のない小説でした。伊藤英明のイメージぴったりだな~。あの爽やかな笑顔にみんな騙されちゃうんだ!彼がどんなハスミンを演じたのか、映画も観てみたくなりました。