ひっそり更新の読書感想文。今回はこちら。
長岡弘樹『線の波紋』

関係者それぞれの目線で描かれた短編集が集まり、事件の全容が見える長編作。パズルのように、全ての話が一つの女児誘拐事件へと繋がっていきます。
第1章「談合」
溜池工事の担当者で、反対派と賛成派の板挟みになりながらも奮闘する役場務めの千賀。目を離した一瞬のうちに娘を誘拐されてしまうが、なんとか気持ちを奮い立たせ仕事に励んでいる。
そんな彼女にかかってくる「お宅のまゆちゃんが遺体で発見されました」という悪質なイタズラ電話。一体だれが何の目的でかけてくるのか…。また、入札の情報が漏れている疑惑も持ち上がり…。
第2章「追悼」
真由ちゃん誘拐から二ヶ月後、会社員の鈴木が公園で殺害されているのが見つかる。同僚だった久保は、経理部に務める彼に横領を指摘されていた。
死んだ鈴木の携帯に今も届くメールを見て、驚く久保。鈴木はすでに不正を告発していたのか…?そして彼を殺したのは誰なのか?誘拐現場で目撃された男の背格好に似ている彼は、事件に関わっていたのか?
そして一番の謎。刺殺された彼はなぜ微笑みを浮かべ亡くなっていたのか。
第3章「波紋」
女刑事の亜矢子は、幼女を誘拐した犯人を捜査しているうち、ある人物に思い当たるが…。
第4章「再現」
これまでの全ての話が一つに繋がり、事件の全容が見えてくる。謎が解けるとともに、そこには「誰かが誰かを守ろうとした物語」が浮かび上がる。
全ての章が、ひとつの誘拐事件に繋がっていく様子は実に見事!読者を飽きさせません。
そしてこの作者のすごいところ…。登場人物の人柄や心理描写がとても上手いこと。普通なら蛇足になってしまいそうなエピソードや会話も、その人物がどんな人なのかを説明する大事な要素になり、ちっともうるさく感じさせないのです。
推理小説としての面白さはもちろん、この作家さんの持ち味である「人間味」が繊細に描かれており、悪人が悪事を働くという単純な話ではないところもミソ。どこかに誰かの優しさが隠れていたり、思いやりが除いたりと、必ず「救い」があるんですよね。内容は幼女誘拐事件ですが、後味が悪くならない作品です。
長岡弘樹『線の波紋』

関係者それぞれの目線で描かれた短編集が集まり、事件の全容が見える長編作。パズルのように、全ての話が一つの女児誘拐事件へと繋がっていきます。
第1章「談合」
溜池工事の担当者で、反対派と賛成派の板挟みになりながらも奮闘する役場務めの千賀。目を離した一瞬のうちに娘を誘拐されてしまうが、なんとか気持ちを奮い立たせ仕事に励んでいる。
そんな彼女にかかってくる「お宅のまゆちゃんが遺体で発見されました」という悪質なイタズラ電話。一体だれが何の目的でかけてくるのか…。また、入札の情報が漏れている疑惑も持ち上がり…。
第2章「追悼」
真由ちゃん誘拐から二ヶ月後、会社員の鈴木が公園で殺害されているのが見つかる。同僚だった久保は、経理部に務める彼に横領を指摘されていた。
死んだ鈴木の携帯に今も届くメールを見て、驚く久保。鈴木はすでに不正を告発していたのか…?そして彼を殺したのは誰なのか?誘拐現場で目撃された男の背格好に似ている彼は、事件に関わっていたのか?
そして一番の謎。刺殺された彼はなぜ微笑みを浮かべ亡くなっていたのか。
第3章「波紋」
女刑事の亜矢子は、幼女を誘拐した犯人を捜査しているうち、ある人物に思い当たるが…。
第4章「再現」
これまでの全ての話が一つに繋がり、事件の全容が見えてくる。謎が解けるとともに、そこには「誰かが誰かを守ろうとした物語」が浮かび上がる。
全ての章が、ひとつの誘拐事件に繋がっていく様子は実に見事!読者を飽きさせません。
そしてこの作者のすごいところ…。登場人物の人柄や心理描写がとても上手いこと。普通なら蛇足になってしまいそうなエピソードや会話も、その人物がどんな人なのかを説明する大事な要素になり、ちっともうるさく感じさせないのです。
推理小説としての面白さはもちろん、この作家さんの持ち味である「人間味」が繊細に描かれており、悪人が悪事を働くという単純な話ではないところもミソ。どこかに誰かの優しさが隠れていたり、思いやりが除いたりと、必ず「救い」があるんですよね。内容は幼女誘拐事件ですが、後味が悪くならない作品です。