しっぽの気持ち | 伽想詩

伽想詩

愛するものは猫と本と花......そしてantique

猫の尻尾はどんな役目をするのだろう

ヒマラヤのユキヒョウは長くて太い尻尾を

舵のようにして険しい崖を走り降りる

そんな危険な事とは無関係な日常でも、いざ獲物を狙う時には

たとえ家猫でも尻尾でタイミングを計って飛びついたりする



うさぎのようなボンボン玉みたいな尻尾

幸運を呼ぶと言われている鍵尻尾

途中で曲がったピカチュウみたいな尻尾

そして私の大好きだったミーコの長いまっすぐな尻尾



動けなくて、鳴く事も目を動かす事も出来なくなった彼は

最後のコンタクトとして尻尾と耳を使っていた

元気な時のように振り回す事は出来なくても

「ママサン、大丈夫デスヨ」そう言いたげにわずかに尻尾を動かしてくれた

最後まで人間と同じように耳はちゃんと聞こえていたから

彼の前では絶対に弱音は吐かなかったし

いつもと同じように暮らしていようと思った

たとえこのままずっと寝たきりでも生きてさえいてくれたら良かった

だけどそれは私の独りよがりのエゴだったのだと、今は思う

魂が抜けてしまった体は、よほど苦しくて辛かったのだろう

もう以前の面影も無く見ていて辛くなる姿だったけれど

尻尾だけはそのままで少しも変わらず美しかった

きれいなミーコのきれいな尻尾



体は諦めるから、せめて尻尾だけ切り取って何とか保存方法を考えて
そのまま持っておきたいと本気で思ったほどだった



斎場の炉から出てきた時

37㎝のそのまま、真っ白で美しく、少しも形乱れる事無く

それは緩やかな弧を描き、眠ったその時のままの姿を私に見せてくれた

星の形の断面さえ一つ一つが愛しくて美しかった

悲しいほどに美しかった


私はだから長くてまっすぐな尻尾が大好きで

これからもきっとずっと大好きなのだろう


彼等は言葉を持たないけれど

全身と五感をフルに使って私達に話しかけてくれる

きっと尻尾もその一つなのだろう

そして私にも尻尾が有ればもっと彼等を理解出来るかも分からないのに

$I will see again・また逢おうね