もう一度部屋を見渡してしまう
そして階段を上がる前に
ふと振り返って見てしまう
ゆっくりと一段ずつ私の後を
グレイの愛しい子が付いてこないだろうか
先に待ってる私のベッドへ飛び乗ってこないだろうか
毎日の事なのにワクワクしながら待っていた
ふわっと飛び乗って「にゃん」と小さく鳴いて
少し頭を撫でてやるとゴロゴロ言いながら毛繕いをする
そうやって全身を私に委ねる体の温もりと
今、同じ場所に確かに居ると言う事を痛い程感じながら
とても幸せな気持ちで一日を終える事が出来た
だけど、もう私がいくらベッドで待っていても
どんなに名前を呼んでも
あの子が階段を上がってくる事は無い
少しは慣れたつもりで居たのに
まだ当分はあのベッドで眠る事が出来ない
願わくばもう一度だけ真夏の夜の夢を見させて欲しい
でもその夢は叶うはずも無い夢だと最初から分かっているけれど
そうか、未だにこんな事を考えてしまうと言うのも
真夏の夜の夢なのかも知れないな、と思う
