循環器科の定例診察の日。
今から4年前の誕生日に、私の心臓は突然停止した。
幸いにも長女と主人が連休で居て、救急搬送されたので、こうして生きているのだが。
後日、検査で分かったのは、冠動脈が痙攣して狭心症を起こす冠攣縮性狭心症という病気だ。
検査は人工的に狭心症を起こす薬を流すのだけれど、私の中で二度とやりたくない検査の断トツ1位を譲らない。
通常、冠動脈の1本が痙攣するだけでも七転八倒の痛みだが、私は3本とも痙攣するらしい。
心臓をゴリラに握り潰されるような、そんな痛みを感じる。
あれから4年、薬で発作を抑えながら過ごして来た。
前回の診察はアイソトープの検査で、心筋が痙攣を起こす発作を記憶があるかの検査をした。
結果は完治の見込みは無く、死ぬまで拮抗薬を飲まなければならないと言われたばかり。
今回の診察は先にエコーを撮り、心臓肥大と弁膜症が悪化していないかの検査だった。
普段なら5分程度で済むエコーが、今回は20分経っても終わらなかった。
何故か心臓を調べた後、肋骨下から乳がんを切った辺りに掛けてグリグリと何度もエコーで探られた。
挙句に年配の検査技師に代わってしまい、自分でも心拍が上がって行くのが分かった。
エコーを撮りながら、スケールを取っているのくらい私にも分かる。
検査技師には、患者から質問されても答えてはいけないルールがあるようだ。
検査技師「先生にご確認下さい。」
そう言って外来に行くように促されて、私は検査室を出た。
左胸はこの1ヶ月、ブラジャーが当たるのすら痛くて、ブラトップを着ていた。
子宮卵巣を全摘してしまったので、乳がんの再発の確率は俄然下がったはず。
5年前に乳がんを自分で見付けた時は、乳首から赤いリンパ液が滲み出るのを見付け乳腺外科を訪れた。
あの時も何度もエコーで探ったよなと、嫌な記憶が蘇る。
先日の人間ドックの結果の膵臓なのか、乳腺に何かか起きているのか。
外来のソファに座りながら症状を調べるけれど、少しも頭に入って来ない。
順番になり、主治医に会った。
マリモ「先生、心臓じゃない所をグリグリされてたんですけど?」
主治医「僕は専門外なので何とも言えませんが、○○先生(乳腺外科)の予約を早めて下さい。心臓は前回と変化が無かったので、薬を出しておきます。」
診察室を出ると、すれ違う人が目に入らない。
乳腺外科のクラークに行って、どうやって帰ったのかあまり覚えていない。
乳がんの手術を終えてから放射線炎や、乳腺炎を何度も繰り返して来たから、今回もきっと大丈夫だ。
自分にそう言い聞かせながら自宅に帰り、寄るはずだった薬局を忘れて帰った。
来年の3月、義父の七回忌をお寺に依頼し、三兄弟に知らせたばかりだ。
同時期に見付かった乳がんも脳動脈瘤も、親たちの介護で泣いている時間すら無かったのだなと、今さらながら思う。
来年を語る自信が、一気に無くなってしまった。
何で私だけが?
私の望みは、今日は楽しかったと言って眠りにつくだけなのに。