これは長女が生まれて、初孫を抱きに来た両親の写真。
父が58歳、母が56歳の頃だ。
この7年後、二人は突如別居してしまった。
と言うより突然母が出て行き、姉のマンションに転がり込んだのだ。
父は一週間程度で帰って来るとタカを括っていたが、母は茶箪笥や座卓まで周到に用意していたのだ。
元々父は結婚するまで、遊び暮らしていた人だ。
感情の起伏が激しい母が居なくなり、すぐに父は好きに出掛けられる生活に馴染んでしまった。
そして父に彼女が出来て、私は10年の音信不通に入った。
私はまだ当時の両親の年齢に届かないが、当時の父の年齢に主人が追い付いた。
母は父が定年退職して家に居るようになると、暫くは二人で旅行に出たりしていたが、毎日食事を作る手間に疲弊した。
現在、主人があと一年半で一区切りを迎えるが、延長せずに退職したいと言っている。
私は三食食事を出すのは苦にはならないが、毎日、目の前でダラゴロとされると思うと溜め息しか出ないのだ。
それだけは妻として母の気持ちは理解出来るが、同じ母親としての母には今でも許し難い気持ちがある。
昨日まで居た長女を見ていて、ふと思う所があった。
長女は来年、30歳になる。
当時の姉の年齢に、間もなく追い付く。
長女はエステに通ったり旅に行ったりと、自分で稼いだお金で自由を満喫している。
姉は美容には興味は無さそうだが、当時は紅茶に凝りティーカップを買い集めたり、自分の暮らしを楽しんでいた。
その若い姉の暮らしを壊してまで母が転がり込んだと思うと、居た堪れない気持ちになる。
姉のローンを半分以上出した代わりに、両親は姉の人生を奪ったのだ。
姉は両親に向かって、時々怒鳴り声をあげる。
「私の味わうはずだった自由は、楽しかったでしょうね!」と。
そして今でこそ短くなったが一ヶ月程度、両親を無視し続ける。
認知症の母に会話を与えないのは悪影響だと分かっていても、姉の心情を思うと私は止める事が出来ない。
私には娘の人生を踏み躙ってまで、自由に生きたいとは思えないから。
両親の大罪。
与えた報いは自分に返る。
父も母も自由を手に入れたが、姉の恨みを買ったのだ。
私には娘の暮らしを壊してまで、生きたい人生など無い。
先日母が命拾いしたのは心底嬉しかったが、姉の事を考えると手放しで喜べなくなる。