肝臓の結果は6月まで持ち越しになり、主治医からは生検が出来ない場所だと言われた。


それか何を意味するのか自力で医学書を調べていたが、納得がいく情報に行き当たらなかった。


掛かり付け医の仲良し先生は、こんな時に分かりやすく教えてくれるのでクリニックに行って見る事にした。


診察室に入る「どうだったよ?」と検査結果を待っていたようだ。


「下大静脈と門脈の間に2センチの腫瘍を認めるが、生検は出来ないって。」


「ああ、肝臓は血流が多くて、ちょっと間違って動脈を傷付けても大事になるんだよ。肝生検は経験と技量がある検査技師でも嫌がる。それに肝臓のどっち側?」


「肝臓の5、6、7、8のど真ん中に2センチ。(区域)」


「微妙な大きさだな。そこなら尚更避けた方が良い。生検をやりましょうって提案されても拒否しなさい。他に特定出来る検査方法はあるんだから。」


「生きる為に必要無い臓器は、迷わず切れって先生言ったよね?」


「肝臓は生きる為に必要な臓器。切った血管を縫い合わせて行くんだけど、その縫い目が固くなって狭窄を起こす。無駄に手術はしない方が良い。知ってるか?子宮を摘出する時、氷を取るようなやつでガッと掴むが、肝臓や腎臓は雛を掴むみたいにご丁寧な扱い方をするんだぞ。」


「知ってる。子宮腺筋症の時に医師用の動画見たよ。私もあんな事されたんだよね。(笑)  肝臓はリスクをおかしてまで、生検はやらない方が良いのね?あっちの先生は何も教えてくれなかったんだ。」


「素人さんがよく平気で見れたな。大体の患者は聞くと狼狽えるし、理解出来ないから詳しく話したがらないんだよ。あなたみたいに徹底的に知ろうとする人は少ないよ。」


「知らないまま治療を受けるのはいやじゃん?」


「下大静脈だ門脈だって言って、聞きに来る患者は珍しいよ。」


「レバーを調理してたら、肝臓の構造を理解したの。」


「中々の変態だね。(笑)  まあ、肝細胞がんと血管腫の比率は1:1。あっちの医者が言う6月まで焦らず待ってなさい。」


仲良し先生は、いつも私の疑問に答えてくれる。


主治医のイケ好かない態度より、仲良し先生は質問しやすい。


焦れていた気持ちが落ち着き、6月まで気にせずゆっくり待てる気になった。



大病院の勤務医は、病棟と外来など仕事量が多すぎる。


昔なら手書きで済んだカルテも、事細かに電子カルテに打ち込むので診察時間が削られる。


なので5分診察などと揶揄されてしまうのだ。


4月からは医療機関も働き方改革が始まるので、イケ好かない主治医がいつも診察に当たれなくなる。


固定の主治医では無くなるかも心配だが、患者に向き合ってくれるようになると良い。