母の事で振り回され出すと、方や義母が「足が上がらなくて、お風呂に入れ無い。」と言い出した。


今ではピンピンしているけれど、義母は5年前にクモ膜下出血で2度危篤になり、今も少しだけ手に力が入り辛い。


夏頃から膝が痛いと言って通院し始めたけれど、すり減った軟骨が戻るわけも無く、子供騙しに湿布を貼って誤魔化していたのだ。


それがついに膝を曲げて座る事も、浴槽を跨ぐ事も出来なくなって騒ぎ始めた。 


義実家の浴室は古く、高さが77センチあり幅が狭い。

義母の背では元々跨ぐのに一苦労していたので、尚の事。


「あとひと月我慢してくれれば、年末年始に息子たちがやってくれるわよ。」と宥めすかしていたのだけれど、義母が区役所に連絡してしまった。


「12月中に手摺りを付けたい!」


義母は、これしか言わない。

一度言い出したら、やるしか黙らせられ無い。


間に合わないのなら「要らない。」

と、こちらの苦労も気にせずに言うのだ。


11月下旬から私は新たな検査が入ってしまい、自分の日程ですら回すのが精一杯だったのに、ここに義母の見積もりや立会いまで入るのか。


手摺り一本取り付けるにも、申請書を出し会議で判定されるまで結構な時間が掛かる。


市販の手摺りを、近所の工務店に取り付けて貰うようには行かないのだ。


義母が「12月中に手摺りを取り付けたい!」と簡単に言うが、介護保険を使う以上、ルールは守らなきゃ。


介護用品の業者さんには申し訳無いが、「あの年齢の義母が、真冬に立ったままシャワーしか浴びれないなんて気の毒で。無理を承知で、何とかなりませんか?」なんて泣き落としを掛けてみる。


案外、私の泣き落としは効くらしく、年末に本当に付けて頂ける事になった。


でも手摺りが付いたとて、義母の足が長くなった訳でも無し。

浴槽の高さは相変わらず77センチある。


これをどうにかしてやらないとと、今度は私はホームセンターまで建築材を買いに行き、軽い床材で底上げを作った。


材木でスノコを作っても良かったのだけれど、カビ防止には義母が持ち上げられる材質で撥水が良く加工しやすくないとならなかった。


何より毎週、今の私の体力で義実家まで満員電車で通うのは、なかなか大変だった。


義母の12月中と言い張ったのは、どうやら息子達に見せ付けたかったからのようだ。