岩沼市議会の6月定例会は18日(火)に開会します。佐藤淳一市長がその旨を11日(1週間前に当たる火曜)に告示して議案などを提案し、金曜の14日には議会運営委員会が開かれ、定例会の日程が内定しました。正式には18日の本会議で決定します。その議運の日に、定例の記者会見が開かれるようになったのは10年ぐらい前からです。その場で、議運よりも分かりやすい説明が市長らから新聞記者に伝えられて、記事になったりします。

 

私は従来から「議員にこそまず先に、丁寧に説明しろ」という立場ですが、そういう声が議会全体の声にならないのです。なぜならば、多数会派(いわゆる与党会派=市長支持会派)には別ルートでの説明があるからです。残念ながら少数会派や会派を組まない又は組めない1人会派(無会派議員)らの「悲哀」です。政治的な差別でもあります。

 

記者会見の結果は、報道する価値があれば翌日の新聞の記事となります。15日付の新聞では朝日が宮城県内版に「岩沼市職員の駐車場 10月から有料に/市民会館の一般駐車 4月から有料なので」という見出しで、あたかも、市職員が市民会館駐車場有料化のとばっちり受けるような羽目になったという記事に仕立て上げられていました。囲み記事の体裁で、目立つ扱いでした。

 

河北の記事は県内版で「岩沼市・公共施設使用料値上げ/25年度実施 見送り」という見出しでした。駐車場有料化問題の提起とともに、市長の肝いりで1年前に新たに誕生した政策部の中にある総合戦略課が今年3月にまとめた「見直しに関する基本方針」の、事実上の撤回です。記事によると、集会・体育12施設の使用料値上げの先送りです。職員駐車場の件も、見出しには拾われていませんが、記事では触れられています。河北は、「値上げ見送り」の方がニュース性がある、と判断しての執筆・取り上げ方になったのでしょう。

 

朝日の記事には「とばっちり」を補強するように「公有地を職員駐車場にしている自治体で有料化するのは珍しいという」との注釈も添えられていました。そりゃあそうですよ。市が所有する土地などを職員の無料駐車場として使うのは、ふつうのことであって、他に用途がないのなら有効・妥当で合理的な活用方法だし、誰も文句は言いません。同じく市有地である市民会館の駐車場だって、今まで通り、利用者に無料で使ってもらえばいいだけのことです。

 

一般市民を対象に、市民会館の駐車場を有料化するとのことだったので、これに反発する市民らが「じゃあ、市職員も通勤のための駐車場(市有地)代を負担するべきだろう」と、感情的な逆襲の論法で出てきたものでした。

 

ただ、記事によると、常勤の市職員は月額500円だそうですから、これはもう「ほぼ無料」のようなもの。30日で割ったら日額16.6円。平均的勤務日数の20日で割っても1日当たり25円ですよね。一方、市民会館の駐車場は1台3時間で500円です。あっ、そうですか。一市民が3時間止めるのと、市職員が職員駐車場を1カ月利用する料金が同額なんですか。これって市民を搾取し、市職員を「超」優遇することになるのではないでしょうか。

 

市民会館駐車場有料化の大義が、岩沼市によると、財政赤字を補う上で市民に少しでも負担をお願いしたいということなのですから、サラリーマンとしての市職員、地場のサラリーマンとしては高給取りの部類に入る岩沼市職員なのですから、もっと負担してもらってもいいのではないでしょうか。

 

でもね、私は市職員の駐車場を有料化することには反対なんです。一番の理由は職員駐車場を有料化することによって、市民会館の駐車場有料化を逆に正当化する論法に使われる恐れがあるからです。「市職員も金を払ってるのだから、市民会館の駐車場代ぐらい市民が負担しろ」という声が高まることの懸念です。

 

いま、駐車場の有料化に関連して、市民会館の利用を避ける「市民会館離れ」が進行しています。会館に隣接する岩沼市陸上競技場で長年行われてきた、仙南4市9町の小学校高学年陸上競技大会が角田市の陸上競技場に移ったケースもあります。文化団体の中には、名取市の文化会館の一室を使うようにしたという話も聞きます。「市民会館離れ」は確実に起きていて、どのように拡大しているのかが心配です。

 

市民会館の駐車場の利用を適正化するための有料化は、そもそもの論法がおかしいです。市の財政赤字に全く責任のない一般市民が、その責任の一端として新たに「駐車料金を支払う」という理屈にも道理がありません。有料化問題は「駐車場からの出口渋滞の頻発問題」も含めて、実施からのこの3カ月で「破たんした」といえるのではないでしょうか。出口渋滞の管理などで、市職員に新たな業務が発生しているようです。だから、職員駐車場の有料化を新たに始めるのではなくて、市民会館駐車場有料化を撤回するべきです。

 

さて、一方の河北の「使用料値上げ見送り」の記事に戻ると、市長は「見直しは必要だが、物価が上昇する中で上げるのは現実的ではない。いったん立ち止まりたい」などと、理由を語ったようです。だったら、4月実施の市民会館駐車場有料化も立ち止まってもらいたかったな、と突っ込みを入れたくなります。ちょっと前。2、3カ月前の話だよ。そのころだって、4月からの食料品などの料金改定=値上げが目白押しで、物価高騰だったじゃないですか。今と変わりない物価高だったじゃん!

 

物価の上昇は、約2年前からのウクライナ戦争の始まりからであって、それに円安も加わって、加速したのであって、市長はなに寝ぼけたこと言ってるんですか。市職員の駐車場も有料化することについては「市職員も負担すべきだった」と過去形で話しているようですが、これはうそ。市側はまったく考えていなかったのですから。

 

2月7日に市民会館中ホールで初めて開いて、有料化の中身をそれこそ市民に初めて公開した「利用者説明会」の席上、反対の立場の人の意見の中に「だったら職員の駐車場は?」という声も発せられて、一応の答弁をしただけのことでした。職員駐車場は「福利厚生といった面もあるので」と後ろ向きな回答もありましたし、調整に時間も必要だったし、区切りのいい新年度4月のスタートとはいかなかったのだと思います。

 

それでも、4月以降? 市職員労働組合(市職労)と協議? しての合意? があっての? 10月実施なのでしょうか。でもね、ここに大事なことが潜んでいると思うんです。岩沼市当局は、有料化の実施に当たって市職労とは話し合いはしたかもしれないけれど、市民と話し合いはしない=市民を話し合いの相手にはしなかった、という事実です。市民に対する「背信」ではないでしょうか。

 

市職員=市職労を治めるには話し合いをして、市民を治めるには問答無用の強制と押し付け………。これでは市民の反発は強まるばかりです。

 

2回目の市民説明会は、3月定例会が閉会した後の3月10日に中ホールで開かれました。1回目と同様、反対意見や「市民会館離れ」を心配する意見がいっぱい出ましたが、市側は全く聞く耳を持たず、何一つ考慮することもなく、「ご理解を、願います」などと、「完全原案通り」の4月1日実施に向けて「強行突破」しました。

 

巷(ちまた)ではその2月、3月のときからと、そして新年度になっての4、5、6月と「とんでもない市長を選んでしまった」という声が、日を追うごとに多く聞こえてくるようになりました。それがだんだん強く、声高(こわだか)になってきたのでした。「若いほうを選んだら裏切られた」という激しい文句も語られています。こうした声が、いわゆる保守的な層からも出ていることに、いつもとの違いがあります。

 

公共施設使用料の値上げを先送りすることを市長が決めた裏には、こうした声がじわじわと市長の耳に入るようになっていたからなのかもしれません。