岩沼市議会の懲罰をめぐり、裁量権の逸脱と濫用があるので違法だとする判決が仙台地裁で昨年3月と5月に相次いだことに関連して、市議会は9日に開いた議会運営委員会(議運)で、出席停止の懲罰が科された議員に対する報酬カット(停止日数の日割り)を今後はやらないこととし、関係する条例にある条文を削除することで合意しました。不法な処分を議決した岩沼市議会が今後に向けて一定のけじめをつけた形ですが、議長に就任しておよそ1カ月の酒井信幸氏は「(懲罰は)やりすぎた面があった」と率直に語りました。

 

判決は「報酬カットを廃止せよ」と命じたわけでもないし、議長からは廃止する理由が明確に説明されもしませんでした。また、判決は報酬カットをすることよりも、出席停止の日数の多さを挙げて「議決に参与できる機会」が奪われることの重大性を問題にしていました。しかし「懲罰は違法」と裁判所から断罪されたことに対して、重罰規定を緩和させるのは今後の議会内部の民主化にもつながるので評価していいでしょう。

 

酒井議長は1週間前の2日に開かれた議運に、「報酬カットの廃止案」を提起しました。議会の新たな代表(顔)として、判決が議会に問いかけるプレッシャーを意識したのでしょうか。「とげ」のようなものを取り除いておく必要性を感じたのでしょうか? 案は議運メンバーの出どころである会派に持ち帰って検討を加えることとなっていました。

 

9日の議運は通常の委員のほか、私も含む会派を組んでいない議員7人も出席、全員が発言(賛否の意思表明)を求められました。その結果、条文の削除は会派の委員も含め全会一致でまとまりました。2月定例会は3連休明けの13日に開会しますが、削除は21日に予定される議運に追加提案され、22日の本会議に上程されて可決する運びとなります。

 

違法判決が相次いだ懲罰裁判は、昨年3月のものが私の出席停止23日・報酬カット27万8300円で8年前の提訴です。昨年5月の判決は同じ会派を組んでいた元議員須藤功氏の出席停止10日・報酬カット11万7097円で、提訴したのは3年前でした。いずれも平成28年の議決(処分)で、それまでの4年間で8件もあった懲罰の7回目と8回目に当たるものでした。以後、懲罰はなくなりました。

 

判決が確定した後、カットされた報酬は遅延金(利息分)も含め、私も須藤氏も全額支払われています。4年で8件もの懲罰処分は4定例会連続、3定例会連続で行われたこともありました。「定例会と言えば懲罰あり」という異常な頻度でした。ちなみに酒井議長は当時、違法な懲罰だと裁判所が判示した2件も含め8件の処分すべて賛成しています。

 

2回目の懲罰として平成24年12月に私が科された「岩沼市議会初の出席停止」のときは、停止日数は5日間が最大だったのですが、即刻、罰則が強化されてそれ以降は①出席停止は議会開会中(会期)の全部の日とするのも可能と拡大され②議員報酬のカットも導入され―ました。私たちは反対しましたが、多数に無勢でした。

 

私が提訴した当時は「出席停止は裁判の対象としない。それぞれの議会内で自主的に解決しなさい」といった判例の縛りがありました。なので、私の一審(仙台地裁)判決では予想通り、判例に従っての「却下」となり裁判所に受理されませんでした。当然、私は控訴して二審(仙台高裁)に臨みましたが、逆転勝訴で「仙台地裁へ差し戻す」という判決を得ました。

 

報酬カットを伴っていて、今までとは違う争訟なのだという訴えがようやく裁判官に届き、財産にかかわるから、裁判の対象とするという画期的な判断が出たのでした。が、市側・議会側がこれを不服として最高裁に上告。これに対して最高裁が令和2年11月25日に大法廷を開き、当時60年ぶり(昭和35年以来)に判例変更をして「出席停止は裁判の対象とする」と決定し、仙台地裁に差し戻されて裁判の「実質審理」が始まったのでした。3年前のことです。

 

差し戻し審で「議決(懲罰処分)は違法だ」という判決が確定したのに、議会としては「検証せず、反省せず、謝罪せず」という態度を決め込んで、知らんふり状態が続いていました。議会という公的な機関がコンプライアンス(法令遵守)の精神を軽んずる? 気にしない? どうでもいい? という態度が改められた? 議会が判決に「反応した」と市民がみなしてくれるかどうか、そこは私は分かりません、、、、

 

さて、9日の議運は会期22日間で行われる2月定例会の日程を内定するための会議でした。日程は以下の通りです。