被告健軍商店街振興組合が損害賠償事件で賠償金を支払った事件です。
理事長にはマスコミやネットで公表しますと告げると、「どうぞどうぞ」と言われましたので裁判で公表されているところ公開します。
組合の所有の健軍商店街ビル一次調査「一部損壊」補助金申請できず、熊本市商業金融課が罹災証明書を改ざん、二次調査をせず「大規模半壊」と改ざんし発行した。
不正な補助金申請が行われ、支払命令書もないまま不正な方法で県の商工金融課は支払っている。
平成30年(ワ)第47号 損害賠償請求事件
原告 □ □ 外1名
被告 健軍商店街振興組合
令和元年9月19日
原告準備書面9
熊本地方裁判所民事第3部2係 御中
原告ら訴訟代理人弁護士 □ □
第1 原告らの請求は,概要次のとおりである。
1 被告組合員であった原告□及び同人と共同して八百屋「熊本産直便り」を経営していた原告□が,被告から違法な手続きにより原告□が被告組合から除名(もしくは組合員資格を喪失)され,被告組合員として取り扱われなかったことにより原告らが被った損害について,不法行為に基づき損害賠償を求める。
2 被告が雨漏り防止のための修繕を怠り,原告らによる応急的な修理すら拒否したことによって,原告らが長期間にわたり雨漏り防止のための雨水の汲み出しを余儀なくされたことにより原告らが被った損害について,不法行為(主位的請求)もしくは債務不履行(予備的請求)に基づき損害賠償を求める。
第2 除名処分について
1 被告は,原告□を除名処分にしたことはなく,賃貸借契約の解除により原告□が組合員資格を喪失したものであると主張しているので,この点について述べる。
2 これに関連する争いのない事実及び証拠により優に求められる事実は次のとおりである。
⑴ 原告□が平成26年2月に被告と本件建物の1階店舗部分について賃貸借契約を正式に締結して被告組合員となり,原告らが同店舗において「熊本産直便り」を経営していた。
⑵ 平成28年3月1日,原告□と被告は従前の賃料から2万円減額する旨改定して賃貸借契約を更新した。
⑶ 平成28年4月14日及び同月16日に熊本地震が発生した後,同月26日に,被告理事ら8人は理事会を開催し,原告らを事前の通告なしに突然理事会に呼び出し,本件建物から退去するよう告げた。
⑷ 平成28年4月28日,被告は原告□に対し賃貸借契約を解除したこと及び同年5月31日までに退去するよう求める解約通告書(甲6)を交付し,被告組合員名簿から原告□を抹消した。
⑸
⑹ その後,被告は原告らに対し,総会やイベントの案内,回覧板など被告組合に関する通知を何ら行わなくなった。
⑺ 原告らは被告から次のイベントから排除され,参加できなかった。
① 6月23日~同月30日 復興スタンプラリー
② 7月2日,同月3日 復興七夕笹飾りイベント ワゴンセール
③ 8月20日,同月21日 復興健軍サマーフェスティバル
④ 10月29日 復興支援品バザー
⑤ 11月19日,同月20日 健康フェア
⑥ 12月10日 復興支援バザー
⑻ 原告らは被告が発行する健軍商店街プレミアム付きお買い物券の対象から除外された。
⑼ 被告は,平成28年9月14日に開催した被告組合の臨時総会の招集通知を原告に交付せず,原告□は同臨時総会会場へ行くも参加を拒否された。
⑽ 平成28年12月27日に,熊本地方法務局人権擁護課は,賃貸借契約の解約通知を受けたものをもって組合員たる資格は喪失しない旨の回答書(乙4)を作成し,被告理事はこの書面の記載内容を把握していた。
⑾ これ以降も,被告は,健軍商店街プレミアム付きお買い物券の対象から原告らを除外する取扱いを継続した。
⑿ 被告は,平成29年5月29日に開催した通常総会の招集通知を,他の組合員には総会開催の2週間前に交付したが,同時期には原告らには交付しなかった。原告らからの交付要求を受けても交付せず,原告が相談した市役所が被告に指導を行った後,総会開催の3日前に原告□に招集通知を交付した。
3 こうした事実経過からすれば,被告は,原告□に対して賃貸借契約の解除通知を交付した以降,原告□を組合から排除していることは明白である。
被告は,こうした排除を組合員資格喪失取扱いに基づくものと主張しているが,これは除名処分に他ならず,その根拠である賃貸借契約の解除は無効であって実質的理由を欠くうえ,必要な手続を何ら経ておらず,悪質な不法行為である。
すなわち,被告は原告が賃料2か月分(平成28年2月分,3月分)を滞納していることを解除事由に掲げているが,被告は平成28年3月1日に原告□との間で賃貸借契約を更新している原告らからの賃料減額に応じており,理事会においても解除をすること自体が議題に上がっていなかった(鵜飼8~9頁)ということ
これにもかかわらず,被告は,本件建物が熊本地震で被災するや否や,平成28年4月26日に開催した理事会において、本件建物を解体するとの方針に決定し(補助金を申請して資産形成する意図も窺われるところである。),直ちに原告らを呼び出して立ち退きを要求した。原告がこれを明確に拒否したことを受けて,事前に不動産屋に相談して準備していた賃料滞納を理由に退去を要求している。
そして,被告理事らは,従前に原告ら以外の者で相当長きに渡り多額の賃料滞納をしていた組合員、に退去を請求したことはないこと(釼羽12~13頁)はもとより,不動産屋から2か月の滞納であれば追い出せると聞いたことから原告らに賃料滞納を理由に退去を迫ったことを供述している。
これらのことからすれば,被告は,本件建物を解体したいがために,原告らに対する態度を豹変させ,本件建物1階部分を賃借している原告らを無理矢理にでも退去させようと目論み,2か月分の滞納賃料を名目に原告らに退去を迫ったものという他ない。従前の被告の態度からすれば,賃貸借契約における原告との信頼関係は破壊されておらず,むしろ良好な関係であったのであるから,わずか2か月分の賃料滞納によって無催告解除が認められる余地はなく,被告による賃貸借契約の解除は無効である。
しかしながら,実際には被告はこの無効な賃貸借契約の解除を根拠に,原告□は組合員資格を喪失したものと取り扱っている。すなわち,被告は一方的かつ無効な解除通知を根拠に原告□の組合員の資格を喪失させて組合から除外し,原告□の組合員たる地位を奪ったものである。被告提出の書証において「除名は,組合が一方的に組合員の地位を奪うことをいう」(乙18の4)と記載されているとおり,これは除名処分に他ならない。
この点,被告は賃貸借契約の解除(による終了)に伴う組合員資格喪失取扱いであって除名処分とは異なることから被告に責任はないと主張しているが,除名処分も組合員資格喪失扱いも,被告組合から原告□を一方的に排除するという法的効果は同一であって異なることはないのであるから,被告の主張は到底認められるものではない。
そして,その法的効果は組合員の生計の手段を絶つという重大かつ回復困難なものである以上,その処分の重大性に鑑みれば,被告は原告□に対しては除名処分と同等の手続保障をなすべきであったところ,被告は原告□に対し何ら告知・説明を行わず,また聴聞の機会も設けていないのであるから,被告には原告□に対する除名処分(もしくは組合員資格喪失取扱い)について重大な手続違反がある。
なお,被告は,平成28年12月27日付の熊本地方法務局人権擁護課による「賃貸借契約の解約通知を受けたものをもって組合員たる資格は喪失しない」旨の回答書(乙4)の内容を把握しておきながら,これ以降も,健軍商店街プレミアム付きお買い物券の対象から原告らを除外する取扱いを継続し,平成29年5月29日に開催した通常総会の招集通知を他の組合員とは異なり総会開催の3日前に交付するなど,原告□を組合員として取り扱わない運用を続けており,敵対的態度をもって意図的に原告□を排除する姿勢は顕著であり,その主観的態度は悪質である。
したがって,被告は原告□に対する除名処分(もしくは組合員資格喪失取扱い)は,無効な解除通知に基づくものであって同処分に付する実質的な理由を欠くものであるとともに,何ら手続を履践していないという深刻な手続違反が認められ,その違法性は重大であるから,被告は原告に対し故意の不法行為責任を負う。
4 原告らは,被告の前記不法行為(違法な除名処分ないしは組合員資格喪失取扱い)により,次のとおりの損害を被った。
まず,原告らが経営していた「くまもと産直便り」は,前記イベントに何ら参加ができず,プレミアム商品券の対象から除外されており,これは営業権の侵害である。
この点,被告は原告□が組合員ではないことから原告□に損害は生じ得ないと主張しているようである。しかし,原告□は,組合員である原告□と共同して「くまもと産直便り」を経営しており,いわば一心同体の運命共同体である共同経営者であるから,営業権は原告□のみに認められるというものではなく,原告□にも自身の営業権があるというべきである。また,原告□が除名ないしは組合員資格喪失取扱いによって組合員として取り扱われなくなることで,必然的に原告□の営業権が侵害されるという関係にある以上,被告の仕打ちによって原告□にも損害が生じたというべきである。
また,原告□は被告が平成28年9月14日に開催した臨時総会に出席できなかったところ,同臨時総会では本件建物の解体・立て直しについて審議・議決がなされている。本件建物の1階において営業していた原告□にとって,まさに生計に直結する事項であるが,原告□はこれについて意見表明をする機会はもとより,組合員として最も重要な議決権を行使する機会を奪われたものであり,その権利侵害の度合いは著しいものと言わざるを得ない。
なお,原告が市のオンブズマンに調査を依頼した結果、平成30年2月、当時の健軍商店街の現有働理事長が更に詳しい情報を市の担当課に求め、市の担当課職員はこれに応じて原告の個人情報を当時の健軍商店街の次期理事長に渡したことを市のオンブズマンは原告に回答している。
また,原告が被告の補助金申請の申請書を開示請求したところ「補助対象施設の利用状況表」が添付されていないという手続的瑕疵があることが判明している。店子は大家と一緒に申請しなければ補助金の申請が出来ないことになっていることから、原告らは補助金申請の道も閉ざされている。被告は、原告の存在を隠し、地震当時の被災共同施設の規模構造所有状況、利用情況の添付書類を提出しておらず、事実を隠し申請書が受理されたのを受け、臨時総会を開いたので原告を参加させるわけにはいかなかったものと推察される。
第3 水汲みを余儀なくされたことについて
1 被告は,本件建物は修繕に新築と同等の費用を要すため修繕は経済的に不能であることから被告に修繕義務はなく,被告は責任を負わないと主張しているので,この点について述べる。
2 これに関連する争いのない事実及び証拠により優に求められる事実は次のとおりである。
⑴ 平成28年4月16日及び同月16日に発生した熊本地震以降,本件建物の新旧ビルのつなぎ目から雨漏りが発生した。
⑵ 原告らは,被告に対し,平成28年4月29日以降,本件建物の補修を請求し続けたが,被告は本件建物の補修を一切行っていない。
⑵ 平成28年5月中旬ころ,原告らは雨漏り防止のために本件建物の屋上部分の排水溝を塞いだ。これにより,本件建物に雨漏りが生じることはなくなったが,その代わりに屋上のベランダ部分に雨水が溜まるようになった。
⑷ 原告らが被告に対して溜まる雨水の排水のために壁に穴を開けることの許可を求めたが,被告はこれを拒否した。そのため,原告は降雨のたびに屋上(4階)に溜まる雨水を汲み出しては階段で1階まで降りて流し,また屋上へ階段で上って雨水を汲み出す作業を行った。こうした原告らの雨水の汲み出しは,平成28年5月から平成29年7月15日まで行われた。なお,平成28年4月14日から平成29年7月15日の間の降雨日数は173日である。
⑸ 平成28年6月25日,被告の前理事長である釼羽逸郎氏は,原告らに対して,弁護士が許可したので屋上の排水溝の修理箇所を取り外すよう要求し,原告□はこれを拒否したが,原告□が恐怖を感じたため,原告らはこれに従った。これにより本件建物のつなぎ目から大量の水漏れが発生し,原告店舗の商品や機材が壊れ,天井に大量のカビ発生で剥落し、原告らの店舗はしばらくの間営業が困難となる有様であった。
⑹ 平成29年5月2日,被告の理事長である森田憲一氏は,屋上へつながる3階の扉の鍵を閉め、雨漏りの汲み出しが出来ない様にした。
このことについて原告らが抗議したところ,被告は同扉の鍵を解錠した。
⑺ 被告は,本件建物3階において,原告が28年7月に退去した後も,被告が所有し管理する防犯カメラ等の機材を半年以上の平成29年1月15日まで保管していた。それらの機材の搬出は半日程度であった。
⑻ 被告は,マスコミから監視カメラの映像を見ることを求められ,これに応じてテレビ局のカメラマン等3名を本件建物内に招き入れ,3階事務所において監視カメラの映像を数時間にわたり見せた。また,同様に警察に対しても本件建物に招き入れ,長時間にわたり3階事務所において監視カメラの映像を見せた。
⑼ 被告は,平成28年7月8日に見積書(乙3),同年7月10日に検討書(乙3)を受け取った。被告は,平成28年9月14日の臨時総会において,このことを初めて公に組合員に説明した。
⑽ 本件建物は,平成28年7月14日付で大規模半壊と判定された(乙1)
⑾ 被告は,本件建物の写真を平成28年7月2日に撮影した。
⑿ 本件建物の新築工事の見積書(乙9~12)は,梅林建設株式会社は平成29年1月27日(乙9),武末建設株式会社は平成29年4月5日(乙10),株式会社御藤は平成29年5月12日(乙11),株式会社タケハラは平成29年7月25日(乙12)に作成されている。
⒀ 原告らは,平成29年7月15日まで本件建物1階店舗において営業していた。
3 本件建物の状況
⑴ 水漏れの状況
本件建物は,もともとの建物(以下「旧建物」という。)に新しい建物(以下「新建物」という。)が増築されているところ,熊本地震によりその繋ぎ目部分に最大で10㎝程度の隙間が生じたうえ,繋ぎ目部分に配置されている排水管が破損したため,その水道管をつたって水漏れが生じ,本件建物の3階,2階,1階(原告の店舗)の一部分に水漏れの被害が発生した。
⑵ 十分に使用可能であったこと
本件建物には内部の損傷や壁のひびわれ等はあったものの,注意して見なければ見つからない程度であり使用は十分に可能な状態であった。このことは次のとおりの原告ら及び被告の行動・認識からも裏付けられる事実である。原告が住家被害調査票に従って撮影した写真からしても10%以下の被害であって、一部損壊の認定が相当である。
ア 原告らの営業
原告らが熊本地震後から退去する平成29年7月15日まで精力的に営業をしていたのであり,本件建物の使用が十分に可能であったことの証左である。
イ 被告の行動・認識
まず,被告組合理事長である森田憲一氏は,原告らが被災しながらも精力的に営業を継続している現場写真が掲載された産経新聞の記事(甲22)において,「必要とする住民のために早く元通りにしたい」とコメントしている。被告が本件建物は復旧可能であると認識していた証左である。
そして,被告は,熊本地震後,被告組合職員を本件建物内の事務所へ行かせていた。
また,本件建物の隣に所在する店舗であり被告の理事である鵜飼康雄が経営する「すずや」は,本件建物が「倒壊の危険あり」と記載された張り紙がされているにもかかわらず,通常営業を継続していた(鵜飼6~7頁)。
さらに,被告は,商店街の監視カメラ等の高額な機材を,平成29年1月15日まで3階の被告事務所に配置し続けていた。
こうした事実に加えて,被告は,マスコミから監視カメラの映像を見ることを求められ,これに応じてテレビ局のカメラマン等3名を本件建物内に招き入れ,3階事務所において監視カメラの映像を数時間にわたり見せ続けている。また,同様に警察に対しても本件建物に招き入れ,3階事務所において監視カメラの映像を見せている。
このように被告が被告関係者を本件建物内に行かせることが恒常化しており,マスコミや警察などの第三者を数時間もの長時間本件建物に滞在させたり,高価な機材を本件建物内に置きっ放しにしていた(しかも搬出はわずか数時間程度で済んでいる(有働11頁))こと等からすれば,被告は本件建物が通常の使用に耐えうる状態であると認識していたというべきである。
⑶ 被告が依拠する見積書等について
被告が本件建物が使用不可能であり,新築と同様の費用を必要としたため,修繕義務を負わないと主張する根拠は,梅林建設株式会社による検討書(乙2)及び見積書(乙3)である。
しかるに,被告は,平成28年7月8日に見積書(乙3),同年7月10日に検討書(乙2)を受け取っているが,被告が組合員にそのことを初めて公に説明したのは平成28年9月14日の臨時総会である。この臨時総会においては,本件建物の解体する旨の決議がなされている。
また,被告は新築工事の見積書(乙9~12)も根拠としているようであるが,これらの作成日付をみると,梅林建設株式会社は平成29年1月27日(乙9),武末建設株式会社は2017(平成29)年4月5日(乙10),株式会社御藤は2017(平成29)年5月12日(乙11),株式会社タケハラは平成29年7月25日(乙12)となっているところ,いずれも同臨時総会が行われた平成28年(2016年)9月以降に作成されたものである。
要するに,被告は,本件建物を解体する旨の決議をした臨時総会時点においては,梅林建設株式会社による考察(乙2)及び立替工事の見積書(乙3)しか所持していなかったのである。しかも,被告は同臨時総会に梅林建設株式会社を同席させていたのであり,被告が修繕についての費用と新築する費用を比較する検証を全く行っておらず,解体するという結論ありきで行動していたことが強く推認される。
そして,前述のとおり原告らは平成28年9月の同臨時総会から排除されており,原告らは結局説明を何ら受けていない。
要するに,被告は,平成28年7月当時,見積書等を有しており被告の主張する「修繕が経済的に不能である」状態にあるという認識をしていたにもかかわらず,そうした説明を賃借人である原告らにせず,原告らからの補修請求に応じなかったものである。
そもそも修繕義務を免れるか否かは多分に法的な判断を要するものである以上,民法の原則通り賃貸人である被告は本件建物の補修義務を負うものであり,法的に「滅失」したといえるときに初めて補修義務を免れるという関係にある。
そうすると,賃貸人と賃借人との間で対象物の損傷の程度についての認識に齟齬があり,実際に賃借人が対象物を賃借して使用・収益をしている状態であれば,少なくとも賃貸人は賃借人に対して賃貸人が「滅失」状態にあることの根拠を示すなどして説明・説得を行ったうえで補修を拒否するべきである。
しかし,被告はこれを怠り,本件建物を解体するという意向ありきで補修を拒否したものであるから,今になって「修繕が経済的に不能である」状態であることから補修義務を負わないと主張することは信義則に悖るものであって許されない。
また,被告が提出し主張の根拠としている検討書や見積書が梅林建設株式会社のものだけであるところ,本件建物は被告組合の所有であっていわば組合員全員の利害関係に直結するものである以上,被告は入札や相見積もりを取るなど客観性を担保する根拠を数多く取得すべきであったが,これをしていない。
すなわち,被告が本件建物を「修繕が経済的に不能である」状態であると判断するには根拠薄弱であったと言わざるを得ず,こうした薄弱な根拠に基づき「滅失」したものとして補修を拒否することは許されず,被告は補修義務を怠ったというべきである。
⑷ 罹災判定について
被告は,本件建物が平成28年7月14日付で大規模半壊と判定されたこと(乙1)を「滅失」の根拠としている。しかし,まずもって大規模半壊の判定を受けたことをもって直ちに「滅失」と判断することは許されない。
また,原告が撮影した写真(甲48)からもわかるとおり,本件建物の損傷状況はそこまで大きいものではなく,本件建物の外観・内観においても大規模半壊たり得る損壊状況にはなく,十分に使用に耐えうるものであり,熊本地震後,原告らは長期にわたって本件建物において営業を行っていた。実際に,一次調査においては,被害面積が建物全体の10%未満であるとして一部損壊との判定である。
しかし,二次調査においては,柱や天井や床,壁の被害は10%未満であったものの,住家被害調査票に大きく点が付けられた結果,41点となり,ぎりぎり大規模半壊に判定された(20~39点が半壊,40~50点が大規模半壊)。この二次調査の点数のつけ方は誰かの強い意図や働きかけによるものではないかとの疑いがある。
すなわち,大規模半壊の根拠となった写真(乙6の1~6の24)のほとんどは,原告が従前主張している本件建物のうち増築部分と旧建物のつなぎ目を集中的に,かつ接写で撮影したものであり,内閣府が取り決めた罹災証明に必要な部位の写真が撮影されておらず,建物本体の被災状況を客観的に確認できないものである。
さらに,乙第6号証の22・23の写真は,熊本地震から約2年経過した2018年2月に撮影されたものであるが,被告が各写真に「解体中」と記載しているとおり,本件建物を解体している最中に撮影したものであり,解体作業に起因するものか熊本地震に起因するものかが判然としないため,本件建物が熊本地震により負った損傷を示す証拠とはなり得ない。
なお,大規模半壊の判定の根拠とされた行政が保管している写真(甲47)と,被告組合の従業員が撮影した写真と全く同じものが6枚もあり,その印字された日付の記載の体裁からすると,行政が保管する写真と被告従業員が撮影した写真は同一のカメラで撮影されたものであるから,被告が撮影した写真が行政にそのまま提供され大規模半壊の判定の根拠となったものである。中立・公正でなければならないはずの罹災判定において重大な偏りが生じているものという他なく,被告が行政を主導ないしは大きく働きかけをして,大規模半壊との判定にさせたものであるとの重大な疑念がある。
さらに,被告は二次調査の申請書を提出しておらず,熊本市は現地調査を行っていない。二次調査の住家被害調査票が誰によって作成されたか不明であるが,この調査員に対し真相を確認する必要がある。
なお,被告が提出した乙第4号証について,市のオンブズマンが調査した結果、被告有働理事長から熊本市商業金融課に対し、市のオンブズマン調査結果(平成28年度第49号}に関する資料の提供依頼があり、その後、有働理事長から調査結果以上の詳細な資料を市の担当課は求められ、平成30年3月23日に提供しており,守秘義務違反であるとともに原告らのプライバシー権侵害であることはもとより,公正中立な立場であるはずの熊本市商業金融課が被告と昵懇の間柄であり被告による働きかけが行われた疑念が濃厚である。
4 原告らによる雨漏り防止措置
熊本地震後,本件建物に著しい水漏れが生じ,原告らの店舗においても水漏れにより商品が損傷したり,不衛生な状態となり営業することが困難となったことから,本件建物の水漏れを止める必要が生じた。
そのため,原告らは被告に対し幾度も補修を要請したにもかかわらず,被告は何ら修理などの措置をとらなかった。
そこで,平成28年5月中旬ころ,原告は漏水の原因となる排水管につながる排水溝を塞げば漏水が生じなくなると考え,排水溝を塞いだところ,実際に雨漏りは生じなくなったが,排水溝を塞ぐことで屋上に雨水が溜まってしまう問題が残った。
そこで,原告らは,その溜まった雨水の排水のために屋上の壁部分にごく小さな穴を開けて排水管を設置する旨を被告に提案したところ,被告はこれを拒否した。そのため,原告は降雨の度に汲み出しを余儀なくされたものである。
5 被告の修繕義務の程度
雨漏り防止のために行うべき修繕は,建物全体の補修を要する大規模なものではなく,屋上部の排水の仕方を工夫すれば足りる程度の軽微なものであり,修繕は十分に可能なものであったことからしても,被告が修繕義務を免れることはない。
また,原告らが求めた最低限の修繕は,屋上部分から排水するための排水管設置のためにわずか1㎝程度の穴を壁に開けることであるが,これは到底「経済的に不能」とはいえないものであって,いずれにせよ被告は修繕義務を怠ったものである。
6 以上のとおり,被告は本件建物の修繕義務を怠ったものであって,これは債務不履行及び不法行為に該当する。これにより,原告らは平成28年5月から平成29年7月15日までの長期間にわたり雨漏り防止のための雨水の汲み出しを余儀なくされた。
この雨水の汲み出しのためには1階から屋上まで階段で上り下りする必要があり,大変な苦役である。雨が降る度に雨水の汲み出しを行っていた原告らが,いつ終わるとも分からない苦役にいつまで耐え続ければ良いのだろうかと絶望するのは想像に難くなく,原告□が食欲不振,睡眠不足,体重の激減とうつ病,原告□が不眠・めまい・帯状疱疹といった病気に罹患したのは当然である。
被告は,修繕義務を怠っただけにとどまらず,原告らの雨漏り防止措置を壊すよう要求して壊させたり,裁判係属中であり紛争を引き起こす行動を厳に慎むよう注意されていたにもかかわらず,雨水の汲み出しのために通らざるを得ない本件建物3階の扉の鍵を施錠するなどして,原告らが雨漏り防止のための努力を妨害するなど,原告らを敵視し憎しみをもって行動していたものと言わざるを得ず,故意の不法行為を構成するものであるとともに,その行為態様及び主観的態度は極めて悪質である。
以上