コアラーマッマから「ゆきちゃんが亡くなりました。」と連絡がきた。
コアラーとゆきちゃんは中学高校と一番仲が良かった。
でも高校を卒業してから連絡は1度も取らなかった。
ゆきちゃんとは駅から学校までの長い坂道をいつも笑いながら歩いた。
アミーちゃんと飽きもせず毎日楽しく話すんだけど、そういう感じ。
気が合う、っていうやつ。
なんだか話すのが楽しかった。
コアラーはよく休んだし途中で帰ったりもしてたけど、登下校は楽しかった。
2人とも部活をしてなかったから、放課後には黒板に絵を書いて遊んでから帰った。
そしてそのうち偶然、ゆきちゃん一家はコアラーマッマと同じ宗教に入った。
コアラーは宗教を憎んでいて、ゆきちゃんもそれを知っていたけど、気が合うから登下校は相変わらず一緒だった。
だけど高校卒業後、コアラーは地元から、実家から、宗教から離れたかったから寮のある離れた所へ就職を決めた。
ゆきちゃんは地元に残ってバイトをしながら宗教に身を捧げる道を選んだ。
宗教以外の人と仲良くするのは好まれない。
それまでは「学校」という共有する時間が自然とあったけど。
もうこの時間は終わりだと分かっていたから、最後に「お互い決めた道をお互い覚悟を持って。」みたいな話を少ししてバイバイした。
高校を卒業してからは1人で必死で生活してたし、長年実家とも関わってなかったから特に思い出さなかった。
でもコアラーパッパが病気になって実家に行くようになると、
「ゆきちゃんは献身的に奉仕をしてるよ。」とか「ゆきちゃんは同じ宗教の人と結婚したよ。」とか聞くようになって、久しぶりに昔を思い出したりした。
ゆきちゃんの人生はどんなだったんだろう。
考えたってわかるはずがないことを考えてしまう。
大きな地震があったり飛行機の事故があったり、でも変わらない日常があって、そのうち仕事が始まって忙しい日々が始まって、年末がきてお正月がくる。
変なの。
色んな年があるのに時間が平等に流れすぎてすごく変。
その都度しばらく止まってゆっくり考えたり怖がったり追悼したりする時間がないなんて。
変なのって思いながら約束してた新年会に行って、予約してたパーソナルトレーニングを受けた。
あーでももしかしてそれがいいのか。
できなかったら終わりだ。
毎日幸せを感じるし、強制的に流されるのがいいのかもしれない。