表現主義のネオダダイズム

「芸術教養シリーズ07」近現代の芸術史 造形篇より


1914年第一次世界大戦で戦車や機関銃、化学兵器等多くの殺戮兵器が使われた。文明により産み出された科学テクノロジーが殺戮兵器と化し、戦争に与えた影響からヨーロッパの人々は自分たちの文明、理性に疑問を持ち出した。この疑念が芸術活動に影響し、人間の文明や理性への信頼が揺らいだ時、人間が産み出した芸術も信じるに値しないと「既成概念としての芸術」を徹底否定したのがダダイズムです。
ダダの目指した既成概念としての芸術の徹底破壊を実践したのがマルセル・デュシャンの「レディメイド」です。デュシャンは、絵画を放棄し市販の自転車車輪を高椅子に載せ《自転車の車輪》というタイトルをつけて自分の「作品」とした。また1917年男性用便器にただ芸術家のサインをしただけのものを「作品」として《泉》と題して公開した。
サインがなければただの便器。芸術家がサインを入れると作品となる。と芸術家の内面を徹底否定した。

こんなものは芸術ではない。

という観客に対して、

ならば芸術作品とは何か?

と問い返したそうです。
彼はこれを「レディメイド(readymade」と定義した。

そのようなダダを追求する芸術家はナチスやスターリンの弾圧によりニューヨークに亡命し、戦後にネオダダとして、活動を広げ、アランカ・ブローの「ハプニング」やジョージ・ブレイクトによる「イベントスコア」という環境芸術やパフォーマンスによる表現に昇華した。

これらの芸術は戦争の影響を強く受けていると考えます。