病院までの道は長かった。
一人で行くのはあまりにも不安だったので、とにかく「help」を連発していたら、
宿泊していた所のスタッフの一人を手配してくれることになり、一緒に来てもらえました。
これが、本当に助かりました。
部屋にあった私の荷物をまとめてくれ、貴重品もしっかり管理してくれて、一緒に救急車に乗り込んでくれたのです。同じくらいの年ごろの女性でした。
2時間のドライブ?中には、自分は車酔いしながら、私を励ましてくれました。
目が合うたびに「大丈夫」というように微笑んでくれるのに、どれだけ励まされたかわかりません。
おしゃべりにも付き合ってくれて、気を紛らわすこともできました。
救急車の中では、とにかくできる範囲で知り合いに連絡して、どうしたらいいか相談しようとしていました。
けれども、携帯がうまく使えません。
まず左手が自由に動かないので、操作自体が非常にやりにくかったのです。
その上、操作の仕方がわからなくなり、何度も失敗したり、電話のかけ方がわからなかったりしていたのです。
自分では、「パニクッているのだろう」と思っていたのですが、多分あとで考えると、一時的に脳機能障害がでていたのでしょう。
とにかく苦労して夫にメールを送ることに成功し、マニラにいる知り合いと話すこともでき、少しずつ病院にも近づいてきました。
2時間かかると言われていて、何度か時計をみたのですが、10時58分です。出たのが10時ごろだったので、まだあと1時間くらいかかる・・・などとぼんやり考えていました。何度時計を見ても10時58分なのがおかしいことに、だいぶ経ってから気づきました。
知らない間に時計の「モード変更」のところを押していたらしく、以前自分がランニングをした時の10分58秒というタイムが表示されていて、それをずっと、10時58分だと思っていたのでした。ようやくそれに気づき、時計にもどそうとしましたが、戻し方がわかりません。やはり脳機能障害だったのでしょう。何度やってもわからないのであきらめて、付き添ってくれた彼女にきくと、「もう少し」だということで、本当に、それからまもなく病院に着いたのでした。夜中の12時のことでした。
発症してから、すでに数時間経過していました。