突然右目に星がちかちかしたのは、1月8日の朝だった。
当時私は、フィリピンのセブ島の、モアルボアルという小さな海辺の町にいた。
ダイビングが趣味なのと、英語の研鑽をつみたいという理由から、一人でそこに行ったのだった。
最初からどうも調子が悪かった。
大好きなダイビングもあまりやる気がでず、結局一週間いて3本潜っただけだった。
明日はもう帰ろうかという日の朝、それが8日のことだった。
右目の視界がすうーっと狭くなり、星がたくさん見える。
しばらくすると、元に戻る。
そんなことが数回あった。気分ももちろんあまりよくなかった。とても疲れた感じがしていた。
でも、もう明日は帰るし、せっかくきたけれどあまり潜れなかったし・・・
そんなことを思いながら、これでラストと思ってシュノーケルをした。
余計にくらくらした感じがしたのは、30分ほどで上がってホテルの部屋に帰ってからだった。
だるくて、昼寝をした。食欲もない。
それでも夕方は知り合ったドイツ人の友達と一緒に食事をして、お土産を買いに行った。
同僚の顔を思い浮かべながら、お土産のマグネットを数え、値段を聞いていたその時だった。
急に口がまわらなくなった。
「あれっ おかしい。やばい。」と直感的に思い、こわくてちゃんと喋れるかどうかまた話してみた。
だめだ。
そのうちに、左手で持っていたはずの財布が落ち、続けて左手が落ちてきた。
怖かった。
とにかく冷静になろうと思い、ドイツ人の彼に、「なんだかおかしいから、救急車を呼びたい」と告げた。
「絶対病院に行ったほうがいいと思う。うまく話せないし、手もおかしい。」
私が説明するまでもなく、彼はすぐに店の人に頼んで、救急車を呼んでくれた。