本当の姿が分からない：記事抜粋
僕は百恵写真集に収録するためにヌードを撮らないかと誘ってみた
百恵の答えはノーだった
そのいくつかの理由が
「家庭に入る身だから」
「自分の全部さらけ出さなくてもいい」
「現実として見せなくて 夢の部分を残しておいたほうがいい」
というようなものだった
これらの答えは百恵の性格をよく表している
仕事での潔さの反面
私事について頑ななほどガードが固い
かなり大胆な衣装を着たりポーズをしていても要所はぴしゃっと押さえている
また 撮影のときも自分自身の中で準備ができていない無防備な状態で撮られるのを極端に嫌がる
最後も長い時間 百恵とともに音楽を作り続けたきたレコーディングディレクターの川瀬康雄氏をして
「ほんとう言って 百恵って最後のところは 未だにわからない」と言わしめる
このことが今日の百恵を築き成立させているように思う
すべてのスタッフは百恵のギリギリのところを要求しているようだったし
百恵もそれに最高に答えようとしている
百恵を取り囲むブレーンたちは百恵にものすごい愛を与えながら
その反面 言いようのないほど冷ややかなのだ
僕はこの緊張関係を美しいと思った
この相互に信頼し合いながら創作し続ける者同士が互いに踏み込まない神聖な距離
この無意識のうちに
百恵が他者との間に保つ距離こそが
百恵の秘密なのではないかと思った
