2011年11月10日
所属事務所で年に一度開催される、
「Voice Collection2011~朗読の夕べ」
当日がやってきた。
9月から練習に励んできて、
途中”癌との遭遇”という
予期せぬハプニングもあり、
「完璧な健康体」とはいかないが、
風邪を引く事もなく、この日を迎える事が出来た。
事務所には、癌の事、
12月に手術を受ける事を報告していた。
たまに背中が痛むだけで、
何の症状もなく、
お稽古や本番に支障はないとは思うが、
もしもの時の為、お話しした。
会場入りしてから、リハーサルをし、
それから本番まで、
4時間以上あったと思う。
共演の仲間と、腹ごしらえに出かけた。
仕事の事、今回の作品の事・・・
色々話しているうちに、時間が過ぎた。
三人で口を揃えて言った。
「今日まであっという間だったね」
いよいよ本番の時がやって来る。
時間を逆算して鎮痛剤を飲んでおいたので、
夕方だけれど、背中の痛みはほとんどない。
舞台袖、全員で
「よろしくお願いします!」
と声を合わせ、
舞台へと向かう。
あと数歩・・・
癌と一緒の舞台。
右の腎臓とは、これが最後の舞台。
心の中で声をかける。
「話しなら、後でちゃんと聞くから。
今日は私に付き合って。
見せてあげる。
これが、私の大好きな世界。
大好きな場所。
大丈夫。絶対、心地良いはずだから。」
深呼吸ひとつ。
そしてもう一度声をかける。
「さぁ、行くよ!」
自分の番。
舞台の上、顔を上げると、
信じられないものが目に飛び込んだ。
客席に、
私が会いたくてたまらない人達の顔があった。
それは、どんなに望んでも、
この世では決して、二度と会えない人達だった。
私より先に、天国へと旅立っていった、
大切な、大好きな人達。
私に沢山の愛情を注いでくれた。
いつも見守ってくれた。
今も、見守ってくれているんだ!
私は、客席の隅々まで、
そして空までも、
私の声が届くよう、願いを込めた。
生きてる!
「これからも、なんども なんども、
ここに立つ事が出来るんだ」
そう思ったら、
身体が震える程、嬉しかった。