「で?どういうことなの?」

翌日、ラブミー部の部室で、奏江は静かにキョーコに問いかけた。

「あんた、敦賀さんのこと好きなのよね?で、その敦賀さんに告白してもらったはずのに、なんでまとまってないわけ?」
「それは・・・」

昨夜知った蓮本来の姿。
それを奏江に話すことが躊躇われる。
蓮の本来の姿はきっとトップシークレットなはず。
たとえ親友である奏江であろうと軽々しく言えることではない。

「なにもすべてを話せって言ってるんじゃないわよ。話せることだけでも話してくれないと力にもなれないでしょ?!」
「モー子さん・・・」

なんだかんだ言ってもキョーコに甘い奏江。
その奏江の優しさが嬉しくて、キョーコは昨夜の出来事をかいつまんで話した。

「キョーコ。」

一通り話を聞き終わり、奏江はため息を1つついた。

「馬鹿ね・・・」

いつにない親友の厳しい言葉に、キョーコは驚き俯く。

「私はアンタほど敦賀さんと交流があるわけじゃないから、詳しいことなんてわからない。でもね、キョーコから話を聞いている限り、質の悪い嘘をつく人とは思えない。何か深い事情があったんじゃないかって感じがする。」
「モー子さん・・・」

確かにそうなのだ。
蓮にはきっと深い深い傷がある。
それはグアムでコーンとして会った時にも感じたこと。
自分をからかうために、自分がコーンその人であることを隠してたんじゃないはずだ。

「それにキョーコ。“私なんか”ってまだ言ってるのね。前にも言ったでしょう?そんな言葉使うのやめなさいって。あんたのことを大切に思っている人間に対して、それほど失礼な言葉はないわよ。」
「で、でも!」
「アンタのことを好きだって言った敦賀さんのことを貶めているとは思わないの?」
「でも、私みたいに美人でもなんでもない子なんて、敦賀さんには・・・・きゃっ!」

パシン!

奏江の手がキョーコの頬を打つ。

「いい加減にしなさい!!あんたの好きな人は外見しか見ない人なの?!そうじゃないでしょ?!」
「それは・・・」
「言ってたじゃない?!心から反省した人に怒るような人じゃない。本当に周りの人のことをよく見てくれている人なんだって!キョーコの芸能界に入った動機が気に喰わなかっただろうに、お芝居を真剣にやりたいと思った理由を話したらわかってくれたんだって。それからは、お芝居の楽しさや素晴らしさをたくさん教えてくれたんだって!!・・・・・そんな人が冗談なんかでアンタに告白するわけないでしょう?!なんでそれがわかんないの?!」
「・・・・・・モー子さん。」
「キョーコの心を癒してくれるのは誰?心の傷を埋めて幸せにしてくれる人は誰なの?」
「敦賀さん・・・敦賀さんしか私を幸せにできないの・・・私のたった1人の王子様は敦賀さんだから・・・・」
「なら、とっとと敦賀さんに会ってきなさい。そして、今度は自分からちゃんと告白なさい。」

そう言って、奏江は1枚のメモをキョーコに渡した。
そこには蓮のスケジュール。
相変わらず秒刻みのハードスケジュールだ。

「今朝、社さんから連絡が来てね。敦賀さんの様子がおかしいって言ってたわ。表情が抜け落ちたような感じで、口もほとんどきかないって。」
「!!」
「だから、私に聞いてきたの。何か知ってるかって。・・・・何もわからないけど、敦賀さんのところへキョーコを寄越すからって約束したのよ。あんたがそばにいれば、あの人は元気になると思ったから。」
「なんで?なんでそう思うの?」

ガチャリ・・・

「それはですね、敦賀さんのキョーコさんを見つめる目がすごく優しいからですよ。」
「天宮さん・・・」
「すみません。立ち聞きしてしまいました。・・・・キョーコさん。私が思うに、敦賀さんはキョーコさんがいなければ、きっとさびしくてさびしくて壊れちゃいますよ?」
「な!」
「そうよね。あれだけ、キョーコにべたぼれしてるんですものね。」
「モー子さん?!」
「だから、敦賀さんを失いたくなければ、とっとと告白してきてあげてください。」
「!」
「「キョーコ(さん)。ほら早く!」」

2人の言葉に力強くうなずき、キョーコは部室を飛び出していった。
キョーコが出ていった扉を見つめ、奏江と千織はホーッと息を吐く。

「やれやれ・・・2人とも本当に手がかかりますねー。」
「まあ、ね。・・・・敦賀さんがまさかヘタレるとは思わなかったけど。」
「そうですか?私はもしかしてって思ってましたよ?だって、敦賀さんってキョーコさんに骨抜きじゃないですか。キョーコさんにちょっとでも泣かれたら、きっと二の足を踏みそうだって思ってました。」
「プッ。確かに骨抜きよね・・・でも、キョーコが敦賀さんに向かっていくことを決めたなら、根性で敦賀さんの恋人の座を掴んでくるわよ。」
「ふふふ。楽しみです・・・・・あの2人がうまくいったら、私たちもラブミー部卒業できるように頑張りますか?」
「そうね。キョーコが笑顔で帰ってきたら、卒業する為に社長に課題をもらいに行ってもいいかもね。」

残された奏江と千織はクスクスと笑いつつ、親友の幸せそうな笑顔を思い浮かべたのだった。












◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





あれ?
おかしい。
まだ終わらない・・・
なぜ?!