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開幕前から、家族で「日本館は行ってみたいね」と話していました。実際に訪れてみると、静かな展示空間にしっかりとしたメッセージが込められていて、展示の世界観に引き込まれるような感覚がありました。これまで見た中でも、特に印象に残るパビリオンでした。

 

 

  木のぬくもりを感じる外観

 

日本館の円環状の建物は、いのちのリレーを体現したもの。なんとなく、ストーンヘンジを思い出す形です。最大の特徴は、円を描くように立ち並ぶ無数の「木の板」。その隙間からは内部の様子がわずかに見え、中と外、展示と建築の「あいだ」を感じさせるつくりになっています。

 

 

これは、日本館のテーマである「いのちと、いのちの、あいだに」を建築でも表現したものだそうで、これらの「木の板」は、万博終了後には日本各地で建物としてリユースされる予定で、解体や転用がしやすいように設計されているとのことです。

 

 

  3つのエリアで構成される展示

 

展示は「プラントエリア」「ファームエリア」「ファクトリーエリア」の3部構成。公式サイトによれば、どこから入ってもテーマのつながりを感じられる設計になっているとのことですが、実際には係員の案内に従って順路を進む形式となっていて、自由に好きなエリアから見ることはできませんでした。

 

ただ、この構成のためか、入口と出口が交錯する場所があり、退場する人が多いと入場を一時的に制限する場面も。混雑時には入口で待機時間が生じやすくなりそうです。

 

 

 

  プラントエリア:光る微生物たちが導く世界

 

最初は「プラントエリア」でした。暗い空間にたくさんの光が規則的に浮かび、まるで微生物の息づかいを見ているようです。ここは、微生物の働きを可視化した展示となっています。

 

 

その後の展示の中には、目玉の一つである「火星の石」がありました。この石は、南極で採取された火星由来の隕石とのことで、宇宙探査機によって直接持ち帰られたものではないそうです。薄くスライスされた石に実際に触れられるのは貴重な体験でした。

 

 

感触は…正直あまりよく分かりませんでしたが、「火星から来たもの」と聞くだけで、特別な気持ちになります。石本体は、思っていたより大きくて驚きました。これほど大きなものが燃え尽きずに地球まで到達したと思うと、もともとはどれほどのサイズだったのかと想像がふくらみます

 

 

 

  ファームエリア:藻のちから、未来のちから

 

次に入ったのは「ファームエリア」。
こちらは藻類の持つ可能性がテーマになっています。

 

 

ハローキティのオブジェ。事前に報道などで見てはいたのですが、思っていた以上に大きくてびっくり。クロワッサン型の藻をつけたキティちゃんなど、ユニークですね。

 

 

 

藻の応用範囲の広さを伝える展示も印象的でした。たとえば、同じ分量の水からどれくらいのたんぱく質が作れるかを牛で比較する展示など、「へー」と思うことがたくさんあって、子どもと一緒に楽しめました。

 

 

その次の部屋では、スピルリナという微細な藻類を培養する「フォトバイオリアクター」が空間いっぱいに広がっていました。鏡を使って反射させたりすることで、奥行きと広がりを感じさせる幻想的な空間が演出されています。

 

 

 

  ファクトリーエリア:循環型のものづくりにワクワク

 

最後の「ファクトリーエリア」は、日本の伝統的な知恵と現代の技術が融合した「循環型ものづくり」の展示でした。“あえて壊れるように作る”という発想を取り入れた設計例として、京都の「流れ橋」やJAXAの月面着陸機「SLIM」なども紹介されていました。これは、壊れにくさではなく、壊れることで全体を守るという、日本らしい柔軟なものづくりの哲学を伝えるものだそうです。

 


そして、ここでナビゲートしてくれるのが、ドラえもん。馴染みのあるキャラクターの登場はうれしいですね。

 

 

順路の途中に置かれていたスツールには、日本館のシンボルマークが印刷されていました。子どもが「あ、これ日本館のマークだ」と気づくと、係の方が「これは1日1個しか作れない椅子なんですよ」と教えてくださいました。

 

 

実際に次の展示では、ロボットアームがこのスツールを積層造形中。藻を原料にしたバイオプラスチックが使われていて、3つのパーツを組み合わせた構造になっていました。3つのパーツは、日本館の3エリアにちなんでいるのかもしれませんね。

 

 

最後に登場する展示は、回転する大きな珪藻土の円盤に水滴が静かに落ち、絵を描きながら消えていく「水のアート」。水を打つ音は心地よく、静かな空間の中でひときわ印象的に響いていました。はかなく消えていく絵とともに、その音が強く心に残りました。

 

 

順路の途中には池があり、空には三日月が浮かんでいました。

 

 

  展示を見終えて感じたこと

 

日本館では、未来に向けたメッセージが、静かな展示空間の中で自然に伝わってきて、とても印象に残りました。展示全体が落ち着いた雰囲気で、日本らしい“わびさび”のような感覚もありました。

 

海外のパビリオンの多くでは、その国の歴史や文化をストレートに紹介する展示が多い一方で、日本館は、自国の生活や知恵をあらためて見つめ直すような内容で、それがとてもよかったです。

 

 

なお、日本館は基本的には事前予約制ですが、朝と夜には予約不要の時間帯もあるようです(2025年5月時点。最新情報は公式サイトをご確認ください)。

 

▶ 公式サイト

 

 

ちなみに、バーチャル万博「空飛ぶ夢洲」で日本館に入ると、自分のアバターがゴミにされてしまうという衝撃的な体験も用意されていて、ちょっとびっくりですよ!