side M
「ただいま。」
大祐さんが家の鍵を開ける。
「さ、どうぞ。入って。」
「ありがと。お邪魔します。」
今日も僕達は一緒に大祐さんの家に帰って来た。
部屋に入るとふわりと大祐さんの香りがする。
ここに来る度に感じる、大好きな彼の香り。
僕はスーッと息を吸い込む。
まるで、彼に包まれているみたいだ・・・
そう思っていたら、不意に目の前が影になり彼の香りが濃くなった。
背中に力強い腕が回り、大祐さんが僕を抱きしめる。
白いワイシャツ越しからいつもの香水と彼自身の香りがする。
「大祐さんの匂いだ・・・」
その香りをもっと感じたくて彼の胸に顔を埋めると、
「ん?俺の匂い?
そういや、今日は営業で結構歩き回ったからな。
汗の匂いがするかも。」
そう言って僕から少しだけ離れた。
「ううん。それも合わせて僕は大祐さんの匂い、好きなんだよ。」
僕はもう一度、彼の胸にギュッと抱きつく。
「そうか。なら良いけど。」
大祐さんも僕を抱きしめ、髪に唇を寄せる。
その感触にキュンとして。
もっと別の場所に欲しくなって、顔を上げて大祐さんを見つめる。
二人の目が合うと彼がフッと笑って、
「ここにもだろ。」
唇にチュッとキスをくれた。
その夜。
ご飯を済ませ交代でお風呂に入って、あとは寝るだけとなった。
僕が先にお風呂を済ませて、今は大祐さんが入っている。
パジャマに着替えて洗い髪を乾かしてから、先にベッドに入る。
少しひんやりとしたシーツから微かに大祐さんの匂いがする。
ドキドキ・・・
多分、このままただ一緒に眠るだけではないと思うから・・・
これから彼に愛される事を想像して、胸が甘くときめいていく。
「真緒、お待たせ。」
大祐さんが寝室に入ってきた。
上半身裸で肩からタオルを掛けただけで、その間から逞しい胸板が見え隠れしている。
それが大人の男の色気といった感じで、僕は被った布団から目だけを出してじっと見つめてしまう。
その視線に気付いた大祐さんは、
「どうした?そんなに見つめて。」
そのまま僕の方へ近付いてくる。
「あ、だって・・・」
もう何度も大祐さんの裸の胸を見ているはずなのに、今だ慣れる事がなく僕の心臓はうるさくなるんだ。
大祐さんだって、わかってるよね・・?
更に彼が僕の近くまで来る。
「良いよ、真緒。
俺ももう我慢できない。」
その声もゾクっとするような色気を含んでいて・・・
「大祐さん・・」
堪らず、僕は彼の背に腕を絡めて自分の方へと抱き寄せた。
重なるお互いの素肌、甘い吐息。
そしてすぐ近くで感じる彼の香り。
二人同じボディーソープの香りから、だんだんと色濃くなっていく大祐さん自身の匂い。
それを知っているのは僕だけ。
僕だけの、大祐さん。
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こんばんは
好きな人の香り。
安心できたり、胸をときめかせるものです。
よそ行きではなく、プライベートでのそれは自分だけが知っている。
彼が自分の恋人なのだと感じられるのです。
読んでいただき、ありがとうございました