side M


それから僕は毎日図書室に行くようになった。

もちろんテスト勉強の為なのだけど、彼と二人きりで過ごせるこの時間の為というのが大きかった。


あまり人が来ない事もあり、ここは彼と僕の二人だけの特別な場所のように思えた。


ドキドキとときめく胸を抑えつつ、それでも勉強には集中しないと。


今日も僕の向かいに座る彼は懸命に勉強に取り組んでいるから。


そんな彼の姿を感じながら、僕も勉強に戻った。




しばらく二人とも集中していたけれど、向かいからふーっと息を吐く気配がして僕は顔を上げる。


そして、腕を上げて伸びをする彼と目が合うと、


「ちょっと一息入れようか。」


ニッと笑って言う。


「あ、うん。」


ずっと勉強しているとやはり疲れてきてしまう。

それは僕も彼も同じみたいだ。


とは言えここは図書室。

休憩に何をするのかと思っていたら、


「ここって写真に関する本が結構あるんだよね?」


「そうだけど・・大ちゃん、知ってるの?」


彼が席を立って書棚へ移動する。


僕も彼の後に着いて行く。


「ああ。実は俺も結構好きなんだよね、写真。」


「えっ、そうなの?」


そういえば、彼の趣味や好きな事って今まで知らずにいたんだなと気付く。


「たまにここに来て画集を見てると、部活とかで疲れている時には癒しになっているんだ。」


彼が一冊手に取ってページを捲っていく。


「あ、これ。僕も好きなんだよ。」


「やっぱり?真緒が好きそうだなって思った。」


そう言って一緒に写真を見て笑い合う。


「大ちゃんが写真に興味あるなんて知らなかったな。」


「そうだね。ずっとスポーツをやってきてたから、他の人にはあまり知られてないのかもな。

でも、昔から好きだったんだよ。

・・だから、真緒の撮る写真もずっと見てたんだよ。」


え・・そうだったの?


「写真には撮る人の思いや人柄が出ると思うんだ。

真緒の写真を見てたら、真緒はどんな人なんだろうって、ずっと話してみたかった。

席が隣になってから色々と話をしたら想像通りというか・・一緒にいて居心地が良いなって思ったんだ。」


「大ちゃん・・・」


こんな嬉しい事を言ってくれるなんて。

違うとは思っていても、やっぱり期待しちゃうよ・・・


「あ、何か俺一人でペラペラと喋ってしまったな。

ちょっと照れるけど・・真緒の事は本当にそう思ってるから。」


「ありがとう、大ちゃん。

僕の方こそ、何でもできて皆からの人望もある大ちゃんとずっと親しくなりたいって思ってた。

だから・・嬉しい。」


「真緒・・

何だかお互いの褒め合いみたいになってるな。」


そう言う彼の頰がほんのりと赤い。


「でも、真緒といて心地が良いのは本当だよ。

さ、もうひと頑張りするか。」


「うん。」


その後は二人とも下校時間まで勉強に専念した。


彼が僕といて心地良いと言うように、僕も彼といるとそう感じている。

そして、ちょっぴり胸の奥がくすぐったくなった。



それから、テストまでの日々は毎日彼と図書室で勉強するようになった。


始めはそれぞれで。

ある時には、僕が数学でわからない所がありそれに気付いた彼が、


「つまづいてる?」


と声をかけてきた。


「うーん、ここなんだけどね・・」


「どれ?あ、これは・・」


「あ、そうか。わかった!

ありがとう、大ちゃん。」


「いや。

俺でわかる所なら聞いてよ。」



こうした穏やかな二人だけの空間。

この時間がずっと続けばいいのにな・・・


彼との距離が近付く度に、僕はますます彼の事を好きになっていくのだった。






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こんばんはニコニコ



放課後、彼と一緒に勉強する図書室。

そこはほぼ二人きりの空間です。


お互いに好きだという気持ちを持ちつつ、一緒にいる事の心地良さを感じています。


そして、ますます思いが募っていくのです。



次回に続きます。

お付き合いよろしくお願いします照れ