京介が旅立ってから数ヶ月が過ぎた。
慣れない異国での生活は大変な事が多いけれど、それ以上に新しい事を学ぶ楽しさがあり、毎日頑張っているようだ。
家族に、そしてもちろん大輔さんにも報告があり、京介の元気な様子を知る事ができている。
どうしても寂しくなってしまった時に、顔を見て声が聞きたくなるのはやはり大輔さんだった。
京介にとっての大切な人なのだから・・とはわかっている。
でもちょっとだけ寂しいよな・・
なんて思う時もあるんだ。
「濱尾くん。」
勤務先で、先輩の女性に呼びかけられた。
「はい。」
「今度の土曜日、予定ある?
もしなかったら、これなんだけど・・・」
と、差し出されたのは・・チケット?
「あの、これって・・?」
「あっ、行く予定だったんだけど急に都合が悪くなっちゃって。
チケット無駄になってしまうのも嫌だし。
でね、濱尾くんならと思ったの。」
それは、大輔さんが出演する舞台のものだった。
彼女は大輔さんのファンで、よく舞台を見に行っているのだ。
俺に・・という事は、俺が京介の兄だと知っているから。
そして、本当の事は知らないだろうけど、京介と大輔さんの関係も何となく想像がついているといった所なのかも知れない。
「そうですか。なら行かせてもらいますね。
あ、チケット代払いますよ。」
「いいのよ。こちらがお願いしたのだから気にしないで。ありがとう。」
じゃあ、よろしくね。
と、彼女が自分の席に戻る。
俺は手の中のチケットを眺めて、
大輔さんに言っておいた方が良いよな・・・
一言、連絡を入れる事にした。
舞台上の大輔さんは、圧倒的な演技力と歌唱力で観ていてとても惹きつけられた。
ここは大輔さんが輝く場所なのだと、改めて思った。
観劇して帰宅後、京介に報告する為にメッセージを送る。
『思いがけず、大輔さんの舞台を観れる事になったので行って来たよ。
やっぱり、舞台上での大輔さんはすごいな。
すっかり見入ってしまってたよ。』
それからしばらくして、京介から返信が来た。
『えー、いいなぁ。
大ちゃん、カッコよかったでしょ?』
そこには、羨ましいという気持ちと、恋人の自慢?が込められているようだった。
『うん。カッコよかった。
だからって、京介の大輔さんに惚れたりしないから安心して。』
こう返すと、
『そうだよ。僕の大ちゃんなんだからねー。
いいなぁ。僕も大ちゃんに会いたいな・・・』
相変わらずの仲の良さと、それに反して会えない寂しさが見えた。
遠く離れてても確かな愛情で結ばれている二人だけど、会いたい時にすぐに会えないのは辛いよな。
二人が今度会えるのはいつになるのだろう。
京介とのやり取りが終わったすぐ後に、今度は大輔さんからメッセージが届いた。
噂をすれば何とやら、なのか?
『舞台を見に来てくれてありがとう。
なかなかゆっくりと話ができなかったので、今度飲みながらでも会えませんかね?』
大輔さんからのお誘いだった。
お互いの連絡先を知っていて、こうしてたまにやり取りがあるのだけど、大輔さんと二人だけで会うという事は今までなかった。
どうしようかな・・
何を話したらいいのだろうかと考えてしまう。
でも、ゆっくりと話をしてみたいとも思う。
なので・・
『はい。俺も会って話したいと思ってました。』
返信をすると、
『ありがとう。
また連絡します。』
こう返ってきた。
こうして俺は、大輔さんと二人で会う事になったのだった。
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こんばんは
まおくんのお兄さん目線のお話の続きです。
お兄さんは、思いがけず大ちゃんの舞台を見に行く事になりました。
そこで、これもまた思いがけず二人で会うという話に。
そこで二人は、一体どんな話をするのでしょう?
次回に続きます。
もう少しお付き合いよろしくお願いします