志「あはははっ!生徒会長とかやる人いんの」
茜『ほんとに、毎年立候補者がいるのが不思議だよね〜』
生徒会長募集の貼り紙を指差しながら隣で大声で笑っているのは親友の愛佳。
ここだけ聞けばどんなに性格が悪いやつかと思われるけど、根はとっても優しい。
まぁ、態度が悪いのは事実なんだけどね。
今度、私達の学校では生徒会選挙がある。
...って
茜『え、今日なの?』
志「あ、ほんとだ、興味無さすぎて知らなかったあはははっ」
ほんと正直だな
まぁ、興味なかったのは私もなんだけどね(笑)
“今度”だと思ってたけど“今日”だったみたい。
志「今からじゃん。茜どうする?サボる?」
茜『生徒会関係はサボると後で面倒だから参加する』
志「そっか、なら参加する」
しぶしぶ体育館に移動するとそこは案の定ガヤガヤとしていて、先生達がなんとか静めようとバタバタと動き回っていた。
しばらくすると、なんとか静まり生徒会選挙が始まった。
あーぁ、やっぱりこういうのってほんと退屈だ。
尾「選挙管理委員会の尾関ですっ!今回は生徒会長に1名の立候補がありました........〜〜私の挨拶はこれで終わりにします。それでは2年の菅井友香さんお願いします。」
なんとも個性的なフォームでその生徒が走り去ると1人の生徒が壇上への階段を登り始める。
すると周りがザワザワしだした。
「ねぇ、あの子」
「そうそう菅井財閥の」
「やっぱり、お金持ちだからって調子乗ってるよね」
どういうこと...?
何でお金持ちだったら立候補しちゃダメなの?
「おい菅井財閥!選挙なんかしなくても父親の力でどーせなれんだろ!!」
あははははははっ
1人の男子生徒が菅井さんに向かってそう叫ぶと会場はどっと笑いに包まれる。
黙って聞いてたけど我慢の限界。
何これ、とっっても気分悪いんですけど。
『人がさ...勇気出して立候補してるのに聞く気ないとか失礼すぎませんかぁ!』
思わず私は叫んでいた。
会場はシンと静まり返る。
「あ、やばいやばい守屋先輩だ」
「守屋先輩がついてるとか強すぎる」
実は私はテニス部の部長で鬼軍曹として有名。
こういう時には意外と役に立つもんだ。
それでも黙る気のない人もいる。
はぁ...効果なしか...
「ッチッ...黙れ」
「きゃぁあ!やばい、志田先輩に睨まれた!」
「あぁあ!幸せ!」
横で黙っていた愛佳が口を開いたかと思うと、まだ黙る気配のない生徒に向かって舌打ちをすると悲鳴のような歓声を上げて大人しく黙る。
愛佳...流石...
愛佳はというとバレー部のエースで男子からも女子からもモテモテ。
クールだけど、本当は明るいし面白いそのギャップがまたいいんだよね〜
って、そんな話はおいといて...
なんとか会場は静まり、菅井さんの演説が始まる
菅「こんにちは。この度生徒会長に立候補いたしました、菅井友香です。私は〜〜........ありがとうございました。」
言い終わると会場には拍手が沸き起こった。
始まる前に菅井さんに対して酷い言い方をしていた人までも拍手を送っている。
すごい...
私も手が痒くなるくらい精一杯拍手を送った。
菅井さんは言い終わって緊張が解けたのか、壇上から降りる時に段差もないところでつまずく。
ふふ...可愛いなぁ
しっかりとしたとこだけでなく、おっちょこちょいな一面も見れてなんだか嬉しい気持ちになった。
志「茜がさ、あんなことするなんて珍しいね...もしかして惚れた?」
この帰り道、愛佳はニヤニヤしながら私の顔を覗き込んでくる。
茜『そ、そんなわけっ』
志「あははっ、冗談、冗談。」
愛佳はたまに冗談がキツい。
でも......
まさかね、ないない
それからしばらくして選挙の結果が出た。
菅井さんは近年稀に見るほどの不信任の少なさで見事当選し、生徒会長になった。
今ではすっかり菅井さんが生徒会長というのもしっくりくるようになった。
そんなある日、廊下を歩いていた時に、向こうから左右にふらふらと揺れている資料の山がこちらに向かってくるのが見えた。
前が見えておらず、あまりにも危なっかしいので、前が見えるように上の方の資料を代わりに持つとその人の顔が現れた。
茜『え、菅井...さん?』
菅「あ...え、えっと...」
茜『あ、ごめん、私のこと知らないよね』
あ、そっか...
私が一方的に知っているだけで菅井さんは私のこと知らないんだった
菅「あ!」
菅「あの、生徒会選挙のときの...!あの時は本当にありがとうございました」
覚えてくれてたんだ...
私は素直に嬉しかった。
私は嬉しさで思わず頬が緩みそうなのを必死に抑える。
茜『いやいや、あれで余計言いづらくなってたらどうしようって思ってて...』
菅「全然!ずっとお礼言いたくて...会えて嬉しいです」
そう言ってにっこりと微笑む菅井さん。
そんな菅井さんを見ているとどこか心が穏やかな気分になったような気がした。
茜『1人じゃ大変だから手伝うよ』
菅「いいんですか?」
茜『いいよいいよ』
この時の私には菅井さんが大変そうだから助けたいという気持ちだけでなく、もう少し一緒にいたい...そんな気持ちもあった。
私達は資料を抱え、横に並んでゆっくりと歩き始めた。
─続─