「もうすぐやな」
「そやな!」
『なんか緊張してきたわ...』
今日は友達3人と遊園地に来てるねん
それで、今ジェットコースター並んでて、もうすぐ乗れるとこまできて...
1人で回るのも嫌やし、ジェットコースターついてきたけど...
やっぱりめっちゃ怖い...
しかも並びすぎて足の裏めっちゃ痛いし、ほんまジェットコースターっていいとこないわ...
《何名様ですか?...はい、3名様、それでは8番のところでお待ちください》
係員の人に人数を伝えて、言われた通り床に“8”と彫られたレーンに並ぶ。
荷物を置いて出発までの間、必死に心を落ち着けようと友達と話していたら左の方から声がした。
「...お邪魔します」
多分シングルコースターの方に並んでいた人だろう。
このコースターは1列4人乗りだったので、一人分空いているそこにその人は座った。
声から小柄で可愛い雰囲気の女性をイメージしていたためスラリと背が高くかっこいい容姿に驚いた。
めっちゃかっこいい...
しばらくして、引き寄せられるようにその女性を見つめてしまっていることに気づいた私は慌てて顔を正面に向けた。
「寒いですね」
『寒いですねぇ』
そう、今日は遊園地には似合わない曇り空。
おまけに風もめっちゃ強くてめっちゃ寒い。
そう言ってその人は手を擦り合わせる。
私も少しでも温かくしようと真似て必死に手を擦り合わせた。
そうこうしているうちに自分の中からだんだん恐怖がなくなっていくのがわかった。
もしかしたら、ジェットコースターって怖くないんかもしれへん
《それでは発車します!行ってらっしゃ〜い!》
前言撤回。
友達が手を振る中、私には手を振る余裕なんかなくいらいの恐怖に襲われていた。
無理無理、やっぱり無理や...
ドクッドクッドクッ
どんどん鼓動が早くなる。
『嫌やぁあぁああ!』
「楽しかったな!」
「ホンマやな!」
『...』
嘘やん。
あれが楽しかったん。
あれのどこが楽しかったん。
スピードが落ちて平なところを進みながらゴールへと向かうコースターに乗りながらまだ放心状態の私。
「寒かったですね」
『...そう...ですね...』
「ふふっ、もしかしてジェットコースター苦手でした?」
『あ、はい...』
「ふふっ、リスみたいですね」
なんや、バカにしてるんか、うちのこと。
しかもさっき会ったばっかやのに
そう思ってイラッとしたけどその後に一言
“可愛い”
付け足すようにして呟かれたその言葉に私の胸はドクンと波打ったと同時に顔が火照っていくのがわかる。
急にそんなこと言わんといて
恥ずかしなるやん...
「面白かったけど一瞬やったな」
「な〜...あ!もっかい乗ろうや!」
「やな!」
『え...』
コースターから降り、出口への階段を降りながらそう話す友達。
嘘やん...
「美波どうする?」
『...うちは...もうええわ...』
「そっかぁ...」
恐怖を知ってしまった今、さすがに2回目を乗る勇気はない
『あ、うち終わるまで違うとこ行っとくから遠慮せんと乗ってきて!またLINEしてな!』
「ごめん美波」
『ええよええよ』
「ありがとう!」
ええって言ったけどどうしよ...
3時間かぁ...暇や...
お土産屋さんでも見に行こかな...
お土産屋さんに入って見たけど特に欲しい物も無く、ただ散歩をしているような気分。
ボーッと歩いているとぬいぐるみが並ぶ棚を曲がった時に誰かにぶつかってしまった。
『...ったっ...』
「...ごめん...なさっ.....あ」
『...うちが前見てへんかったか.....え』
この声って...
そう思って顔を上げると案の定、その声は先ほどジェットコースターで出会ったあの女性だった。
「あ、さっきの」
『...はい』
「あれ、友達と来てませんでしたか?」
『...あ、友達もう1回ジェットコースター乗るらしくて私は』
「あ、なるほど」
なるほどってなんやねん
そうツッコミたかったけどグッと堪えて話を聞き続けた。
「じゃあ、1人ですか?」
『そうですけど...』
「...一緒にいませんか?」
『...』
私は小さく頷いた。
普段なら絶対こんなことせぇへんのに。
女の人やからOKしたんやろうか。
それとも...
『なぁ、あれ食べへん?』
「いいね!」
『土生ちゃんの1口欲しい...』
「じゃあみいちゃんのも...」
「みいちゃんあれ乗ろうよ!」
『うん!』
「これは怖くないし大丈夫だったね」
『バカにしてるやろ〜』
それから私たちはチュロスを食べたり、空飛ぶキャラクターの乗り物に乗ったりして、いつの間にか土生ちゃん、みいちゃんと呼び合う仲にまでなっていた。
《美波、終わってんけどどこいる?》
そう友達から連絡が来た。
土生ちゃんと過ごす時間はあっという間で気づけば3時間半が過ぎていた。
『土生ちゃん、ジェットコースター終わってんて...』
「そっかぁ...」
そんな寂しそうな顔せんといて
戻りたくなくなるやん...
「あのさ...」
『何?』
「みいちゃん、LINE交換してもいい?」
『...ええよ』
「あとさ...」
「また会ってもいい?」
私はコクンと力強く頷いた。
出会って、きちんと話してからたった3時間半。
まだ土生ちゃんのことなんて知らんことなんてたくさんある
どんな人かなんてわからへん
やけどもっと知りたい
もっと話したみたい
私はそう強く願った
「美波おかえり〜」
『ただいま〜』
「美波暇やったやろ、ごめんな」
『ううん、大丈夫やで』
「あれ?美波いいことあった?」
『えぇ〜、秘密〜』
「何何、教えてよ〜」
今度会う時は私から伝えられたらええな
土生ちゃんまた会ってくれへん?
─END─