〜1組〜



─志田side─




私はたまたま帰り道で梨加と理佐が一緒に帰っていたところを見かけた。



“梨加”  “理佐ちゃん” 



そう呼び合う2人に私は違和感を覚えた。


確か2人は学校では“渡辺さん”  “渡邉さん”と呼びあっていたはずだったから。


いじめている人がいじめられている人と一緒に帰っているその光景を不思議に思った私は後をつけた。



理『梨加、朝の』


理佐は千円札を梨加に差し出しながら言った。


梨「そんな...いいのに...」

理『いや、ダメだって...梨加、ほんといつもごめん』

梨「いいの、理佐ちゃんの役に立てるなら。ずっと中学の時、隣のコートで最後まで残って練習して、努力してる理佐ちゃんは私の尊敬する人だった...なのに、ああなった時に何も出来なくて...私がちゃんと言えてたら変わったかもしれなかったのに...」



その時、その言葉でふと思い出した。


渡辺梨加がバスケ部のマネージャーで同じ中学だったことを。


私の中学は最近では珍しいマンモス校で一学年10クラスだったため、学年には話したことのない人や関わりがない人のことはすぐに忘れてしまっていて梨加のことも今まで思い出せなかった。


そうだ、理佐がいつも残って練習している時、端の方でバスケ部の片付けを懸命にしていた人、それが梨加だ。



理『そんなことはもういいから』

梨「でも...」

理『梨加は悪くない』

梨「ありがとう、これでもう理佐ちゃんがいじめにあうことはないから。こんな形で助けることになって...ごめんね」

理『なんで梨加が謝るの?謝らないでよ...もう、私どうしたらいいかわかんない...』


そう言って泣き出す理佐。
高校に入ってから理佐の涙を見るのは初めてで驚いた。





志『合意の上で行われているいじめ。梨加ちゃんがいいと言っているのだからいいのかもしれない。でも、だからと言って理佐のしていることを私は見過ごすわけにはいかない.....いじめをしている理佐を私は見たくない...』





志『今度こそ...理佐を救ってあげられないかな』








〜2組〜



皆が帰って理佐とねる、二人きりの放課後。



─理佐side─
 


ね「...さ...理佐......理佐!」

理『...ぁ、ごめん...』

ね「どうしたの?ボーッとして」

理『ううん、なんでもない』


“懐かしいね...”


さっきの愛佳の言葉が頭から離れない


“もし私が理佐にバレーで勝てたら...”


それと同時にこの言葉が頭の中を駆け巡る。


うるさいうるさいうるさい


もう忘れることにしたのに...



ね「何?私に言えないこと?」

理『え?』

ね「わかるよ、何かあったことくらい」

理『.....』

ね「無理にとは言わない、言いたくなかったらいいよ」



そう言って窓に腰掛けるねる。

ねるには今まで色々相談してきた。

由依には言ってないけど、ねるには以前伝えた。
私が昔のいじめを受けていたこと、愛佳と私が幼馴染だってことも、梨加にいじめをしている本当の理由も。


また、ねるを頼っちゃってもいいかな...?



理『あのさ』

ね「うん」

理『バレーのあと愛佳に言われたの、懐かしいね、中学の時を思い出すって...』

ね「...嘘...じゃあ、志田さんは理佐のこと気づいてるってこと?」

理『うん、そうみたい...びっくりした...』

ね「すごいね、ちゃんと覚えてるなんて」

理『ねえ、ねる、もしだよ、もし昔、試合で勝ったら.......って言われたら』

私がそう言うとさっきまでの真剣な表情とは一転、一気に頬を緩ませる。

ね「へぇ〜〜好きなんだ、志田さんのこと」

理『違う!...違うから!...しかも、もし、もしもの話だし...』

ね「へぇぇ〜〜」


ニヤニヤして私を見つめるねる。

あぁー、失敗した...




そう、私は今でもあなたのことが好きです


でも、あなたの気持ちはもう変わってしまっているのかな...






─続─