──スポーツ大会の次の日
〜2組〜
理『おはよ』
ね「おはよ〜ぉ」
由「理佐、おはよ」
理佐が席に着くと、隣の席でカバンから教科書を取り出しているねるが声を上げる。
ね「あぁ〜お昼ご飯代...玄関に置いてきちゃったぁ...」
その声を聞いた梨加はいつものように財布を取りに行こうとロッカーに向かう。
理『ちょっと待って、はい』
ね「え、理佐?」
理『いらないの?』
ね「いや、そうじゃなくて」
理『あ、...もういいの。やめる。』
そうねるに言って自分の財布から取り出した千円札をねる手に握らせると、ロッカーの前で立ち尽くす梨加の前に行き頭を下げた。
理『渡辺さん、今までごめ...』
梨「なんで...謝らないでよ.....私が、全部私が始めた...望んだことなのに.....」
梨「...っ謝ったら理佐ちゃんは.....理佐ちゃんはまた下に見られるんだよ.....」
理佐が言い終わる前に梨加が口を開いたため、理佐は思わず顔を上げる。
梨「...っ理佐ちゃんは悪くないっ!」
いつも物静かで声の小さい梨加が大声で、しかもいつも“渡邉さん”と呼んでいるはずの理佐のことを“理佐ちゃん”と呼んだことからクラスメイトは驚きのあまり固まる。
理『ちょ、梨加...』
教室を出ていった梨加の後を追うようにして理佐も出ていったため、クラスメイトは唖然として手を止めたままその場で固まる。
そんな中、冷静に由依は隣にいたねるに問いかける。
由「ねぇ、ねる、どういうこと?」
ね「実は....理佐がいじめをしていたのはね.....」
ねるが由依に耳打ちをすると由依は「ほんと、意味わかんない」と言いながらも目からは一筋の涙が流れていた。
みんなの頂点に立っているような理佐。
それは強がりで、強い自分を演じていただけの理佐だったのだ。
一方、理佐と梨加は...
理『梨加!梨加っ!』
梨「っ!」
足の遅い梨加が運動部の理佐に敵うわけがなくすぐに捕まってしまった。
理『...ごめん』
梨「なんで、あんなことしちゃったの?もう高校生も終わりなのに...このまま卒業したら良かったのに...」
何も言えなくなって黙る理佐を余所に梨加は話し続ける。
梨「理佐ちゃんのばか。だから、気づかないんだよ。周りの優しさに。もっと私たちのこと信じてよ...頼ってよ...長濱さんだって、きっともう理佐ちゃんを解放したかったんだと思う...さっき、そのためのきっかけを作ってくれたんだよ...」
梨「理佐ちゃんは気づかなかった?自分が直接的にいじめをしていないってこと。」
梨「皆、気づいてた。ううん、勘づいてた。理佐ちゃんはいじめを楽しんでいるんじゃないって、理佐ちゃんはずっと何かに苦しんでるって」
理『...!』
梨「私が高校で理佐ちゃんを見つけた時に咄嗟に思いついたのがこれだけだったの。理佐ちゃんに私が理佐ちゃんを助けてあげる。そのためには私をいじめて...って言ったこと、このこと自体が間違いだったよね...」
梨「理佐ちゃんが私からお金を取ったこともないし、直接私に悪口を言ったこともない。理佐ちゃんは甘いんだよ...理佐ちゃんは優しすぎるんだよ.....」
理『梨加...でも、それでも私はただただ見てた。謝っても許されないこと』
梨「それはあの時の私も同じ。私も理佐ちゃんのことただただ見てた。謝っても許されない。だから、おあいこだよ。」
そう言って泣き出す梨加を理佐は優しく抱きしめた。
理『...梨加...ありがとう』
梨「っやっと言ってくれた...私はっごめんじゃなくて...ありがとうが聞きたかった...っ」
理『...梨加、ありがとう』
理『明日からみんなの前でも梨加って呼んでいい?』
梨「もちろん...理佐ちゃん...」
理佐に二度と中学の時のようなことが起こらないようにと必死だった梨加。
梨加なりの愛だった一方でお互いを苦しめていたものでもあった。
でも、それも今日まで
こうして私たちの奇妙な関係は終わったのだった。
─続─