TheElementsこの世で最も美しいもの(おわり) | ♯みみちえまんが

TheElementsこの世で最も美しいもの(おわり)

TheElementsこの世で最も美しいもの(おわり) 
物質の源である、元素の話。
元素の1番である水素から、100番のフェルミウムまで約2年間にわたって紹介いたしました。
最後に101番以降の元素についてお話させていただきます。

101番から109番までは、過渡的領域です。わかりやすく言い換えると、「用途はないけれど少なくとも可視量が作られた」元素から、「いつどこで何個の原子が作られたかが正確にわかる」元素までの間に位置するということです。
101番以降の元素名になる栄誉となった人々の多くはノーベル賞を受賞していますが、そうでない人もいます。
メンデレビウム(101)のドミトリー・メンデレーエフは受賞していません。彼は周期表を作ったのですが、その時にはまだノーベル賞がなかったからです。
ノーベリウム(102)のアルフレッド・ノーベールがノーベル賞の受賞者でないのは、ノーベル賞を創設した当人だからです。
マイトネリウム(109)のリーゼ・マイトナーがノーベル賞を受賞しなかった主な理由は女性だからです。時代ですね。
マイトナーは、オットー・ハーンとともに核分裂の発見に多大な寄与をした人物で、ハーンは1944年度のノーベル賞を受賞しています。
けれども、最後に笑ったのはマイトナーだったと言えるかもしれません。
元素名に自分の名前が採用される名誉は、ノーベル賞とは比較になりませんから。
ハーンにちなみ、105番元素の名前の候補にあがったことがあります。
一度候補になって採用されなかった名前を後で別の元素に使ってはならないというルールがあるため、ハーンは永遠に元素名になれません。
ドブニウム(105)とシーボーギウム(106)は紆余曲折の末に名前が決まりました。
それに対してローレンシウム(103)はすんなり選ばれました。
このあたりの元素の発見には多くの場合サイクロトロンという加速器が使われており、アーネスト・ローレンスは最初のサイクロトロンを作った人物だからです。
ラザホージウム(104)のアーネスト・ラザフォードはもっと根本的な点に貢献しています。
原子核の存在を発見したのはラザフォードなのです。
ボーリウム(107)のニールス・ボーアは、電子軌道の概念を提唱して周期表の構造の秘密を解き明かしました。
ハッシウム(108)はこの元素の発見地であるドイツのヘッセン州からとられています。カリホルニウムのドイツ版のようなものです。
ダームスタチウム(110)という名前は、ドイツのヘッセン州にあるダルムシュタット市に由来します。
この元素を発見した重イオン研究所がそこにあるからです。
ウィルヘルム・コンラート・レントゲンはX線の発見者です。
しかし皮肉にも彼の名前をもらったレントゲニウム(111)はX線を出しません。
1996年に発見されて2010年に名前が決まったコペルニシウム(112)は、化学や核物理学にあまり貢献していない人物にちなんで名付けられた点で、ノーベリウムと並ぶ例外です。ニコラウス・コペルニクスが選ばれた主な理由は、偉大な天文学者だったということの他に、112番元素の発見者たちと同じドイツ人の血が流れていたからかもしれません(コペルニクスはドイツ系ポーランド人)。
以降の元素の名前は仮の名で、原子番号をギリシャ語とラテン語の数字であらわしたものです。
例えば、116番元素ウンウンヘキシウムun-un-hex-iumは、ラテン語で1をあらわすunoとギリシャ語で6を意味するhexを組み合わせてあります。
理論的計算によれば、120番(ウンビニリウム)または122番(ウンビビウム)のあたりに「安定性の島」があることが示されています。
その元素は安定元素ではないでしょうが、半減期がかなり長いだろうとされています。
さて、理化学研究所では、2004年、2005年に続き、2012年8月に3個目の113番元素の合成を新たな崩壊経路で確認しました。
これは、新元素の発見の「確定」につながる成果です。
今回の成果により新元素の命名権が国際的に認められれば、元素周期表に初めて日本が命名する元素が載ることになります。日本そしてアジア初の元素への命名権獲得に期待しましょう!

→2016年11月新元素「ニホニウム」として国際的に発表されました。👏


これまでTheElementsをご愛顧いただきありがとうございました。
本作は、The Elements By Theodore Grayを参考にいたしました。
元素への理解を深めたい方はこちらをごらんください。
<http://periodictable.com/theelements/pages.t.html>