お気に入りだった私のブランケットにくるまれて手押し車に乗せられたポチを見送ったあの場所に、明日、ポチを迎えにいく。
生あるものは、命を失えばほうっておいてもいつか土に返る。信じられない。
だってポチの亡骸は、かすり傷ひとつなく顔は眠っているようにおだやかだった。
いつか、むくっと起き出して、ウーンと伸びをして、体をプルプルっと震わせて、そして尻尾を振って私の方に駆け寄ってくるかもしれない。ううん。生き返らなくてもいい。もしもこのまま、変わらずにいてくれたら、ずっと手元に置いておきたい。
いいえ、死んだものは生き返らず、その姿はいつか私の知っていたポチではなくなってしまう。
なんて残酷なんだ。
ポチが死んだ日、妄想したり、我に帰ったりしながら、長い夜を過ごした。
もしも、冷たくなったポチを変わらない姿で、ずっとそばにおいておいたら、悲しみがその分長くなるだけだ。
自然の摂理は残酷だけど、そのかわり、残されたものに、忘れさせる、といういたわりをくれる。
私の部屋の風景は、どこを切り取ってもポチの姿があった。それがあまりにもあたりまえすぎて、気にもかけなくなっていた。あの日の朝、私が出かけるとき、ポチはどこにいてどんな顔をしていたのか、あまり覚えていない。
あの朝、めずらしく雨が降っていて、濡れるのが嫌いなポチは、それでも顔を下に向けて一生懸命散歩していた。それが私がしっかり覚えているポチの最後の姿だ。
小さな箱に詰められたポチは、明日の朝、この部屋に帰ってくる。そしたら、かわいい陶器の入れ物に移し変えてあげよう。散らばったままの散歩の紐や首輪やおもちゃを一箇所に置いて写真を飾ろう。エサや水を毎日取り替えるのは、もうやめよう。
遠い日に失ったもののことを思い出しても、もう涙は出ないのと同じに、いつか、ポチがそばにいないという非日常が日常に代わるときがくる。