作り話 | アメリカでしのぐウエイトレスのブログ

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バカヤロー!って叫びたいときだってあるんです…。

元夫に家から出たいと言った数日後、私は、仕事が終わったあとオーナーに呼ばれた。メインダイニングとは別の、小さな、プライベートルームと呼ばれるダイニングの片隅に、オーナーは私を招きいれた。 あんた、離婚したいって言ったんだってな。あの人、昨日、うちに来てそう言ってたで。 元夫から、オーナーのところへ行ってきた、と聞かされたときから、いつかは、と心の準備をしていたつもりだった。でも、実際にその場になってみたら、やはり、何から話せばいいのかわからなくて、私はただ下を向いたまま黙っていた。 何があったん? 好きな人でもできたんか? 私は首を横に振った。 黙ってたら、わからんて。じゃ、あの人のいうとおりでええねんな。 私は顔をあげて、そして初めて口を開いた。 あの人、なんて言ったんですか。 財布を分けてお互い自立しよう、あんまり夜出歩いたりしないで、家族だけで過ごそう、って言ったら、みみちゃんが怒って、突然離婚したいって言い出したって。 違います。 じゃ、なんなの。 私は、話すべきかどうか迷っていた。事の始まりは、元夫が仕事を辞めたいと言い出したことなのだ。そのことをオーナーに話してしまったら、元夫の職場での立場が悪くなるのではないか?いくら離婚したいとは言っても、元夫に不利になるようなことを、今、ここで話してしまってもいいものなのだろうか。オーナーは待っても私が話しださないのをみて、話の核心、多分、オーナーがそう思い込んでいることに、触れた。 トモダチのことも言ってたで。みみちゃんと仲良くしすぎる、って。でもな、あんたたちが仲良うしてるのは、みんな知ってることや。同級生やもんなあ。そんなん、あの人のアホなヤキモチやんか。それだけやったら、許してやってくれんか。ケンがいなくなったときも、私だって軽い気持ちであんたたちに、協力して探してくれって言ってしまったもんなあ。だから私も悪かってん。あの人がそんなふうに思ってるなんて、知らんかったから。だからな、よう考えて…。 私は、いつ話を切り出そうかと時機をうかがっていた。 そんなこと関係ありません。 待ちきれずにオーナーの話をさえぎって、私は、いままで起こったすべてのことを、一気に話した。 あの人は3年はここで働く、って言いました。でも、もう信じたくないし、3年後のその先を考えるのがもうイヤなんです。だから、離婚することに決めたんです。誰に止められても考えは変わりません。そのぐらいで変わるのだったら、とっくにあきらめてますよ。 私は両手を上げておどけてみせた。目と目が合った。オーナーはこの時、私の瞳の奥に怒りを見たはずだ。そこまでして自分を守りたいのか、自分を正当化したいのか。それとも、自分が正しいと信じているうちに、作り話を真実と勘違いしてしまっているのか。どうでもいい。これで、離婚できるのなら。 オーナーは、物腰の柔らかい、いかにもお嬢様育ちを感じさせる上品な女性だ。組んだ足の上に両手を重ね、しきりと頷きながら、私の話を聞いていた。そして、しばらく考え込むように黙ったあと、静かにこう言った。 みみちゃん、私も離婚した女です。あんたの気持ちもよう分かる。でもな、これからツラいこと、たくさんあるで。 いいんです、それでも。それに、娘も早くラクにしてあげたい。 そうか…。 オーナーはまた首を振って頷いた。それ以上、私を説得しようとはしなかった。