火車 (新潮文庫)/宮部 みゆき
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休職中の刑事<本間俊介>は親戚の男性に、行方をくらました婚約者の

捜索を頼まれる。

見事なまでに痕跡をのこさずに姿を消した<関根彰子>。


彼女は自己破産をしており、母親が亡くなたばかりで他に身内がいなかった。

関根彰子を担当した弁護士と会ったところ、探している婚約者と顔が違い別人であった。

探している婚約者は何者なのか。

なぜ関根彰子に成り代わっていたのか、なぜ名前を名乗っていたのか、本間は

謎を追っていく。


どうしても他人になりたかった謎の人物。

自分の過去はもちろん、友人や戸籍までも捨てたかった訳とは。



自己破産をするような人は特別な人と思っていましたが、本物の関根彰子は

「幸せになりたかっただけ」。

カード社会の欠陥が破産者を増やし彼女も犠牲者の一人かもしれない、わが身にも

起こりえることだと語る弁護士の話に、そら恐ろしくなります。

そして、あまりに無法だと憤るしかない取立て。

まさに社会派ミステリーです。

15年位前の作品なので、今より法律が整っていないところもありそれゆえ壮絶です。

それでも古臭いとは感じられずに、ぐいぐいと読み進んでしまいました。


犯人は哀れであり切ないです。

最後までなかなか登場しなかったのがもどかしいです。

ようやく他人に成り代わったと思ったら、その相手が破産していたと言うあまりの現実。

それでもなおさら募る執念がすごかった・・・




偶然ですが、「理由」「幻夜」そして「火車」と3作続けて『他人に成りすます』人物が

登場する小説を読みました。


それぞれに切ない理由があるのですが、あまりの不幸な状況のなかで

「自分が消えてなくなりたい」とは思わず「他の人になりかわりたい」と望む彼ら。

生きること、生き抜くことに貪欲な姿勢に唸りました。